「少しでも恩返しがしたい」 料理人・鳥羽周作が、パスタで表現する幸せのかたち

  • 写真:齋藤誠一
  • 文:岡野孝次
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代々木上原駅から徒歩1分の「sio」は、鳥羽周作が手掛けるジャンルレスな料理を楽しめるイノベーティブレストラン。洗練されたヴィンテージ感のある空間に、こだわりの音楽が流れる。

鳥羽周作は、東京・代々木上原のイノベーティブ・レストラン「sio(シオ)」、表参道のレストラン「Hotel's(ホテルズ)」など複数の人気店を展開する料理人だ。東急プラザ原宿「ハラカド」にファミリーレストラン「FAMiRES(ファミレス)」をオープンさせたことでも記憶にも新しい。数々のプロジェクトを手掛けてきた注目のシェフである彼にとって、パスタは人生を変えた大切な料理。パスタの魅力とともに、世の中に“おいしい体験”を提供したいという、その思いを聞いた。

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「幸せの分母」を増やすために、レシピを届ける

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鳥羽周作(とば・しゅうさく)。Jリーグの練習生、小学校の教員を経て、31歳で料理の世界へ。2018年「sio」をオープン。同店はミシュランガイド東京2020から5年連続掲載。現在、全国にいろいろな業態の10店舗を展開。モットーは『幸せの分母を増やす』。

料理人として活躍する一方で、Youtubeチャンネル「シズるチャンネル」や自身のSNSで、家庭で再現できるカジュアルなレシピを発信中。これが熱狂的な評判を呼び、特にイタリア発祥の卵とチーズを使ったパスタをアレンジした「無限パスタ2」のレシピ動画は300万回近い再生回数を誇っている。

鳥羽がSNSを通して自身のレシピを公開するようになったのは、『ミシュランガイド東京2020』で一つ星を獲得して以降のことだ。

「『sio』は小さな店なので、どれだけ席数を増やしても16名しか入店していただけません。ミシュランの一つ星を獲得してから、お客さんにお問い合わせをいただいても、お断りしないといけないことが多くなったんです。また『僕の料理を食べたい』という方のために、ここ数年で店舗の数自体を増やしましたが、それでも予約できない方がたくさんおられるという状況です」

そこで鳥羽が思いついたのが、レシピを発信することだ。コンビニ食材を使ったミートソースやチキンステーキといった日常食から、実際に「sio」のコースで提供されるメニューまで。High and Low──ありとあらゆるレシピをSNSで発信し始めた。

「この方法で、『僕のお店に来たい』と思っておられる方の気持ちに、少しでも恩返しできると考えました。また、たとえば北海道在住の方が「sio」に来たいと考えた場合、移動距離と時間、交通費もかかります。でもレシピを見て自宅で調理してもらえれば、僕の料理のエッセンスは感じていただけます。だからこそ、どんなご家庭のキッチンでも、まるで僕が調理したかのように仕上がるべく、徹底的に再現性にこだわったレシピを発信しています」

おいしい体験、すなわち「幸せの分母を増やしたい」という鳥羽の願い。その思いが、惜しげもなく自身のレシピを披露する姿勢につながっている。

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家庭でプロの味を再現できる、パスタの可能性

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31歳の時、未経験だった料理の世界に飛び込んだ。

鳥羽がSNSで発信するレシピのなかでも、特に多いのがパスタだ。少しの工夫や遊び心で、そのバリエーションはほぼ無限と言える。

「料理人を志した頃にカフェでアルバイトをしていて、厨房でカルボナーラをつくることが多かったんです。卵が大好物だったから、調理していて楽しくて」

そう語る鳥羽は、誰よりもパスタ料理の練習をしてきた。つくっては試食をする……試行錯誤の繰り返しをしながら、自身が生み出したレシピを常に進化させ続けている。さまざまな視点から素材や調理方法などを見つめることによって、レシピのアイデアが次々と脳内から湧いてくるのだ。こうして、オリジナリティあふれる数々のレシピが私たちのもとに届けられている。

「あとSNS向けにレシピをつくる視点でいうと、パスタって一番、プロに近い味わいを再現できる料理なんです」

フランス料理となると、フォンドボーからつくる必要がある。しかしパスタの風味の肝になる食材、たとえばパンチェッタやポルチーニなら、近くのスーパーや輸入食材店で入手できる。カジュアルにプロに近い味わいを創出できるからこそ、鳥羽はパスタのレシピを次々に考案し、SNSに投稿する。

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いまの集大成、最適解を目指した55種のパスタレシピ

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ナポリタンをコンソメと生クリームでイメージチェンジした「白ナポ」。シャキシャキ感を残した野菜の歯応えがアクセント。写真:宮本信義

そんな鳥羽が7月20日(土)に出版するのが、『帰ってきたら すぐに作れる、食べられる おかえり!パスタ』。フライパンひとつでつくれる「ワンパンパスタ」や、ペペロンチーノなどの「定番パスタ」、また「sio」などで提供される「レストランパスタ」のレシピが収録されている。それぞれのシーンにおける、最適解を目指したレシピばかりだ。

新作レシピも多数収録されたこの本の中で、鳥羽が必ずつくってみてほしいと言うのが、冒頭でも紹介した「無限パスタ2」だ。

「この本の表紙にもなっているパスタです。味の決め手はめんつゆ。これがたっぷり入った玉子、塩昆布やバター、黒コショウやチーズと絡み合って、まさしく無限に食べられると思えるほどのおいしさなんです」

他にもソーセージをメイン食材にした「シャウぺぺワンパンパスタ」や、生クリームやバターの風味で仕上げる「白ナポ」、また「sioのカルボナーラ」など、どのパスタにも絶対の自信があると胸を張る鳥羽。収録されたレシピは55種。いまの彼がつくるパスタの集大成ともいえるこの一冊が、ふたたび多くのおいしい体験をもたらしてくれるだろう。ぜひプロの味を、自宅のキッチンで再現してみてほしい。

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『帰ってきたら すぐに作れる、食べられる おかえり!パスタ』 鳥羽周作 CCCメディアハウス ¥1,760

『帰ってきたら すぐに作れる、食べられる おかえり!パスタ』発売記念イベント

開催日時:2024年8月2日(金)
開催時間:17時45分から(開場17時30分)
開催場所:o/sio
東京都千代田区丸の内2-6-1 丸の内ブリックスクエア B1F
料金:¥6,000(税込)

申込URL:https://peatix.com/event/4051511​​​​