一日の終わりに寄り添ってくれる、現代の“錬金術師”が生む国産アブサン【プロの自腹酒 vol.20】

  • 文:西田嘉孝
  • 写真:榊 水麗
  • イラスト:阿部伸二
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辰巳蒸留所/ファーストエッセンスグリーンアブサン

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酒のルーツを巡って世界を旅した辰巳祥平が、岐阜県郡上八幡で2017年に開設した蒸留所。年に一度リリースされる「ファーストエッセンス グリーンアブサン」には、7月中旬から下旬頃に収穫された郡上産のニガヨモギや数種のハーブを使用。ハーバルでフレッシュな香りと、パワフルでありながら繊細で美しい味わいと余韻が印象的。アブサン初心者にもぜひトライしてほしい。500mL ¥7,700/辰巳蒸留所 www.facebook.com/TatsumiDistillery

虎ノ門ヒルズの名店街、虎ノ門横丁にある小さな蒸留所で、「東京ローカルスピリッツ」をテーマとした数々のジンを生み出す蒸留家の一場鉄平さん。酒づくりのかたわら、清澄白河で蒸留酒と小料理の店「かまびす」を営み、自らも週に数回は店に立つ。そんな一場さんの自腹酒が、岐阜県の郡上八幡にある辰巳蒸留所の「ファーストエッセンス グリーンアブサン」だ。

「もともと虎ノ門横丁の企画開発に関わっていたのですが、当初は自分でジンをつくるつもりはなかったんです」

一場さんの人生を変えたのが、見学に訪れた辰巳蒸留所での辰巳祥平さんとの出会いだ。

「野山のボタニカルなどを素材に、原始的な蒸留器を使って蒸留酒を生み出していく。辰巳さんが中世の錬金術師にたとえて説明してくれた一滴の酒ができるまでの過程が魅力的で、なによりも彼がつくるお酒のおいしさに感動しました。そこから自分でも酒づりがしたくなり、辰巳蒸留所での研修を経て、2020年に虎ノ門蒸留所での蒸留をスタートしたんです」

辰巳蒸留所からリリースされる一期一会のジンやアブサン。なかでも郡上産のニガヨモギや数種のハーブを使った「ファーストエッセンスグリーンアブサン」は、いまも一場さんのリラックスタイムに欠かせないものになっている。

「薬草を思わせるハーバルな香りが、仕事終わりや就寝前の一杯にぴったり。甘さと苦さのバランスも絶妙で、チョコレートやスパイスの効いた料理にも合いますし、キャンプなどで焚き火をしながら飲むのも最高です」

グラスに氷を浮かべ、お好みで水を加えて飲むのがお薦めのスタイル。ハーブや新緑の森を思わせるフレッシュで豊かな香りや、ビターな余韻を楽しみつつ、一場さんにならって一日の終わりにゆったり向き合いたい魅惑の酒だ。

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緑のアブサンと好相性、定番チョコの優しい甘さ

一場さんのお気に入りのおともが明治のミルクチョコレート。アブサンに感じられる甘みを優しい味わいのチョコレートが引き立てる、ぜひ体験してほしいマリアージュだ。

一場鉄平

1977年、東京都生まれ。事業運営も担う虎ノ門蒸留所にて、東京産の素材などを使った数々のジンやアブサンを手掛ける気鋭の蒸留家。

虎ノ門蒸留所

住所:東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー3F 虎ノ門横丁
TEL:03-6205-7285

※この記事はPen 2024年7月号より再編集した記事です。