世界最先端の振付家が勢揃いするダンスフェスティバル、「ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル」がついに日本初開催

  • 文:Pen編集部
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世界的なハイジュエリーメゾンであるヴァン クリーフ&アーペルが世界各地で開催してきた、モダンダンスとコンテンポラリーダンスのフェスティバル「ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル」がついに日本に上陸。今秋、10月4日から11月16日まで1カ月以上にわたり、京都と埼玉で開催される。

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「ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル 2024」のメインビジュアル © Van Cleef & Arpels SA

メゾンが脈々と受け継いできた、ダンスとのつながり

「ダンス リフレクションズ」はヴァン クリーフ&アーペルが「創造」「教育」「継承」という3つの本質的価値を体現することを目指し、2020年に創設したプロジェクトだ。モダンダンスとコンテンポラリーダンスを軸に、アーティストやカンパニーだけでなく、劇場や世界各地のフェスティバルを支援して新たな創作を奨励するとともに、ダンスの歴史そのものの継承にも力を入れてきた。

なぜ、パリのヴァンドーム広場で創業したハイジュエラーがダンスを支援するのか? 実は、ヴァン クリーフ&アーペルは1920年代頃から、ダンスとは深い縁を持ってきた。創業者のひとりルイ・アーペルが熱心なバレエファンであり、甥のクロード・アーペルを連れてはパリ・オペラ座へ通っていた。その後このふたりが中心となり、1940年代に「バレリーナ クリップ」を制作する。

メゾンを象徴するこのジュエリー作品からうかがえるように、ヴァン クリーフ&アーペルにとってバレエは長年にわたり創作のインスピレーション源となってきた。職人たちはバレエの繊細さや美しさを称え、その動きや衣装に独自の解釈をなしては自らのクリエイションに活かしてきたのだ。

戦後、メゾンとバレエの絆は強くなる。ニューヨーク・シティ・バレエ団を率いていたバランシンは、クロードとの出会いから新作『ジュエルズ』を創る(1967年初演)。全3幕がそれぞれ「エメラルド」「ルビー」「ダイヤモンド」と名付けられたこの作品は、バランシンの“純粋抽象主義バレエ”の完成とも評価される傑作である。

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バレリーナ クリップ(1945年)。ダイヤモンドやカラーストーンを用いて華麗な衣装を纏う女性バレエダンサーのポーズを描くクリップは、1940年代に初めて制作されてから、長きにわたり愛されてきた。
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左からピエール・アーペル、バレリーナのスザンヌ・ファレル、ジョージ・バランシン(1976年頃)。ピエール・アーペルがパリの本店ブティックで、偉大な振付家とともにバレエ『ジュエルズ』のダイヤモンド役を踊るバレリーナのジュエリーを選ぶ。

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メゾンは2000年に入ると、『ジュエルズ』を踊ったこともあるニューヨーク・シティ・バレエ団の元プリンシパルで、パリ・オペラ座の芸術監督に史上最年少で就任した経歴を持つバンジャマン・ミルピエともコラボレーションを行う。15年からは欧州でオペラやダンスを支援する組織「フェドラ」と連携し、創意ある優れた作品に「フェドラ-ヴァン クリーフ&アーペル バレエ賞」を授与している。そして20年、メゾンは新たな一章として「ダンス リフレクションズ」を始動したのだ。

この「ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル」を強力に推進しているのが、プレジデント兼CEOのニコラ・ボスと、19年4月にヴァン クリーフ&アーペルに参画しダンス&カルチャー プログラム ディレクターを務めるセルジュ・ローランだ。カルティエ現代美術財団でのキュレーターを経たのち、約20年にわたってパリのポンピドゥー・センターの舞台芸術企画部門の責任者を担ってきた人物である。

本フェスティバルのプログラムディレクターも務めるローランは「これはメセナ活動であり、アーティストをサポートし、自由を提供する。我々の情熱を多くの方々と共有したい」と、開催への強い意欲をアピールする。

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セルジュ・ローラン●ヴァン クリーフ&アーペル ダンス&カルチャー プログラム ディレクター。フランスの高等教育機関エコール・デュ・ルーブルで美術史や博物館学を専門的に学ぶ。1990〜99年までカルティエ現代美術財団でキュレーターを、2000〜19年までパリのポンピドゥー・センターで舞台芸術企画部門の責任者を務める。19年より現職。

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ダンスの歴史に触れる作品からワークショップや写真展まで、充実したプログラム内容

2022年のロンドンを皮切りに、香港、ニューヨークに続いて開催される日本でのフェスティバルは、近年協力関係を築いてきた「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」、ロームシアター京都、彩の国さいたま芸術劇場との三者のコラボレーションによるもの。公演だけでなく、ワークショップも多く開催される予定だ。

また、関連イベントとして京都にて、アメリカ人写真家オリヴィア・ビーの写真展『その部屋で私は星を感じた』を「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」と共同で行う。

伝統を継承しつつ、そこから新たな表現の幅を膨らませていく。ダンサーの身体表現だけでなく、舞台美術、照明、音楽などさまざまな要素がクロスオーバーする「ダンスという芸術」を味わえる至極の1カ月間をぜひ楽しみに待ち侘びたい。


アレッサンドロ・シャッローニ『ラストダンスは私に』

イタリアのフォークダンスであるポルカ・キナータを探究したアレッサンドロ・シャッローニの作品。現在では消滅の危機に瀕するこの伝統舞踊の復興と普及を目指したデュエットパフォーマンスに加え、「ダンス リフレクションズ」が掲げる「継承」を目的とした一連のワークショップも開催する。

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公演日:2024年10月5日、6日 会場:京都芸術センター(講堂) photo: © Van Cleef & Arpels SA - MAK

オラ・マチェイェフスカ『ロイ・フラー:リサーチ』

19世紀末から20世紀初頭に斬新な衣装と照明で舞踊史に貢献したロイ・フラー(1862-1928)のサーペンタインダンスをリサーチし、現代に生き返らせるオラ・マチェイェフスカ。数メートルもの絹地を取り付けた竹の棒を取り入れてダンスと特殊効果を融合させ、炎、海の波など自然現象へと自身の姿を変えることで、西洋舞踊の伝統に一石を投じる。マチェイェフスカは作品の中で、神話的なアイコン、矛盾、そして追跡不可能なものと対峙。振付の歴史、その継承と解放に、独自の視点をもたらす。

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公演日:2024年10月14日 会場:京都芸術センター(講堂) photo: © Van Cleef & Arpels SA - Eric Hong

マチルド・モニエ&ドミニク・フィガレラ『ソープオペラ、インスタレーション』

振付家マチルド・モニエと画家ドミニク・フィガレラが2009年に共同制作した振付作品「ソープオペラ」の新バージョン。オリジナル版で使用した泡という素材を、パフォーマンス空間の中心に置き換えた作品。空間全体に徐々に広がりゆく動く泡は、伝統的な舞台を白い箱に作り変える。物体がリアルタイムで扱われるとともに消えるパフォーマンスは、ドラマチックな緊張感をもって繰り広げられ、やがて泡が消え、ダンサーだけがステージに残る瞬間へと至る。

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公演日:2024年10月18日、19日、20日 会場:ロームシアター京都(ノースホール) photo: © Van Cleef & Arpels SA - Marc Coudrais

オリヴィア・ビー写真展『その部屋で私は星を感じた』

「ダンス リフレクションズ」のオープニングを飾るのが、「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」と共同で開催する、アメリカ人写真家オリヴィア・ビーの作品を紹介する展覧会。ロンドン(2022年3月)、香港(2023年5月)、ニューヨーク(2023年10月)で開催された初回から第3回までのフェスティバルの舞台裏を撮影したアナログ写真をまとめたものだ。

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日程:2024年10月4日 ~ 11月16日 会場:アスフォデル(京都) photo :© Van Cleef & Arpels SA - Joseph Haeberle

ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル

開催時期:2024年10月4日~11月16日
開催場所:ロームシアター京都、彩の国さいたま芸術劇場、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座
※プログラムごとの開催場所や公演日時については下記公式サイトを参照

www.dancereflections-vancleefarpels.com