建築家・隈研吾×アシックス第3弾スニーカー、パリでの世界発表直前に入手!

  • 写真・文:一史
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2024年4月より日本で先行発売され、6月19日(水)にファッション・ウィーク中のパリで世界リリースされる予定のスニーカー。
建築家・隈研吾さんとアシックスとのコラボ第3弾となる最新作です。
幸運にも1足入手できましたので、このスニーカーのつくり込み満載のディテールを紹介します!
アバンギャルドな見た目と反するように、驚くほど歩きやすいスニーカー。
その一方でデザイン優先な面もありますので、そのあたりもお話させてください。
隈研吾さんのこのスニーカーへの思い入れやコンセプトなどは、ネット記事で簡単に探せます。
より深堀りしたい方はそちらもご覧いただければ。
ここでは誰がつくったかよりも、一体何が面白いのかに視点を定めてレポしていきます。

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第1弾、第2弾の隈研吾コラボはアッパーを編み(竹編み構造)で覆っていましたが、今回はそれを内側に忍ばせ透ける素材「ダイニーマ」で包んでいます。
シワシワのビニールのような素材。
商品名の「KENGO KUMA × ASICS ARCHISITE ORU 」の「ORU」とは“折る”の意味。
三角形の袋状に取り付けた生地を、折り畳んでアッパーに仕立てています。
かつてアディダスが「ピュアブースト」でやっていた手法に近いですね。
なによりオレンジのステッチでアシックスのサイドマークを表現したセンスが最高!
アッパーを固定させるゴム紐と色を揃えたオレンジの美しいグラフィック。
ハイブランドのモードスニーカーでもこれほど創造的なものは多くないでしょう。
何層ものレイヤー構造です。
ステッチ幅が粗めなのもいい味。
落とし込みのバランスが本当に巧みです。

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アッパーは2箇所のゴムコードをフック留めして固定させます。
長さ調整はできないため、ダイニーマの透明アッパーを軽く畳んでおく程度の役割。
実際の足のホールドは、内側で組み合わされた樹脂パーツにて。
フィット感は限りなくスリッポンシューズに近いといえます。

このフィット感が、意外なほどしっかりしてまして。
ヒール部分の補強が厚手のメッシュ素材で、アーチもカーブがあるため足が安定します(人により感じ方に差があるでしょう)。
さすがはアシックス品質というか、推察するにメーカーの担当者が歩きやすさに妥協したくなかったのでは?
どれほどの前衛デザインであろうとも、「アシックスなんだから」と。

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ソールのベースはトレイルランニングシューズ「Fuji Lite 2」で、アウトソールは「土や泥の路面でのグリップ性を高めるような設計」だそう。
悪路対応なのは、隈研吾さん自身が建築現場で履きたいシューズを目指したからのようです。
水を弾くダイニーマを使ったのも同様の理由でしょう。

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フックを外すとアッパーが解放されサンダル形状になります。
ただしゴムコードを2本とも外すと、まともには歩けません。
つま先側のコードをフックに掛けておけば、ぎり歩けるかな、といった感じ。
デスクに向かいっぱなしの仕事中や、乗り物移動にときに足を楽にできる機能です。

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素足履き対応のコルクインソールも付属。
使い勝手が考えられた気の利いた配慮です。

このスニーカーはほかのどこにもない斬新なデザインで、そのうえ機能的。
となれば、「入手しよう!」とテンションが上がるでしょうが、しばしお待ちを w
困った点もふたつほどありますので、言及しておきましょう。

まずひとつは素材のダイニーマのガシャガシャ音がすごいこと。
履いて足を軽く曲げただけでバリバリと音が鳴ります。
図書館行けないです。
皆に振り返られて足元をガン見されます。

もうひとつは、ダイニーマに透湿性がまったくないこと。
アウトドアバッグで使われる高耐久性と防水性を兼ね備えた素材で、蒸気を外に逃がす機能はありません。
言い訳程度にアッパーにポツポツと穴が開けられているのですが、汗蒸れは避けられないでしょう。
ネット上でシューズ購入者の意見を見ると、「内側に水滴がつくほど蒸れる」と語っている人が何人かいました。
わたしも部屋で机に向かい、1時間ほど履くと水滴状態になりました。
夏が似合うデザインなのに夏に履きにくい?
対策としてまずコルクインソールに替え、さらにレインシューズに使う吸水機能インソール(Amazonなどで安く買える)を、その下に仕込みました。
これで蒸れが軽減されるか、歩きテストをしてみようと思います。

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靴箱の蓋裏には隈さんがデザインに込めた思いとサインが印字されてます。

わたしが感じた難点はややあるものの、それを軽くふっ飛ばすほどワクワクするスニーカーです。
「なんとしても履きたい」と思わせるクリエイティブさ。
このシューズに合う服を新たに買い足したくなるほどの。
手持ちの服に合わせやすいシューズばかり揃えると、ワードローブがどんどん古臭く退屈になる気がします。
そんな自分にカツを入れてくれた、嬉しい2024年夏の新体験です。

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高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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