三島喜美代展からカルティエ『結 MUSUBI』展まで【今月の展覧会2選】

  • 文:青野尚子(アートライター)
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あふれるゴミや情報の洪水に、作家が込めた記憶の行方

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『20世紀の記憶』(部分)1984~2013年 耐火レンガに印刷 個人蔵 写真提供:美術資料センター photo: Shigeo Ogawa

飲料の缶が乱雑に投げ込まれたゴミ箱、陶の板でつくられた新聞紙。三島喜美代の作品には硬くて丈夫なように見えて、割れやすくもろい陶という素材が頻出する。この個展は彼女の70年におよぶ軌跡を主要作品を通してたどるもの。なかでも床に敷き詰めた大量のレンガ・ブロックに20世紀の100年間から抜き出した新聞記事を転写したインスタレーション『20世紀の記憶』は圧巻だ。大量消費社会が生み出す廃棄物や、情報の洪水に翻弄される私たちの姿をあぶりだす。

『三島喜美代―未来への記憶』

開催期間:~7/7
会場:練馬区立美術館
TEL:03-3577-1821
開館時間:10時~18時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
料金:一般¥1,000
www.neribun.or.jp/museum.html

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日本とカルティエの、国境を越えた美の交流をたどる

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横尾忠則『 横尾忠則(アーティスト)』2015年 Collection of the Fond ation Cartier pour l'art contem porain, Paris © Tadanori Yokoo © Norihiro Ueno

カルティエが日本に最初のブティックを開いてから50年になるのを記念して開かれる展覧会。通常非公開の東京国立博物館・表慶館を舞台にカルティエと日本との交流を振り返る。19世紀後半に日本美術からインスピレーションを得てつくられたアーカイブピースから、パリのカルティエ現代美術財団と関わりの深い横尾忠則ら日本の現代アーティストの作品まで、互いに影響を与え合い、妥協のない美への思いを共有する人々のクリエイティビティにため息がこぼれる。

『カルティエと日本 半世紀のあゆみ「結 MUSUBI」展― 美と芸術をめぐる対話』

開催期間:6/12~7/28
会場:東京国立博物館 表慶館 
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9時30分~17時(金、土は19時まで) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(7/15は開館)、7/16
料金:一般¥1,500
www.cartier.jp

※この記事はPen 2024年7月号より再編集した記事です。