ポール・スミスが2024年6月11日、フィレンツェで開催されたピッティ・ウオモにて2025年春夏コレクションを発表した。1960年代のロンドン、ソーホーのアートシーンからインスパイアされたコレクションは、テーラリングを現代的に解釈し、カジュアルとの絶妙なバランスを見せた。
会場となった、精巧なフレスコ画と壮大な建築で知られる19世紀の美しい邸宅ヴィラ・ファヴァールは、この日限りの「バー・ポール」に変身。デザイナーのポール・スミスが若き日に通った終夜営業のカフェを再現し、当時のボヘミアンな雰囲気を醸し出した。コレクションでは、ゆるく結ばれたネクタイにデニムジャケットを合わせるなど、アーティストのようなリラックス感あふれるスタイリングが登場。一方で、千鳥格子やプリンス・オブ・ウェールズ柄のスーツが60年代ロンドンへのオマージュを感じさせた。
ハイライトは、ポールのシグネチャーストライプを基にしたパステルチェックのトレンチコート。絵画的なプリントの生地を用いたアウターウェアもインパクト抜群だ。プレゼンテーション会場には、フランシス・ベーコンやルシアン・フロイドにインスパイアされたアートピースが散りばめられ、ウィンザー&ニュートンのイーゼルや美術用品が配されるなど、ディテールにまでソーホーのアートシーンへのリスペクトが感じられた。
2025年初頭には「Lee」とのコラボデニムコレクションの展開が予定されており、ポールと古くから縁のあるブランドとのタッグにも注目が集まる。70年代初頭に自身の店舗で「Lee」のアイテムを販売していたというポールならではの、思い入れ深いコラボレーションとなりそうだ。
本コレクションは、ポール・スミスならではの遊び心とクラフトマンシップが光る内容となった。時代を超えて愛される60年代カルチャーを、現代のメンズファッションに巧みに落とし込んだポールの手腕は、まさに「モダン・クラシック」の真骨頂と言えるだろう。ヴィンテージへのリスペクトを込めながら、決して過去の焼き直しに留まらないフレッシュな感覚。それこそが、ポール・スミスが長年に渡って愛され続ける秘訣なのかもしれない。