都心からほど近いエリアでありながら周囲を海と山に囲まれ、美しい自然を堪能できる温泉街として知られる熱海。近年は新たなホテルのオープンラッシュもあって、その魅力が再評価されている。なかでも2023年12月に開業した「熱海・伊豆山 佳ら久(からく)」はどこまでも続く紺碧の相模湾を一望しながら、露天風呂に憩い、地の食材に舌鼓を打つ。そんな至福のやすらぎを味わえるリゾートだ。
熱海駅に降り立つと、送迎のスタッフが出迎えてくれる。ホテルまでは送迎車で向かうこと7〜8分ほど、多くの人で賑わうノスタルジックな商店街に背を向け、水平線や煌めく水面を眼下に見下ろしながら高台を登っていく。国道から細道に入ると、緑あふれる伊豆山の麓に木々に守られるように佇む、洗練された建物が姿を現す。
エントランスを抜け最上階である8階のロビーへ向かうと、目に飛び込んで来たのは、窓一面に広がる相模湾の大海原。高台の立地ならではの絶景に、思わず息をのむ。
レセプションの先にあるのは、ゲストラウンジ「間(AWAI)」だ。なだらかな曲線を描く木目調の天井からは、趣たっぷりのライトが吊るされ、落ち着きのある和モダンな空間を演出している。「佳ら久」では、館内の全客室がクラブフロア扱いで、ここ「間」も一般にいうクラブラウンジとして機能し、フィンガーフードやドリンクをフリーフローで楽しめる。夜は有料にはなるがバーとしても利用できるので、滞在中のどんな「間」にもフィットし、思い思いのひと時を過ごせるだろう。
ラウンジにはテラスも併設され、そこにはまるで海と一体となるかのような水盤が広がり、心地よい潮風に包まれる。ここではぜひ、この眺望に酔いしれながら足湯に浸かりたい。都会の喧騒を忘れ、心身を非日常へと誘うスイッチになるはずだから。
全57室の客室には4つのタイプがあり、いずれも温泉露天風呂を有した贅を凝らしたつくり。時間や人目を気にせず思う存分湯あみができる広々とした露天風呂は、深い寛ぎを与えてくれる。
今回滞在したのは全10室ある「佳ら久ルーム」。室内は深い海のようなブルーを基調とした設えで、相模湾に映るムーンロードをイメージしたアートが壁面を飾る。テラスには眼前に広がる相模湾の美しい眺望を遮ることのないよう、ガラスフェンスを採り入れている。まるで海の景観と客室がひと続きになっているかのような錯覚を覚える。
ほかにも最上階に2室だけ用意された、水盤テラスを配した上質な「佳ら久スイート」や、畳や木の設えに癒やされる和タイプと落ち着きのある洋タイプが揃う「デラックスルーム」、車椅子でも滞在しやすい「ユニバーサルルーム」があり、旅のスタイルに合わせた部屋が見るかるはずだ。
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「伊豆」の語源は諸説あるが、そのひとつに湯が「出づる」国であったからという説がある。それほどまでに歴史ある伊豆山温泉の泉質は、カルシウム・ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉。切り傷や冷え性に効能があり、特に硫酸塩温泉に浸かると肌はしっとりなめらかになるそうだ。
客室だけでなく、7階に位置する展望露天風呂「阿多美(Atami)」と「想海(Soukai)」でもそんな由緒ある温泉を堪能できる。なんといっても圧巻なのが、開放感たっぷりのインフィニティ仕様の露天風呂だ。澄み切った青空と遥かなる相模湾を望みながら、湯の中でたゆたえば、まさに水天一碧の情景に身を委ねているかのような夢心地に。
絶景と温泉を思う存分味わった後は、サウナで心身を整えたり、サロンで寛いだり、テラスでそよ風に吹かれるのもまた良し。心を解放して自分らしく過ごすひと時は、この上ない癒しになることだろう。
温泉でリフレッシュした後は、お待ちかねのディナータイムだ。「熱海・伊豆山 佳ら久」では鮨「藍寿(あいじゅ)」とダイニング「六つ喜(むつき)」が揃い、いずれも相模湾などの地元の漁港で水揚げされたとれたての海の幸を満喫できる。藍寿では檜の一枚板が美しいカウンターで、寿司職人との会話を楽しみながらその日のお薦めを味わいたい。
自然の恵みにあふれた土地柄を活かし、厳選された旬の食材や地物の滋味を引き出す和食を、会席スタイルで提供するのが六つ喜だ。「五感に加え、ここならではの体験という六つの要素を喜びで満たしたい」という想いが込められた店名だけに、素材の旨みを活かしたていねいな料理は、熱海や伊豆山の空や海、山の大地や木々を表現した有田焼の器に美しく彩られ、五感を揺さぶる六つ喜ならではのひと皿が完成されている。
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日常を離れて身も心も満たされるステイは、かつてない深い眠りに誘われた。翌朝の目覚めは爽やかで、目に映るすべてが清々しい。テラスに出て朝日に煌めく水面を眺めながら、自然の空気を目一杯吸い込むように深呼吸。幸せなひとときはまだまだ続いていく。
六つ喜でいただく朝食は、重箱の中に美しく彩られた小鉢や焼き物にも、地元の食材がふんだんに使われている。そして釜炊きで用意されていたのは、佳ら久のオリジナルブレンド米。艶やかに輝き、甘味と旨みが凝縮されたふっくらとした白米の味わいに思わず唸る。
チェックアウトまで、さらに温泉を堪能し尽くすのもよいだろう。東京から新幹線でたった1時間の場所でこんなにも自然に親しみ、絶景を眺め、温泉に癒され、地の物を味わい尽くせる宿はそう多くはない。余分なものをすべて洗い流したかのようなリフレッシュさで、明日への麗らかな活力が湧いてくる。閑静な宿での上質なステイは、癒やしのエネルギーに満ちている。
熱海・伊豆山 佳ら久
住所:静岡県熱海市伊豆山630-1
TEL:0557-55-7900
https://izusan-karaku.orixhotelsandresorts.com