世界中で人気沸騰中の“チェキ”の最上位モデル「INSTAX mini 99」【麻倉怜士が選ぶ今月の家電】

  • イラスト:信濃八太郎
  • 編集:一ノ瀬 伸
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〈インスタントカメラ〉
INSTAX mini 99(インスタックス ミニ 99)

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世界中で人気のINSTAX<チェキ>の最上位モデルとして発売された「INSTAX mini 99」。アナログ技術で表現の幅を広げる新機能を搭載。¥28,600(編集部調べ)

富士フイルムのインスタントカメラ「チェキ」が、このデジタル時代に大いに売れている。最近のレコードやカセット人気と通じ、便利でなんでもできるデジタルの対極を求めるトレンドの一環だろう。撮ったらすぐに見られて枚数に限りがないデジタルフォトと異なり、アナログタイプのチェキでは撮るのは一枚単位、フィルムに出力し定着するまで数分は待たねばならない。その制約と手間こそ、超現代的な価値といえる。

新製品「INSTAX mini99」はチェキの最上位モデル。なにより採用した「カラーエフェクトコントロール」に注目だ。フィルムカメラでは間違って裏蓋を開けてフィルムを感光させてしまうのは禁じ手。だが本機はあえて内部に4つのLEDを搭載し色光を数百分の1秒、フィルムに直接照射する。デジタルの色加工のような効果を、撮ったその場で物理的に与え、6種類の色表現を実現している。画像がフィルムに浮かぶまで、完全には予測できないのも楽しい。

レンズの開口部を手動で狭め、写真の周辺部の光量を落とす「ビットモード」はアナログならでは、額縁効果で画が引き立つ。明暗を5段階で調整する「濃淡調整」、シャッターを2回切って像を重ねる「二重露光」……と、多彩な表現を可能にした。操作も流行のタッチパネルでなく物理的。レンズダイヤルの回転で電源オン・オフと焦点距離の切り替えを、カメラ側面のダイヤルでカラーエフェクトと明るさを調整。クリック感があり、操作は確実だ。

一枚に魂を込めて撮り、像が浮かび上がって定着するまでの時間を愉しみ、偶然の美を愛でる。色と光の効果をこれほど与えられた本機なら、インスタント写真の醍醐味は、より深い。

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「カラーエフェクトコントロール」機能は、「Faded Green(淡い緑)」や「Warm Tone(温かいトーン)」など6種類の表現をダイヤルを回すだけで簡単に楽しめる。

麻倉怜士

デジタルメディア評論家。デジタルシーン全般の動向を常に見据える。著書に『高音質保証! 麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)などがある。

問い合わせ先/富士フイルム フィルムカメラお客さま相談窓口
TEL:0570-04-1640

※この記事はPen 2024年7月号より再編集した記事です。