富士山とはなにか? 著名な写真家たちが見つめる『WONDER Mt.FUJI』展が面白い

  • 文:Pen編集部
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富士山山頂から撮影した写真。宇宙から見た地球のようだが、実は青い部分は空。写真を上下逆にしている。 ©︎ YAMAUCHI Yu

日本人のみならず、世界中の多くの人がその名を知る山、富士山。その特異な、美しいかたちは古来人々の心をつかみ、数えきれないほどの被写体になってきた。そんな特別な山を著名な写真家たちがそれぞれの視点で切り取った写真展、『WONDER Mt.FUJI 富士山 ~自然の驚異と感動を未来へ繋ぐ~』が東京都写真美術館で開催中だ。

 

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会場に入ると、山内悠が富士山山頂から撮った作品が出迎える。奥の壁に見えるのは、公文健太郎の作品。水と火の物語をホタルを通して描く。 ©︎ MORIYAMA Masatomo

 

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仕切られた空間を繋ぐのは、黒い玉石が敷き詰められた道。外を歩いているような気分になる。壁の作品は、十文字美信。伏流水をテーマにしている。 ©︎ MORIYAMA Masatomo

参加作家は、山内悠、広川泰士、公文健太郎、十文字美信、エバレット・ケネディ=ブラウン、西野壮平、サラ・ムーン、ココ・カピタン、ドナータ・ベンダース、菅原一剛、瀧本幹也など、第一線で活躍している国内外の18名。富士山とはなんなのか。さまざま視点から写真家たちが捉えた姿は、どれひとつとして同じものはなく、そのアプローチや表現を見ているだけでも面白い。

たとえば、菅原一剛はいつの頃からか記憶の中にあった富士山の姿が、ひょんなことから1939年のニューヨーク国際万博の折に出展された富士山の写真であったことを知り、同じ撮影場所を探し当て、そこから富士山を撮影。すると、浮かび上がってきたのは100年前とほとんど変わらぬ光景だった。

 

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©︎ SUGAWARA Ichigo

 

また、西野壮平はリサーチを重ねるなかで『絹本著色富士曼荼羅図』(国指定重要文化財)に出会い、インスピレーションを得て制作。すべての富士山のルートを辿りつつ、駿河湾や富士五湖越しに外側からも富士を眺め、さらに火祭りをはじめとする行事など富士山の麓で行われる行事や日々の出来事を観察し、ひとつの巨大な作品に仕上げた。一枚の作品に富士山を取り巻く人々の営みが織り込まれ、人にとって富士山とはなんなのかを考えさせる。

5368-ER5_4310.jpeg西野壮平の作品は、小さな写真を切って貼り合わせた大作。一枚一枚見ていても飽きない。©︎ MORIYAMA Masatomo

見終わった後には、富士山へ思いを巡らすだけでなく、ひとつの対象をこんなにもさまざまな方法で写真作品に昇華することができるのか、と表現の可能性や面白さも感じられるはず。ぜひ期間中に足を運んでほしい。

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©︎ HIROKAWA Taishi

『WONDER Mt.FUJI 富⼠⼭〜⾃然の驚異と感動を未来へつなぐ〜』

開催期間:開催中~2024年7月21日
開催場所:東京都写真美術館 
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
開館時間:10時~18時(木・金は20時まで) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(祝・休日の場合は翌平日)
料金:一般¥1,200
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4862.html