料理とアートを融合した“FOOD ART”とは? 作品集『FOOD ART Moment of beauty』が出版

  • 文:今泉愛子
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『FOOD ART Moment of beauty』袴田尚弥 著  川上輝明 写真 DAG ¥14,300
※大垣書店、麻布台ヒルズ店、堀川新文化ビルヂング店ほか、Amazonでも販売中

フードスタイリストとしてキャリアを積んできた袴田尚弥が、本書『FOOD ART Moment of beauty』にて、“FOOD ART”という新たなジャンルを開拓した。これまでも見て楽しむ料理は存在したが、本書で紹介されているのは、地球上に存在する美しい風景を食材で表現したもので、アートとしての作品性が極めて高い作品の数々だ。噴火した火山から吹き出た溶岩や海に漂う色とりどりの海藻など、どれも一見して料理だとは思えない。

それなのに食べられるものだと認識して見ていると、おいしそうに見えてくるのだから不思議だ。どんな素材でできているのか、どうやってつくるのかと興味は尽きない。朝露が滴る苔むした大地は、マシュマロと抹茶からできている。海の底に生息する珊瑚はかりんとうだ。フォトグラファーの川上輝明は、こうした料理作品を見事にアートとして捉えた。

ゴミを出さない環境に優しいアート

 

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袴田はFOOD ARTの魅力について「食材で表現できるアートだということです。つまり楽しくつくり、鑑賞し、時には撮影もして楽しんだあとに食べることができます。ゴミを出さない環境にも優しいアートなんです」と語る。制作にあたってはまずテーマを決めて、それをどうやって食材で表現するかを考えるそうだ。

巻末に掲載されているレシピを見ると、材料も手順もとてもシンプルだが、試行錯誤の果てに完成したものであることが伝わってくる。作品に現れる色彩や透明感、割れ目などはつくるたびに異なるだろう。それも楽しさのひとつ。

料理とは、そもそも同じものを2度とつくることはできない。そしてどんなにおいしいものでもそのまま保管することはできない。そんな儚いものを、アートとして昇華したFOOD ARTの世界を、ぜひ堪能してほしい。

 

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