前編はマルチェッロ・ガンディーニの名作をめぐっていったが、後編は会場で販売されていた世界各国の名車を追っていきたい。
伝統とアイデンティティを継承する イギリス
まずは、その独自のスタイルを保持し続けるイギリス車からご案内しよう。
MGマグネットZB(1958)
アポロウィンカーという機械式のウィンカーを備えたモデル。シフトもフロアシフトでこの時代としてはスポーティセダンの仕様。キャブもSUツインで軽快な走りが期待できそうである。筆者自身が一番欲しいと思ったモデル。価格も300万円台半ばで現実的である。かのCG初代編集長 故小林彰太郎氏も愛車にしていた。
ジャガーXK120(1953)
XKシリーズはXK120に始まりXK150まであるが、一番人気はXK120。展示のクルマは現在の市場価格の1/3。聞けば、レストアベースとのことで色々手を入れる必要がありそうだ。それでも時間的余裕と熱意のある方なら十分お買い得のモデル。このクルマでクラシックカーイベントに出られたらとても楽しそうだ。
アルヴィス・3リッター・グラバー・スーパー・カブリオ(2024)
アルヴィスはもはや、このイベントには欠かせないクルマである。数台が展示されていたが、コンティニュエーション・モデルと言われる、車体番号を引継ぎつつ、現代に製造されたモデルが展示されていた。但し工法は当時の方法で丁寧に手作りされている。エンジンは3L直列6気筒OHV。最高速は190km/h。エンジンはキャブからインジェクションにブレーキやステアリングも現代流にモデファイされ、価格を別にすれば実用にも十分使用できるモデルである。
ブリストル406(1958)
英国の知られざる高級車ブリストル。かのロールス、ベントレーの輸入販売元として著名な涌井氏が手掛けるブリストル研究所からの出展とのこと。BMW同様、航空機メーカーを出自とするメーカーで、目指すクルマは小型のベントレー。少量生産の高級車である。名機と言われたブリストル6気筒を搭載する最終モデルは、重厚なスタイリングと豪華な装備を備える。高級ながらもFun To Driveを追求したモデル。
外連味あふれるスーパーカーの本場 イタリア
さて、次はスーパーカーの本場、イタリア車をみていこう。
ランボルギーニ・イスレロ(1968)
私が間違って一瞬でも購入出来そうと思ったモデルがこちら。
フロントに4LV12DOHC 320PSを発生するエンジンを搭載する2by2のGTカー。エンジンはエスパーダと同じだ。生産台数は155台、後に追加になったイスレロSの70台を合わせても計225台しか生産されなかった希少なモデルである。
筆者は恥ずかしながらこのクルマを知らなかった。ランボルギーニのマイナー?車なので価格も安いのかと思い、友人を連れてきて購入に関しての意見を聞こうとしたところ、価格をよく確認すると、1桁間違えている事に気づいた。都心のタワーマンションと変わらない価格である。販売店の方に声をかける前で良かった。
アルファロメオ モントリオール(1971)
こちらは昨今とても人気の高いクルマであるアルファロメオ モントリオール(1971)。2.6LV8エンジンをフロントに搭載。最高速は220km/hと言われている。
合理性の中にしたためたデザイン性 ドイツ
次は、世界で初めてガソリン自動車を製作したドイツ。その合理的な国民性が生み出した車はどんなものだろうか。
メルセデスベンツ 280SL(1969)ロードスター
2.8L直6SOHCエンジンを搭載。GT的要素が高かったが185PSのエンジンは俊足だった。今見てもシンプルで美しいスタイリングが魅力的である。
ポルシェ911(930)スピードスター(1989)
筆者は以前、964型の911カレラ2を所持していたがスピードスターは別格で憧れのクルマだった。ドアはFRP(繊維強化プラスチック)製で軽量化が図られている。
特に後ろから見たダブルバブル型のスタイルは何ともグラマラス。今ではとても高額なクルマになってしまった。
同じく964型の911ターボ(1991)。リアがぐっと広がったターボボディは、とてもグラマラスでセクシー。
320PSを発生するフラット6エンジンはGT的要素が高いがブーストがかかった時の加速はエキサイティングである。
プジョー406クーペ(2004)
「世界一美しいクーペ」と称されるデザインはピニンファリーナ社が手掛けたもの。
3.0L V6DOHC24Vエンジンは190PSを発生し、エンジンをフロント横置に搭載したFFモデルである。このクルマではデザインだけでなくボディの架装までピニンファリーナが担当している。価格的には以前と比べ上昇したとは言え、まだまだリーズナブルである。
こんなクルマを足に使ったら最高に素敵だ。
今年でついにオートモビルカウンシルも9年目を迎え、筆者は初回から欠かさず参加しているが初回に比べると規模も格段に大きくなった。また、若い方のクルマ離れが言われて久しいが、このイベントには若い層の来場者もかなりの数いたのが印象的であった。ハードウェアとしてのクルマ、そこから生まれる交流のソフトウェア、共に盛り上がってこそ、自動車文化の成熟化が進む。EVの台頭や自動運転など激変の最中であるが自動車文化の発展を願ってやまない次第である。
(ご紹介している車両は4/12取材時のものです。車両の在庫状況につきましては販売店に直接お問い合わせ下さい。)