体重300kg以上…1日1万キロカロリーを摂取し続けた“イギリス最重量の男性”が死亡 彼を死に追いやったものとは?

  • 文:宮田華子
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@ justeventsonlin – Xのキャプチャ画像

 

去る4月27日、ジェイソン・ホルトンさん(33歳)が、ロンドン郊外の町ギルフォードにあるロイヤル・サリー・カウンティ病院で死亡した。

ジェイソンさんは2015年にカール・トンプソンさん(体重約413kg)が死去して以来、「イギリス最重量の男性」として知られていた。死亡時の体重は約317kgと推測されている。

ジェイソンさんは死の数日前、救急車で病院に緊急搬送された。6人の消防士が体を持ち上げてやっと運んだと報道されている。病院で腎臓の透析や点滴治療を受けたが、臓器不全に陥り死に至った。搬送後、母親のリーサ・ホルトンさんは医師に「あと1週間もたないかもしれない」と重篤な状況を伝えられた。しかしジェイソンさんはこれまで8度も「死の淵をさまよった経験」があり、リーサさんは「今回もジェイソンは回復するはず」という希望を持っていた。

しかし残念ながら、ジェイソンさんは帰らぬ人となった。死去したのは34歳の誕生日を迎える数日前のことだった。

検視官の報告書には「臓器不全と肥満により死亡した」と記載された。

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ジェイソンさんを死に向かわせた「食生活」

ジェイソンさんは誕生時、健康な子どもだった。そんな彼の人生を大きく変える出来事が起こったのは3歳のとき。父が急死したのである。

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生後3カ月のジェイソンさん(中央)と母リーサさん(右)。@talktv – Youtubeのキャプチャ画像

父を亡くした悲しみ、そして子ども時代にいじめられた経験が「食べること」に向かわせた、とジェイソンさん自身は分析している。10代から「大量に食べること」がジェイソンさんのルーティーンとなっていた。1日約1万キロカロリーを摂取し、また大好物のエナジードリンクは「一気に15本飲むこともあった」と語っている。

 

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子ども時代のジェイソンさん(右)と母リーサさん(左)。@talktv – Youtubeのキャプチャ画像

ジェイソンさんの住まいの向かいにあるケバブ店「グリル・アンド・チル」のオーナーであるアランさんは、ジェイソンさんの食生活を見てきた人の一人だ。コロナ禍になる前まで、ジェイソンさんは頻繁にアランさんの店にやってきて大量注文していた。

「フライドポテト、ハンバーガー、ケバブ、そしてドリンク類を彼は購入していました」

ジェイソンさんはとても静かな男性で、店であまり会話をすることもなく、また近隣住民ともほとんど交流はなかったという。

「彼はいい人でしたが、友達が誰もいなかったと思います」とアランさんは語り、コロナ禍以降、ジェイソンさんを見かけることはなかったとのこと。

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クレーン車を使っての搬送劇も

2020年、ジェイソンさんを一躍有名にする「事件」が起こった。リンパ浮腫で倒れたジェイソンさんだったが、救急隊員は母の家があるフラット(マンション)の4階から重い彼を運び出すことができなかったのだ。そこで急遽、4階の窓からベッドごとジェイソンさんを運び出す方法がとられた。30人以上の消防隊員と技術者らが集結し、クレーン車を使い7時間かけての大作業となった。

 

大きなクレーン車とたくさんの人が動員された。4階の窓からの搬出劇の動画はネットで拡散された。

事件でたくさんの野次馬や報道陣が住居周りに集まり、写真や動画が拡散された。その日以来、ジェイソンさんは全国区の有名人となってしまった。この時期のことをジェイソンさんは昨年の取材で「私の人生でもっとも悲惨な時期だった」と語っている。

無事病院に搬送されたものの、彼を検査できる大きさのレントゲン機器が病院になかった。ジェイソンさんはロンドン動物園に運ばれ、動物用のレントゲン機器を使用して検査を行ったというエピソードも残っている。

 


入院中のジェイソンさん。

2014年頃から動くことが困難になり、呼吸困難にも悩まされた。福祉手当をもらい、強度の高い家具やトイレを備えた公団住宅のバンガロー(1階建ての家)で暮らしていた。日々の生活について、昨年の取材で下記のように話していた。

「私は決して外に出ません。庭にも出ません。1日に歩くのは25歩ほどだけです」

2022年には脳卒中を起こし血栓の疑いも浮上したジェイソンさんは、何とか体重を減らしたいと考えた。「胃バンド手術」をするには彼の体重は重すぎたため、肥満症治療薬「ウィーゴビー」の処方を希望。イギリス医療NHS(国民健康サービス)のウェイティングリストに載っていた。しかし処方される前に亡くなってしまった。

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悲しみの中、「もう1つの問題」

息子の死去に打ちひしがれた母リーサさんだが、悲しみの中、新たな問題が浮上した。ジェイソンさんを荼毘に付し、埋葬するための手はずが整わなかったのだ。

これはジェイソンさんの「重量」以上に、遺体があまりにも大きいことによるものだ。通常の棺に入らず、また高額な料金がかかることも懸念点だった。

 


リーサさん(右)とジェイソンさん(左)。

死後約1週間後の取材時点で、リーサさんはまだこの解決策を探せていなかった。しかしその後の報道によると、引き受けてくれる葬儀社を探せたようだ。

ジェイソンさんの冥福を祈りたい。

 

【次ページ:動画あり】こんなに元気そうだったのに…。2023年10月配信のインタビューで自身について語るジェイソンさん

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はきはきと取材に答えるジェイソンさん。体の状態は深刻ではあったものの、この時点では7カ月後に死去するとは誰も予期していなかった。