生成AIの誕生は、創造性の幅を広げる、現代アートにとってのエポックメイキングとなった。大規模言語モデルを活かした新たなアーティストたちが生まれているいま、世界で注目を集めている日本人アーティストに話を聞いた。
Pen最新号は『いまここにある、SFが描いた未来』。SF作家たちは想像力の翼を広げ、夢のようなテクノロジーに囲まれた未来を思い描いてきた。突飛と思われたその発想も、気づけばいま次々に現実となりつつある。今特集では人類の夢を叶える最新テクノロジーにフォーカス。SFが夢見た世界が、ここにある。
『いまここにある、SFが描いた未来』
Pen 2024年6月号 ¥880(税込)
Amazonでの購入はこちら
楽天での購入はこちら
---fadeinPager---
テクノロジーの進歩とともに、日々目まぐるしく変化していく現代アートの潮流のただ中で、ずば抜けた瞬発力と唯一無二の表現力を武器に、世界の舞台で活躍している日本人アーティストがいる。生成AIを駆使して創作活動を行う草野絵美だ。NFTアートが注目され始めた年、当時8歳の息子が作成したNFTアートシリーズ「Zombie Zoo Keeper(ゾンビ・ズー・キーパー)」をきっかけに、自身でもデジタルアートの創作を開始した草野は、翌22年にジェネラティブNFTシリーズの「新星ギャルバース」を発表。NFTマーケットプレイスのオープンシーにおいて、販売開始から4時間で取引総額が約4億円に達し、一時全世界1位の取引額を記録した。23年にはグッチがクリスティーズと共催したオークションに作品を出品するなど、短期間で確かな実績を重ねてきた。
草野が初めて写真の生成AIアートを発表したのも、同23年5月のこと。「Neural Fad(ニューラル・ファッド)」と名付けられた100点の作品はアメリカのデジタルギャラリーにて販売され、うち6作品は東京都現代美術館に展示された。そんな草野の作風の特徴となるのが、ファッション性の高いレトロフューチャリスティックな世界観だ。
「いまのスタイルにたどり着くことができたのは、画像生成AIのミッドジャーニーによる、大規模言語モデルのローンチがきっかけとなりました。以前からいろいろなAIツールを触ってきましたが、プロンプト次第で、見たいものが現実のようなクオリティで表現されるようになり、表現の幅が一気に広がりました。自分がいままで見てきたものや、好きなものが、そのままスキルとして現れる時代がきたと、とてもワクワクしたことを覚えています」
学生時代から、ストリートスナップのフォトグラファーや、レトロポップなエレクトロ・ユニットのボーカリストとして活動してきた草野のテイストは、生成AIの力によって、ダイレクトに作品へと昇華されている。
「生成AIのツールは日々進化していますが、最新の技術やプラットフォームを使うことに対するこだわりみたいなものは、特にありません。結局アートとして評価されるのは、どんなツールを使ったかではなく、そこに込められたナラティブやコンテクストだと思うので、みんなが考えつかないような、自分だけのストーリーを込められるように考えながら、創作活動を続けています」
生成AIというツールを使って草野が描き出すのは、現実と非現実、そして過去と未来が交錯する、誰も見たことがない日常風景。それらはときに、現代社会の本質を浮き彫りにする。
---fadeinPager---
生成AIで描き出す草野絵美の世界
『いまここにある、SFが描いた未来』
Pen 2024年6月号 ¥880(税込)
Amazonでの購入はこちら
楽天での購入はこちら