生成AIを活かして世界のアートシーンを席巻するアーティスト、草野絵美とは?

  • 文&編集:佐野慎悟
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生成AIの誕生は、創造性の幅を広げる、現代アートにとってのエポックメイキングとなった。大規模言語モデルを活かした新たなアーティストたちが生まれているいま、世界で注目を集めている日本人アーティストに話を聞いた。

Pen最新号は『いまここにある、SFが描いた未来』。SF作家たちは想像力の翼を広げ、夢のようなテクノロジーに囲まれた未来を思い描いてきた。突飛と思われたその発想も、気づけばいま次々に現実となりつつある。今特集では人類の夢を叶える最新テクノロジーにフォーカス。SFが夢見た世界が、ここにある。

『いまここにある、SFが描いた未来』
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草野絵美 アーティスト
学生時代から、3人組エレクトロ・ユニット「サテライトヤング」として活動を開始。2021年からNFTアートの創作活動を開始。4月中はヨーロッパを巡り、グループ展や個展の開催など、海外での活動を精力的に行った。

テクノロジーの進歩とともに、日々目まぐるしく変化していく現代アートの潮流のただ中で、ずば抜けた瞬発力と唯一無二の表現力を武器に、世界の舞台で活躍している日本人アーティストがいる。生成AIを駆使して創作活動を行う草野絵美だ。NFTアートが注目され始めた年、当時8歳の息子が作成したNFTアートシリーズ「Zombie Zoo Keeper(ゾンビ・ズー・キーパー)」をきっかけに、自身でもデジタルアートの創作を開始した草野は、翌22年にジェネラティブNFTシリーズの「新星ギャルバース」を発表。NFTマーケットプレイスのオープンシーにおいて、販売開始から4時間で取引総額が約4億円に達し、一時全世界1位の取引額を記録した。23年にはグッチがクリスティーズと共催したオークションに作品を出品するなど、短期間で確かな実績を重ねてきた。

草野が初めて写真の生成AIアートを発表したのも、同23年5月のこと。「Neural Fad(ニューラル・ファッド)」と名付けられた100点の作品はアメリカのデジタルギャラリーにて販売され、うち6作品は東京都現代美術館に展示された。そんな草野の作風の特徴となるのが、ファッション性の高いレトロフューチャリスティックな世界観だ。

「いまのスタイルにたどり着くことができたのは、画像生成AIのミッドジャーニーによる、大規模言語モデルのローンチがきっかけとなりました。以前からいろいろなAIツールを触ってきましたが、プロンプト次第で、見たいものが現実のようなクオリティで表現されるようになり、表現の幅が一気に広がりました。自分がいままで見てきたものや、好きなものが、そのままスキルとして現れる時代がきたと、とてもワクワクしたことを覚えています」

学生時代から、ストリートスナップのフォトグラファーや、レトロポップなエレクトロ・ユニットのボーカリストとして活動してきた草野のテイストは、生成AIの力によって、ダイレクトに作品へと昇華されている。

「生成AIのツールは日々進化していますが、最新の技術やプラットフォームを使うことに対するこだわりみたいなものは、特にありません。結局アートとして評価されるのは、どんなツールを使ったかではなく、そこに込められたナラティブやコンテクストだと思うので、みんなが考えつかないような、自分だけのストーリーを込められるように考えながら、創作活動を続けています」

生成AIというツールを使って草野が描き出すのは、現実と非現実、そして過去と未来が交錯する、誰も見たことがない日常風景。それらはときに、現代社会の本質を浮き彫りにする。

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生成AIで描き出す草野絵美の世界

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2023年5月にアメリカのデジタルギャラリーであるブライト・モーメンツとともに販売した、生成AIによる始めてのNFTアートシリーズ「Neural Fad」。たけのこ族、カラス族、ロリータといった新旧東京のストリートカルチャーと、テレビ、アニメ、ロボット、ゲームなどのポップカルチャーを混ぜ合わせた、レトロフューチャリスティックな架空のファッション史シリーズ。
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23年9月にオンラインメディア「ライトクリック・アンド・セイブ」とともに作成し、生成アートの祭典アート・ブロック・マーファで発表した「Pixelated Perception」。その後金沢21世紀美術館にて展示された。 
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23年12月にブライト・モーメンツとともに発表した「Techno-Animism」。すべての物体には精霊が宿り、技術は敵ではなく仲間として受け入れられると信じる日本のオプティミズムを表現。

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