アヤメの新2号店はセミオーダー対応のメガネサロン、今泉デザイナーの目は未来へと向く

  • 写真・文:一史
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東京・青山の歴史的な商業施設、フロムファースト内に誕生した新メガネサロンのayamerow。削り出しの石を什器に使った重厚な空間。

「建築家の柳原照弘さんに内装をお願いしたとき、お伝えした何よりも大切なテーマが、『フロムファーストらしさ』でした」
新店のayamerow(あやめろう)の企画スタートについて、メガネブランドのアヤメの創業オーナー&デザイナーである今泉 悠がこのように語った。2024年5月15日(水)に営業開始したこの店は、アヤメの直営第2号店となる。店をつくるために物件を探す発想とは逆の、まず物件ありきのコンセプトづくり。
日本のデザイナーズファッションの歴史が好きな人なら、フロムファーストと聞くだけで様々な情景が頭に浮かぶはず。赤色のレンガタイルで外壁を覆い尽くしたコンセプチュアルな建物、表参道駅から根津美術館に歩くみゆき通りの端に位置する隠れ家的な商業ビル、迷路のように入り組んだ複雑な構造。コムデギャルソンが1975年に初めての店を誕生させた場所であり、76年には現在も関連ブランドでの入店を続けるイッセイミヤケが店を設けた東京モードのシンボル。
その後、みゆき通り沿いの別の場所にコムデギャルソン、イッセイミヤケが移転してこの通りにはヨウジヤマモトも加わった。現在では海外のプラダ、バレンシアガ、モンクレールらも軒を連ねる青山エリア屈指のモードストリートだ。根津美術館から原宿の明治神宮まで、一気に直線上につながるファッションエリアのスタート地点、または終着地点がフロムファーストである。
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洞窟のように静けさのある室内。壁と床は左官職人による仕上げ。
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厳選されたアヤメが石の上にゆったりと置かれている。「メガネ店の台座はガラスか木材が一般的でしょう。ayamerowではそのセオリーも外しています」と今泉デザイナー。

新店のayamerowでは、アヤメがギャラリーのごとくゆったりと展示されている。重厚な削り出しの石の上に、淡々と置かれたアイウェアをスポットライトが照らす。洞窟のような空間は高級感の演出狙いよりも、レンガ外壁のフロムファーストの外観や構造とひとつながりになるように考えられた結果。
「部屋の外と内部が分断されるイメージを避けたかったんです。歴史あるフロムファーストに惹かれてアヤメの出店を決めたのですから、お客様が通路を歩く気分のまま店に入っていただくようなつくりにするのが自然な考え方でした」
店内はやや薄暗く、フレームやレンズの色を判別しにくく感じる人もいるかもしれない。しかしそんな人もご安心を。通りに面した側に大きな窓があり、日中は自然光がきれいに差し込む。入口からあえて隠したこの窓際エリアは、通常はサロンスペースとして運営。屋外の樹木が美しいこの窓際なら、メガネの繊細な色や形をじっくり確かめられる。

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スポットライト照明で空間に動きをつけ、メガネの存在感を際立たせた。展示品は少数に絞り、ラインナップの大半を店内にストックしている。
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ポップなフィーリングのサングラス「KORO」。服装に馴染むネオベーシックが主軸のアヤメのなかで個性派のデザイン。¥41,800(税込)

ayamerowの商品トピックでもっとも注目されるのは、アヤメ初となるセミオーダーだろう。メタルフレームのアイコンモデル「マンレイ」を好みにアレンジできる。フロント形状はボストンかラウンドで、各3サイズまで展開。テンプルサイズも選べる。女性に合いやすい小型サイズはマンレイのレギュラー品にもあるが、頭の大きな人対応は初の試み。大きめのメガネを身に着けたい人にも嬉しいサイズ感だ。さらにフレーム素材も、基本となる無垢のチタンからガンメタルメッキ、ローズゴールドメッキなど11色のバリエーションを用意。製造を担当するのは、アヤメのレギュラー品と同様の福井県鯖江市の工場。誇り高き日本メイドを愉しめる。
「メガネ業界で働いたことのなかった自分が身ひとつでブランドを立ち上げられたのは、鯖江の人たちがいたからこそ。アヤメは感謝の気持ちを持って工場さんたちとの取り組みを続けています。外資に支配されない日本の産業として存続していくことを願いつつ」
そう語る今泉デザイナーの想いは、店だけなく産業全体へと広がっている。

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店内奥に設けられたテラスつきの部屋。セミオーダーの顧客対応をしたり、今泉デザイナーの職場にも使われる予定。各部屋に仕切りはなく、フロムファーストの建築構造と同様に回遊しながら空間を愉しめる。
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2010年に個人でアヤメを立ち上げた今泉 悠。アヤメは女性にも合いやすい柔らかなニュアンスが愛され、ジェンダーレスな時代感覚も追い風になり一躍評判を得たブランド。

今泉デザイナーがフロムファーストの空き物件を知ったのは、入居していたデザインオフィスに勤める友人から退去する話を聞いたときだった。
「この機会にアヤメの新拠点にしようと考えました。来年で50周年を迎えるフロムファーストは、日本のファッションの歴史を物語る建物。この場所だからこそお客様がゆっくりできるサロン的な空間をつくれます。既存店ではやりにくかったセミオーダーシステムも運営できますし、店に合う新商品も開発できる。メガネ以外の例えば、香水のポップアップショップを設けることもできるでしょう。この場でなにができるのか、スタッフを含め自分たちが愉しみにしているところです」
当面の間の営業は、1週間で3日ほどの不定期なもの(営業日程は店専用インスタグラムを参照)。セミオーダー予約を含む申込みフォームも着々と準備が進む。千駄ヶ谷にある明るく開放的な第1号店とは客層が異なる店になるかもしれない。

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4点すべて「マンレイ」。上2点の素通しはセミオーダーのサンプルで、右がガンメタル、左がローズウッドのメッキ(セミオーダーフレームは¥70,000〜80,000ほどを予定)。下2点のサングラスはレディメイド品。2点ともにフレームが¥47,300(税込)、色つきレンズ ¥5,500(税込)から。

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ayamerowがある2階から中庭を覗いたフロムファースト。円状に店やオフィスが並んでいる。
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中庭の周囲とその奥にも店が続く迷路のような独特の構造。70~80年代の日本モードがルーツの施設だ。プロデュース:浜野安宏、設計:山下和正。

フロムファーストは50年近くの間にさまざまな店やデザインオフィスが入居しては入れ替わってきた。表参道の街の個性ともいえるデザイン発信拠点の老舗である。店とオフィスが同じ建物のなかで同列に並ぶのもユニークな特徴だ。
アヤメの今泉デザイナーがここに心惹かれたのも、そのクリエイティブな風土にあるのだろう。普遍の外観をまとったayamerowがこれからどのような業態に変化していくのか、彼自身がいちばんワクワクしているに違いない。

ayamerow

東京都南青山5-3-10 FROM-1st 2階
営業:12時〜18時
※営業日その他は以下の専用インスタグラムを参照
www.instagram.com/ayamerow/

アヤメ公式サイト
https://ayame-eyewear.com/

アヤメ公式インスタグラム
www.instagram.com/ayame_id/

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【画像】アヤメの新2号店はセミオーダー対応のメガネサロン、今泉デザイナーの目は未来へと向く

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東京・青山の歴史的な商業施設、フロムファースト内に誕生した新メガネサロンのayamerow。削り出しの石を什器に使った重厚な空間。


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洞窟のように静けさのある室内。壁と床は左官職人による仕上げ。
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厳選されたアヤメが石の上にゆったりと置かれている。「メガネ店の台座はガラスか木材が一般的でしょう。ayamerowではそのセオリーも外しています」と今泉デザイナー。

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スポットライト照明で空間に動きをつけ、メガネの存在感を際立たせた。展示品は少数に絞り、ラインナップの大半を店内にストックしている。
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ポップなフィーリングのサングラス「KORO」。服装に馴染むネオベーシックが主軸のアヤメのなかで個性派のデザイン。¥41,800(税込)

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店内奥に設けられたテラスつきの部屋。セミオーダーの顧客対応をしたり、今泉デザイナーの職場にも使われる予定。各部屋に仕切りはなく、フロムファーストの建築構造と同様に回遊しながら空間を愉しめる。
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2010年に個人でアヤメを立ち上げた今泉 悠。アヤメは女性にも合いやすい柔らかなニュアンスが愛され、ジェンダーレスな時代感覚も追い風になり一躍評判を得たブランド。

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4点すべて「マンレイ」。上2点の素通しはセミオーダーのサンプルで、右がガンメタル、左がローズウッドのメッキ(セミオーダーフレームは¥70,000〜80,000ほどを予定)。下2点のサングラスはレディメイド品。2点ともにフレームが¥47,300(税込)、色つきレンズ ¥5,500(税込)から。

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ayamerowがある2階から中庭を覗いたフロムファースト。円状に店やオフィスが並んでいる。
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中庭の周囲とその奥にも店が続く迷路のような独特の構造。70~80年代の日本モードがルーツの施設だ。プロデュース:浜野安宏、設計:山下和正。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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