2023年に「お~いお茶 カテキン緑茶」のテレビCMで、話題となった日本初のAIタレントの起用。このモデルを制作したのが、AIモデル(AI model)社だ。イメージに合わせて自由自在に変更できるAIタレントの誕生が、ビジネスにどういった変革をもたらすのか。
Pen最新号は『いまここにある、SFが描いた未来』。SF作家たちは想像力の翼を広げ、夢のようなテクノロジーに囲まれた未来を思い描いてきた。突飛と思われたその発想も、気づけばいま次々に現実となりつつある。今特集では人類の夢を叶える最新テクノロジーにフォーカス。SFが夢見た世界が、ここにある。
『いまここにある、SFが描いた未来』
Pen 2024年6月号 ¥880(税込)
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自販機で緑茶を購入する文化がなかった1985年に、いち早く缶入り緑茶を発売するなど、先駆的な取り組みを続けてきた伊藤園。昨年「お~いお茶 カテキン緑茶」のパッケージデザインをAIで制作、さらにテレビCMにAIタレントを日本で初めて起用した。
興味深いのはクライアントの注文に合わせて、モデル制作が行われたことだ。「お~いお茶 カテキン緑茶」は脂肪の吸収を抑え体脂肪がつきにくくする、特定保健用食品。伊藤園からは健康的、未来的、進歩的といったキーワードが提示され、そこから制作がはじまった。AIモデル社CTOの中山佑樹はこう語る。
「AIによる制作のいちばんのメリットは、商品コンセプトにあった人物を短期間でつくり出せることです。AIが生み出した複数案から選び、細かな調整をして現在のモデルになりました」
第一弾のCMでは、同じタレントが年をとった時と若い時、両方のシーンがある。若くしたり老けさせたりといった表現が簡単にできるのも、AIならではのメリットだ。また、最近はタレントの不祥事などによって急遽内容を変更せざるを得ないことも少なくないが、AIタレントであればそういったこともない。
「それは思いもよらないメリットでしたが、一方で人間のタレントの場合は結婚や受賞といったよいことが購買につながることもあります。タレントの仕事がAIに奪われるのではないかと危惧されていますが、今後、広告業界はすべてAIでつくられるのではなく、CGのように技術のひとつとして使われるようになるでしょう」
もともとAIモデル社は、アパレルブランドのECサイトでの「ささげ業務」を改善できるサービスからはじまった会社。ささげ業務とは撮影・採寸・原稿作成という3つの業務のことだ。
「スピード感を求められる、ファッション業界のECサイトの撮影現場は本当に過酷です。特にモデル撮影は時間もお金もかかります。弊社には代表の谷口をはじめアパレル業界出身のメンバーが多く、これらの問題を解決したいという強い思いから、AIを使った事業がはじまりました」
試着ができないECサイトで、モデルによる着用画像があることは購入する側にとって大きなメリットだ。服に合わせたモデルを何通りもつくれるだけでなく、デジタル上で服をスタイリングすることも可能だという。
「しかし広告業界でのタレント起用と同じように、ブランドの世界観を強く打ち出したい時には人間のモデルのほうがいいこともあります。クリエイションと効率が求められるファッション業界で、効率の部分をAIで支えていければと思っています。」
AIモデル社
2020年創業。AIで生成したバーチャルヒューマンモデルの開発を中心に、さまざまな業種の企業やブランドへの導入や活用支援・DXなどを支援する企業。ファッションECサイトの業務効率化を実現するサービスで注目されている。
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