映画『君とボクの虹色の世界』や『ザ・フューチャー』、書籍『あなたを選んでくれるもの」などで知られるミランダ・ジュライ。アーティスト、映画監督、作家として幅広く活躍する彼女の東京での初個展『MIRANDA JULY:F.A.M.I.L.Y.』が、プラダ 青山店にて5月9日(木)から開催中だ。
キュレーターのミア・ロックスがキュレーションした今回の展覧会で展示されるのは、ジュライの最新作『F.A.M.I.L.Y.(Falling Apart Meanwhile I Love You)』。これはインスタグラムを通じて7人の見知らぬ相手と1年にわたってコラボレーション。その動画を元にしたマルチチャンネルビデオインスタレーションとなる。
---fadeinPager---
作品の参加者は、ジュライからの、例えば、シャワーを浴びるなどの一連のプロンプト(指示)に対するリアクション動画を送信。それをジュライがSNSコンテンツ向けに開発された無料編集アプリの切り取りツールを使って、自分の動画に取り込んでいく。そして完成したのが、ジュライと参加者がまったく新しい身体言語を通じて親密さと境界線を模索するシュールなパフォーマンスのシリーズだ。
会場には6つの作品が並び、その独特の世界観が表現されている。ジュライが長編映画の製作で提携するサウンドデザイナーによって作成された、生活感のある不思議なサウンドにも注目したい。
『F.A.M.I.L.Y.(Falling Apart Meanwhile I Love You)』について「愛でられることで元気になるという、インスタグラムが叶えてくれることのひとつと私が考えていることを、人の力で達成しようとしています」と語るジュライ。
一方、「これはジュライが好む活動形態です」と話すのは、キュレーターのミア・ロックス。「彼女は見知らぬ人との交流において、一定のレベルまでは相手をコントロールしていますが、同時にその中で他人の欲求や行為も歓迎します。彼女は遊び心ある形で、力とコントロールの共有を実験しているのです」
---fadeinPager---
さらにロックスはジュライの作品全般についてこう強調する。「ジュライ作品は幅広い人間関係や親密さのあり方を考察しています。既存のヒエラルキーや規範的な力関係に対する彼女の疑問は、紛れもなくフェミニストの立場から発せられており、それが彼女がこれまでの活動で使用してきたさまざまな媒体に通じています」
ちなみに『MIRANDA JULY:F.A.M.I.L.Y.』は、ミラノにあるプラダ財団のアートスペース「オッセルヴァトリオ」で、10月14日(月)まで公開されている彼女の美術館初個展『Miranda July:New Society』との同時開催。こちらもロックスがキュレーターを務め、短編映画、パフォーマンス、インスタレーション作品、『F.A.M.I.L.Y.(Falling Apart Meanwhile I Love You)』など、1990年代初期から今日に至るまでのジュライの30年に及ぶ活動をカバーするものとなっている。期間中にミラノを訪れる機会があれば、ぜひ併せて足を運んでみたい。
また、東京展、ミラノ展ともに会場ではプラダ財団が出版するQuaderniシリーズの図録が販売される。図録にはミランダ・ジュライと写真家、映画監督であるシンディ・シャーマンの対談に加え、ミア・ロックスによるエッセイも収録されている。こちらを読んでからあらためて展覧会を鑑賞すれば、作品への理解がより深まり、いわば展覧会を2度楽しめることになる。プラダ 青山店でぜひミランダ・ジュライの世界に没頭したい。
MIRANDA JULY:F.A.M.I.L.Y.
会期:2024年5月9日(木)〜8月26日(月)
場所:プラダ 青山店6F
住所:東京都港区南青山5-2-6
不定休
入場無料