中国の都市部の公衆トイレに、尿を分析して健康状態をチェックする尿検査便器が導入されている。街角で用を足すついでに気軽に検査を済ませることができ、健康意識の向上に一役買っているようだ。
メキシコのニュースメディア「エル・ポンベニール」は、「中国の上海には、その場で尿検査ができ、結果が携帯電話に送られる公衆トイレがある」と紹介。掲載の動画では、一般的な男性用小便器の上部に、タッチ画面が付いている。また、便器内の底部には、通常の排水口の少し上にもう1カ所、グリル状の穴が設けられている。この部分が採取口となっている。
利用者はタッチ画面を操作し、QRコードから電子決済で支払いを済ませる。検査料金は1回19.9元(約430円)だ。採取口をねらって用を足し、終わると自動で成分を分析。結果はすばやく手持ちのスマートフォンに送信される。医療機器の位置づけではないが、健康管理の参考データとして活用することを念頭に開発された。上海では少なくとも9カ所に設置されている。
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あっという間に結果が届く
利用は非常に手軽だ。フリーの写真家であり、ドキュメンタリー監督でもあるクリスチャン・ピーターセン=クラウゼン氏は、実際にこの便器を利用。そのときの様子をXにポストしている。上海空港に近い大型モール「愛琴海購物公園(エーゲ海ショッピングセンター)」に立ち寄った際、めずらしい便器を発見。興味を引かれて利用したところ、「やり方全般に、思うよりも簡単」だったという。
メッセージ・決済アプリのWeChatで支払いを済ませて利用すると、エスカレーターで下の階に下りる前に、すでにWeChat内の専用ミニアプリに結果が届いていたという。カルシウムが不足気味という結果だったが、そのほかの数値に異常はなかったことで氏は安心できた。
氏は数日後、また同じタイプのトイレを見かけて利用している。Xにポストされたテスト結果画面には、「総合指数:94%健康」「白血球は検出されておらず、値は正常範囲内です」などの分析結果が中国語で表示されている。尿タンパクやPH値、亜硝酸塩にグルコース(尿糖)など、各種指標ごとに「正常」の文字が並ぶ。
小便器は医療機器というわけではないが、人々が軽度な異常に気づき医療機関を受診するきっかけになるのでは、と氏は期待を示している。氏は以前かかった心臓医から、Apple Watchが普及して以来、心臓発作に至る前に受診してくれる患者が多くなったとの話を聞いた。この小便器も、健康状態を把握するアイテムのひとつになるかもしれないと持論を述べる。
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重篤な症状の未然に防止に
米ニューヨーク・ポスト紙は、中国語メディアの情報をもとに、同様の小便器は中国全土に展開していると述べている。ショッピングモールを中心に展開している模様だ。
同紙のコメント欄ではある読者が、アメリカの高額な医療制度に比べてはるかに良いと感想を漏らす。一方、分析結果がソーシャルメディアのIDと紐付け可能なことから、不健康な人々を監視する手段になるのでは、との懸念も聞かれる。
ユニークな小便器を紹介したピーターセン=クラウゼン氏のポストは、ネットで大きな話題になった。これを受け、氏がかつてアート・ディレクターとして師事していたクリス・マティスチク氏は、米テックメディアのZDネットに、この便器に対する考えを寄稿している。
マティスチク氏は、民間企業が運営するサービスに自分の健康データが渡ることになるため、やはりプライバシーが気になると指摘。一方で、長生きのためには健康状態をデータとして把握することが重要であるとも述べ、異常値をより手軽に発見できることは非常に有益だろうとの見解を示した。
現状はかなりの変わり種といった印象を帯びるが、実際に病気の早期発見につながれば見方も変わりうるだろう。個人の寿命を延ばすほか、社会全体では医療費の削減につながるかもしれない。
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@elporvenirmx 🤨 #ENTÉRATE ♬ sonido original - ElPorvenirMx
【動画】検査機能付きの小便器。上部のタッチ画面で操作する。
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Here is a translated image showing what they all test for: pic.twitter.com/TLbjRE4k1U
— Christian Petersen-Clausen (@chris__pc) April 22, 2024
【写真】診断結果の画面。尿に含まれる成分値が表示される。