日本の映画を世界へ。MEGUMIがプロデューサーとして仕掛ける、カンヌでの新たな挑戦

  • 写真:榊 水麗
  • 文:細谷美香
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俳優として多数の作品に出演、プロデューサーとしても映画や連続ドラマを手掛け、2023年にはコンテンツスタジオ、BABEL LABELにも参加するなど活躍の幅を広げるMEGUMIが、開催中の第77回カンヌ国際映画祭で⽇本映画・⽂化を世界に発信するイベント「JAPAN NIGHT」を開催する。彼女が「JAPAN NIGHT」に込めた想いを、プロデューサーとして活動するようになった経緯とビジョンとともに聞いた。

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待っているだけでは始まらない。自らつくり、発信する大切さ

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MEGUMI(めぐみ)●1981年生まれ、岡山県出身。2001年デビュー。俳優として多数の作品に出演し、20年には第62回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞。プロデューサーとしても活躍の幅を広げ、ドラマ『完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの』(22年)などを手掛ける。23年にコンテンツスタジオ、BABEL LABELに所属。

――MEGUMIさんが映画やドラマのプロデュースを始めたきっかけからお聞かせください。

芸能界は“(オファーを)待つのも仕事”という考えもあるのですが、コロナ禍でロックダウンになり、この概念のままではダメだろうなと直感的に思った日がありました。たくさんの方がYouTubeやTikTokなどで発信する時代で、ただ待っていることがすごく苦しくなって。仲のいい脚本家の方や俳優の人たちもきっと時間を持て余しているだろうと思って、「インスタグラムでドラマをつくりませんか?」と提案してみました。グリーンバックを買って、Zoomを活用しながら1分間の連続ドラマのようなものをつくったのです。観た方からは『すごく元気になりました』というような反応をいただいて、なんてエモーショナルな一連なんだろう、と。こういう形で世の中に発信していくことに対して、自分の中ですごくしっくりくる感覚がありました。

それと、日本人女性の自己肯定感が世界最下位だという話を聞いたとき、衝撃を受けると同時に少し理解できる部分があったことも、きっかけのひとつです。当時は大人の女性が主人公となる作品が今よりも少なかったので、女性を主人公に、さまざまなことに揉まれながらもサバイブし成長していく作品をつくるプロデューサーがいてもいいんじゃないかと思ったんです。

――「女性が主人公」というの言葉の通り、『完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの』(2022年、テレビ東京)、『くすぶり女とすん止め女』(23年、同)、映画『零落』(23年)など、女性たちにエールを送る連続ドラマの企画・プロデュースを手掛けられていますね。

資金集めが大変で、プレイスメントというあまり日本では馴染みのない広告の枠組みを採用しました。クライアントの商品を「このシーンで出すので出稿してください」というやり方なのですが、どの場面であれば自然なのかと考えながら、役者さんの出演CMとの兼ね合いも考慮しつつ、お金も集めなきゃいけない……。難しさも感じましたが学びも多かったので、結果的にすごく良かったと思っています。

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すべてに関わるプロデューサーだからこそ、達成感は大きい

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プロデューサーとしての活躍も目覚ましいMEGUMI。手掛ける作品では、女性を主人公にしながら、社会が抱える問題も描く。

――プロデューサーは作品づくりのすべてに関わる仕事ですよね。やはり大変なことは多いですか。

超大変です(笑)。キャスティングが決まらない、お金が集まらない、監督のクリエイションを大切にしたい、お弁当はどうしよう……とか、何か問題が起こったらジャッジして、調整して、解決していくのがプロデューサーとしての仕事です。でもすべてが終わった時の達成感はその分大きいので、とても楽しいですし俳優業だけではわからないことばかりですね。 

――昨年から、映画やドラマなどの作品を手掛けるBABEL LABELに参加されています。映画『余命10年』やドラマ『インフォーマー』などでご一緒されている藤井道人監督からのお誘いだったそうですね。

先ほどお話しした連ドラの真っ最中、藤井さんに「聞いてください。もう大変なんです!」と愚痴をこぼしたら、「姉さんの悩み、俺たちがなんとかします」と言ってくれて(笑)。この特殊な悩みを誰に言えばいいんだろうと孤独を感じていたのですが、藤井さんは全部わかってくれたんです。「BABEL LABELならもう少し楽になる方法を教えられる。サポートできます」と言ってもらったときには泣きそうなぐらい嬉しかったです。そこからはトントン拍子で参加させてもらうことになりました。プロジェクトごとに、BABELさんと組むかどうかは都度相談していて、お互い臨機応変にやっています。

――現在、準備している作品について教えてください。

『AFTERGLOWS』という作品でご一緒したイギリス在住の映画監督、木村太一さんのお母さまの話を題材にした映画の準備を進めています。彼女は1970年代に静岡で過ごしたのですが、令和の女性のように自立して、人生を切り開こうとするリアルなストーリーです。男尊女卑が根強く、オイルショックもあった混沌とした当時を強く生きた実話を描いていきます。あとは傷ついた50代の女性3人がスペインを旅して“人生の途中下車”をする物語を、日本とスペインの合作でつくりたいと思っています。

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日本の映画や文化を発信する「JAPAN NIGHT」に込めた想い

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第77回カンヌ国際映画では、⽇本の映画や⽂化を世界に発信することを目的に、「JAPAN NIGHT」と銘打ったパーティを開催する。

――第77回カンヌ国際映画祭にて開催する「JAPAN NIGHT」への想いをお聞かせください。

是枝裕和監督がおっしゃっていたことなのですが、日本ではいま、大体660本ぐらいの映画作品が公開されいるそうです。そのうちの1割はビッグカンパニーと呼ばれる会社の作品で、映画業界の売上の90%はそのビッグカンパニーがつくっている……と。残りの10%の売り上げを取り合うのはビジネス的にきついことですし、好きだからやっているという考えでは映画業界が衰退する。「JAPAN NIGHT」は小さな一歩かもしれませんが、海外に日本映画をきちんと売り、お金にしていくための足掛かりしたい。北野武さんや大島渚さん、是枝裕和さん、濱口竜介さん、深田晃司さんなどのお陰で日本映画への興味は途絶えていないので、フランスや他の国と組んで、ビジネス的な成功にも繋げていきたい。嘆いているだけではいけないという思いから、「JAPAN NIGHT」の開催に至りました。

――「JAPAN NIGHT」はいつ頃から構想していたのでしょうか。

2022年に仲のよいプロデューサーと一緒にカンヌに行ったのですが、「日本はパーティをやっていないんだね」という話になって。いつか自分ができたらなと思っていたんです。カンヌの華やかさは映画業界に対する概念を変えてくれるものでしたし、是枝さんの映画をビルボードで目にしたときには大きな刺激も受けました。その後、プロデュース作品の準備をしているなかで、メインスポンサーの方からカンヌのようなところでプロモーションをかけたいというご相談を受け、自分たちでパーティを開催することは可能かもしれない、という話になりました。その流れと、日本映画のために何かアクションを起こしたいという想いが結びついたんです。

――具体的にはどのようなパーティになりそうですか。

日本の映画界と海外の映画界の交流の場にすることがメインですが、今回ノミネートされている作品を讃えて国内外にきちんと紹介する場にもしたいです。日本のプロデューサーや俳優に、日本のマーケットの弱さも含めてグローバルな感覚や危機感を抱いてほしいという狙いもあります。500人くらいの来場者のうち、半分が日本人で、半分は海外の方になると予想しているので、そこで合作の話など新たな企画が生まれたらいいですよね。交流してバイブスを上げて、「一緒に映画つくろうぜ!」みたいな(笑)。「JAPAN NIGHT」という名前はちょっと大きすぎないかとも思ったのですが、気合いを感じていただけるのではないか、と。私も着物で参加する予定ですし、和食や日本酒、日本のお茶もお出しして、映画と食と文化を感じていただける場所にしたいです。

――開催に対して、周囲からはどのような反応がありましたか。

自分自身、「私が?」という気持ちもありますし、否定的なご意見のある方も当然いらっしゃると思います。でも藤井さんをはじめ、そのほかの重鎮の監督にも「大変だと思うけど頑張ってね」と言っていただきました。その言葉を聞いて励みになりましたし、若い監督に日本映画のバトンを渡していくためにも必要なお役目なのかもしれないと思えたんです。こうして取材を組んでいただけるのも、私が表に出る仕事をしているからという部分もあるはずですので、自分の立場だからこそできることを続けていきたいと思います。

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スタイリング:斉藤くみ、ヘア&メイク:加藤 恵、衣装:パンツ/DEPAREILLE ピアス・ゴールドリング/affect

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BABEL LABEL

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