創業150周年の節目を来年に控えたオーデマ ピゲ。そんなスイス屈指の高級ウォッチメゾンは2021年から、独自の新作時計発表会「APソーシャルクラブ」を開催してきた。今年の舞台となったのは、イタリア・ミラノ。去る3月4日、世界中から厳選されたメディア関係者に新作時計と合わせて、移転・新装なった「APハウス ミラノ」がお披露目された。その様子を時計ジャーナリストの髙木教雄がリポートする。
オーデマ ピゲは、ブティックとはコンセプトが異なるサロン「AP ハウス」を世界19都市に展開している。日本にも六本木の東京ミッドタウン内にあり、ここでしか買えない限定モデルも度々登場しているが、真の目的は販売ではなく、オーデマ ピゲのオーナーたちが第二の我が家のように寛いでコミュニケーションできる場を提供することにある。
その第一号店となった「AP ハウス ミラノ」が3月、高級ブティックが居並ぶモンテナポレオーネにほど近いバグッタ通りに移転・開業を果たした。APオーナーたちの新たな寛ぎの場に選ばれたのは、1939年にミラノ初の複数階式駐車場として建てられた旧ガレージ・トラヴェルシという歴史的建造物だった。その最上階から下5フロアを使った1600平米もの広大な空間を美しく構成したのは、イタリア建築界の巨匠にして家具やグラフィックのデザインも手掛けるピエロ・リッソーニ率いるリッソーニ&パートナーズ。
彼は、オーデマ ピゲのメゾンが位置するジュウ渓谷の自然にちなんだ木や石、そして時計に使われるスチールとガラスを駆使し、空間をさまざまに区分けてみせた。さらにメゾンのアイコンである「ロイヤル オーク」を象徴する八角形やプチタペストリーをインテリアデザインの随所にちりばめるなど、オーデマ ピゲの世界観も表現した。
自動演奏ピアノやレコードコレクションによる音楽が、この美しい空間を満たす。バーカウンターでは、フォーシーズンズホテルと提携したオリジナルカクテルや軽食を提供。ダイニング、リビング、書斎、客間などさまざまな性格のエリアが組み合わされる様子は、まさに“ハウス”と呼ぶにふさわしい。さらにオーデマ ピゲが支援を続ける現代アートのギャラリーまで併設し、メゾンの活動を余すことなく伝える。
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ジョン・メイヤーも登壇した「AP ソーシャル クラブ」が開演!
一昨年から各国で対面形式が実現した「AP ソーシャル クラブ」は、さまざまに趣向を凝らして新作を披露してきた。今年最大のサプライズは、ジョン・メイヤーの登壇だ。世界的ミュージシャンが姿を現したその瞬間、彼とのコラボモデルが今年のメインアクトとなった。
新作時計発表会「AP ソーシャルクラブ」は、「AP ハウス ミラノ」のお披露目前にミラノ市内中心部のコンベンション施設で開催された。元来は殺風景な施設内を、家具やインテリアを整えてラグジュアリーな空間に生まれ変わらせ、メディア関係者を招き入れた。
特別ステージで繰り広げられた、各モデルのプレゼンテーションの最後に登場したのは、世界的なギタリストでシンガーのジョン・メイヤーとのコラボモデルだった。メイヤーがステージに現れた瞬間、会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。彼は、この時計を当初「自分のためだけのオーダーメイドとしてデザインした」のだという。それを見た前CEOのフランソワ-アンリ・ベナミアスが、「ぜひ限定モデルとして世に出したい」と切望し、コラボレーションが実現した。
大のオーデマ ピゲファンであるメイヤーは、同じ日の夜に行われたガラディナーにも出席。次々にお願いされるツーショット撮影にも気さくに応じてくれ、出席者にとって一層特別な一夜となった。
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2024年のオーデマ ピゲは、ゴールドモデルが主役
ミラノでお披露目された2024年新作第一弾は、20モデル。ジョン・メイヤーとのコラボ以外にも、オーデマ ピゲ独自の新18金が登場するなど、素材に凝った注目作が数多く誕生した。
「AP ソーシャル クラブ」の冒頭で、今年からメゾンを率いるイラリア・レスタ新CEOは、「2024年のテーマは、マテリアルとフォルム」だと語った。そしてミラノで発表した20モデルでは、まず素材にフォーカスしたようだ。
「ロイヤル オーク」と「CODE 11.59 バイオーデマ ピゲ」ともに、今年はゴールドモデルに注力。なかでも高い関心が寄せられたのは、「サンドゴールド」と名付けた、淡いサンドベージュカラーを浮かべるメゾン独自の18金の登場であった。またここでは紹介しないが、SPSと新焼結技術を用いたカモフラージュ柄のセラミックをまとったプロトタイプも披露されるなど、新素材開発への積極的な取り組みがアピールされた。
「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー“ジョン・メイヤー”」
ジョン・メイヤーとのコラボモデルでまず目を惹くのは、「クリスタルスカイ」と名付けた、新ダイヤルである。一面に敷き詰められたランダムな形状の小さな突起が、光を乱反射し、見る角度によって次々と表情を変える。メイヤーは、このダイヤルを「いつまでも見飽きない時計が欲しい」と考案したという。無数の突起は、実は形状と角度とが綿密に計算され、それをガルバニックと呼ばれるメッキを用いた精密成形技術で金型に起こしてスタンピングし、ブルーPVDを施すことで煌めくブルーダイヤルが完成する。実機は、写真で見るより煌びやかさは抑えめで、9.5mm厚の薄型とも相まって、エレガントな装いである。
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「ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン オープンワーク」
2022年に登場した「ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン オープンワーク」が、メゾン独自の新18金「サンドゴールド」で新装。淡いサンドベージュの色調は、ピンクゴールドに含まれる銀を、より白いパラジウム置き換えることで叶えられた。さらに光の具合によっては白さがより際立ち、シルバーカラーに見えることも。オーデマ ピゲは、かつてない表情豊かな18金を作り上げてみせたのだ。左右対称で奥行き感たっぷりのオープンワークのフレームもサンドベージュカラーに整えられたなか、白く輝くトゥールビヨンキャリッジがクッキリと際立ち回転する様子が、実に美しい。
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「ロイヤル オーク “ジャンボ” エクストラ シン オープンワーク」
上のモデルと同じく「ロイヤル オーク」が50周年を迎えた2022年、ステンレス・スチール(SS)ケースで登場した「ロイヤル オーク “ジャンボ” エクストラ シン オープンワーク」が、18Kホワイトゴールドを纏った。初代から使い続けた名機「Cal.2121」に代わる、薄型自動巻き「Cal.7121」をスケルトナイズ。有機的な曲線を呈するフレームは、SSモデルのロジウムメッキからグレーガルバニックに変更され、ケースとのコントラストを奏でている。さらに随所にセットされた人工ルビーの穴石が、一層印象的に映える。また分インデックスを置くインナーベゼルはムーブメントよりもダークな色調とし、高い視認性を得ている。ケース厚は、SSモデルと同じく8.1mm。「エクストラ シン」の伝統を、ホワイトゴールドケースのオープンワークでも受け継ぐ。
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「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」
昨年コレクション初のSSケースの登場が話題となったが、今年の新作はどれもピンクゴールドケースでラグジュアリーに装った。いずれもSSモデル登場時に創作された、無数のホールで構成した籠目模様がグラデーションを成す「シグネチャー」と名付けたダイヤルを継承する。カラーリングは、初代ロイヤル オークのダイヤルカラーを再現した「ナイトブルー、クラウド50」に加え、38mmにはライトブルー、41mmとクロノグラフにはグリーンをラインアップ。ここでは紹介は控えるが、クロノグラフにはさらに、八角形のミドルケースをブラックセラミック製としたブラックダイヤルも用意される。
オーデマ ピゲ ジャパン
TEL:03-6830-0000
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