映画『007』シリーズでジェームズ・ボンドが愛飲するシャンパーニュとして知られる、名門メゾン、ボランジェからプレミアム ヴィンテージ シャンパーニュ「ボランジェ ラ・グラン・ダネ 2015」が4月末にリリースされる。最高品質のブドウができた年にだけリリースされるのが、ボランジェの「グラン・ダネ」。2015年ヴィンテージの魅力はどこにあるのか。ひと足早くパリで体験してきた味わいから、その魅力を紐解いていきたい。
いまから9年前、2015年がどんな年だったのか、覚えている人はどれくらいいるだろうか。ラグビーのワールドカップイングランド大会1次リーグで五郎丸が活躍し、“五郎丸ポーズ”が流行ったのがこの年。アップルウォッチの日本発売開始、東京五輪のエンブレム問題、安全保障関連法案の成立、パリの同時多発テロ、アメリカとキューバの国交回復などがあったのも15年だった。
ちょうどその年の夏、ヨーロッパは大熱波に襲われていた。各所で気温が40度近くまで上がり、熱波の影響で大停電に。強い太陽の日差しを受け、シャンパーニュ地方のブドウは、どんどんと実が熟していった。
「穏やかで雨の多い冬から春へ移り、4月には2007年以来、最高の日照量を記録。そのまま暑く乾燥した夏に突入し、早くも9月4日に収穫を開始しました。ピノ・ノワールの小さな果実は熟していたものの高い酸もあり、非常に高品質でした」
ボランジェのマネージング・ディレクターであるシャルル=アルマン・ド・ベレネはそう話す。15年のピノ・ノワールはどの年よりも豊満でより力強いのが最大の特徴だ。あまりのパワフルさに、バランスを取るためにシャルドネのブレンド比率を40%(これまでで一番高い)使用しなくてはならなかったほどだという。
ピノ・ノワールは、おもにヴェルズネイやアイから、シャルドネはシュイイとアヴィーズなど、ワイン好きなら誰もが知る村で収穫したもの。グラン・クリュ(特級畑)が79%、プルミエ・クリュ(1級畑)が21%というから、贅沢の極みである。非常に特別で挑戦的なヴィンテージシャンパーニュ、それが「ボランジェ ラ・グラン・ダネ 2015 」なのだ。
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ミシュラン2つ星シェフがつくる完璧なマリアージュ
去る3月下旬、パリで「ボランジェ ラ・グラン・ダネ 2015」の発表会があった。この特別なキュヴェに合わせて料理の腕を振るうのは、アルザス地方コルマール近郊にあるミシュラン2つ星レストランのシェフを務める、オリヴィエ・ナスティ。07年にM.O.F(フランス国家最優秀職人章)も受章しているフランス料理界のスターシェフのひとりだ。
森をテーマに美しくしつらえられたテーブルにつくと、早速「ボランジェ ラ・グラン・ダネ 2015」がグラスに注がれる。キラキラと輝くゴールデンイエローに目が奪われ、期待が膨らむ。グラスに顔を近づけてみると、アップルやミラベルのニュアンスの中に、ハチミツの香りが感じられ、ブラックベリー、カシス、チェリー、ラズベリーや微かなアーモンドの香りが混ざり合っているのもわかる。
ひと口目のアタックは豊かで力強さを感じながらも、柑橘系のノートがしっかりと感じられ、繊細で上品。ミネラルの余韻が長く続きなんとも幸せな気持ちになる。
これに合わせるのは、鹿肉のタルタルとキャビアを重ね、その上に柑橘類の薄い氷が乗せられたひと皿。もちろんそのままでも絶品だが、「ボランジェ ラ・グラン・ダネ 2015」を口に入れるとその味わいの広がりに目を見張った。シャンパーニュと一緒に口に含むことで、料理のフルーティーさが突如として引き立ち、泡とともに華やかな香りが鼻から抜けていく。まるでまったく別の料理を食べているかのようだった。これがマリアージュのマジックだ。その次のひと皿、北極イワナの蜜蝋焼きも、とろけるような魚の身をクリーミーな泡が優雅に流していった。
一方、「ボランジェ ラ・グラン・ダネ ロゼ 2015」の外観は美しいサーモンピンクで、香りは、ストロベリーやマンダリン、ルバーブなどが感じられる。味わいは非常にシルキーでこのうえなく上品。鳥や豚を使った日本料理にも抜群に合いそうだ。
このロゼにシェフのオリヴィエが合わせたのは、やわらかい鹿肉のローストとスパッツレ。鹿肉は松の木、マッシュルーム、赤い果実、白チーズ、ヘーゼルナッツの5種類のソースとともに提供された。まさにフランスらしいマリアージュ。シルキーでありながら骨格のあるタンニンが、複雑味を持つジビエを包み込んでいく。ソースなしでも十分美味しいが、5種類のソースをつけて味を変化させながら食べるのも楽しい。
このロゼを構成するのはピノ・ノワール62%、シャルドネ38%で、ボランジェの希少な赤ワイン「ラ・コート・オ・ザンファン」が5%加えられている。こちらもグランクリュが81%、プルミエ・クリュが19%という、贅沢なシャンパーニュだ。
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自社で森を育て、樽をつくるボランジェが見据える未来
力強くて、かつ上品。しかも前菜からチーズ、デザートまでフルコースの食中酒として楽しめる「ボランジェ ラ・グラン・ダネ 2015」と「ボランジェ ラ・グラン・ダネ ロゼ 2015」だが、その味の複雑性をつくり出す要素のひとつが、樽発酵だ。樽を使うことによってワインに微量の酸素が供給され続け、結果として長期熟成に耐えるシャンパーニュになるという。最近ではステンレスタンクを使うメゾンもあるが、ボランジェのヴィンテージ・ワインは100%オーク樽で発酵しており、なんとその樽の木まで自社の森で育てているというのだから驚きだ。
大小さまざまな大きさの4000もの樽を所有しているが、その維持管理のために専門の樽職人と樽工房まで有する徹底ぶり。樽職人を抱えるメゾンは、2000軒以上のメゾンがひしめくシャンパーニュでもボランジェだけだ。
通常は機械で行うことも多いデゴルジュマン(澱抜き作業)も、職人の手作業だ。コルク栓でのボトル熟成にこだわっているため、機械ではコルクの留め金を外せないからだ。またアントレイヤージュ(ボトルを水平に積み重ねる作業)やルミアージュ(ボトルを逆さにして回し、沈殿物を口に移動させる作業)といった作業ももちろん手作業だ。
すべては、最上級のシャンパーニュをつくり、その伝統を次の世代に引き継ぐためーー。創業200年を5年後に控えた名門ボランジェの渾身の「ボランジェ ラ・グラン・ダネ 2015」「ボランジェ ラ・グラン・ダネ ロゼ 2015」をぜひ味わってほしい。
WINE TO STYLE
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