新しい時代のセンスのよいクルマ、「クラウン FCEV」という選択肢

  • 写真:郡 大二郎
  • 文:サトータケシ 
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『CROWN “next-life” SALOON』のイベント会場となったのは、虎ノ門ヒルズ ステーションタワー内の一角。通りがかった人々は、クラウンFCEVに興味津々だった。

これまでのモデルからがらりとデザインを変え、4つのスタイルを発表することで話題となったトヨタのクラウン。けれども変わったことは、姿形だけではない。クラウンは、これからの社会がどうあるべきかをメッセージとして発信しているのだ。今回は、3月22日(金)から3日にわたって開催された、クラウン FCEV を入口に水素がもつ可能性を考えるイベント『CROWN “next-life” SALOON vol.1 -SENSE of NEXT-』の模様をレポートする。

クルマをつくるだけでなく、コミュニティを立ち上げる 

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クルマ本来の楽しさと環境性能を両立するクラウン。クラウン(エステート) PHEV ※プロトタイプ(左)、とクラウン FCEV(右)、クラウン(スポーツ) PHEVの3台が会場に登場した。

2022年に生まれ変わった新しいクラウンは、多様化するライフスタイルや価値観に寄り添うために、クロスオーバー、スポーツ、セダン、エステートと、4つのスタイルを提案している。

興味深いのは、刷新してバリエーションを増やした点だけではない。クラウンの価値観を発信し、そこに共感する仲間を募る『CROWN “next-life” SALOON』というコミュニティづくりをしているのだ。今回は記念すべき第一回目のイベントとして『SENSE of NEXT』というテーマを掲げ開催。会場には、環境負荷を低減するクラウンのFCEV(燃料電池車)を中心に、PHEV(プラグインハイブリッド車)も展示。また、水素を身近に感じることができる体験やコンテンツが用意された。クラウンが提案するライフスタイルや持続可能な社会に向けた取り組みに触れることで、来場者が、いまの時代を生きる最良の選択肢について考えるきっかけとなる内容となっていた。

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クーペのようにも見える美しいリアビュー。“ニューフォーマルセダン”がコンセプトだ。

このイベントではクラウン FCEVに試乗することができた。その前にまずはFCEVの仕組みを理解しておきたい。

FC(フューエル・セル=燃料電池)は電池と訳されるのでバッテリーの一種だと思われがちだが、実際は発電機。その原理は、水に電気を通すと水素と酸素が発生した理科の実験の逆。タンクに蓄えた水素と外気中の酸素を反応させることで、電気と水が生まれるのだ。あとは、EVと同じくバッテリーに蓄えた電気でモーターを駆動する仕組み。したがってクラウンFCEV は走行中にCO₂が発生しない。まさにゼロエミッションをかなえるクルマである。

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水平基調のクリーンなインテリア。エクステリアの世界観がインテリアにもつながっていることがわかる。
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ホイールベース(前後の車輪の間隔)が3000mmと長いため、後席スペースには余裕がある。ショーファーカーとしての使い勝手も文句なし。

クラウン FCEVに乗り込みまず感じたのは、インテリアの上質さだ。派手に飾り立てるのではなく、ステッチの美しさや素材の質感にこだわり、繊細につくり込んでいることが伝わってくる。システムを起動すると、インストルメントパネルに明かりが灯った。直感で操作できるインターフェイスで、初めて乗る運転手でも安心だ。

運転の作法は、慣れ親しんだエンジン車と同じ。ただし、静粛性が抜群で振動もなく、スーッと走り出すあたりは、新鮮なフィーリング。しかもモーターは、電流が流れた瞬間に最大の力を発揮するから、アクセル操作に対するレスポンスはまさに電光石火。環境に配慮したクルマというと我慢を強いられると思いがちだけれど、クラウン FCEVには新しい“ファン・トゥ・ドライブ”があった。

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都心部を走るクラウン FCEV。しなやかな足まわりとスムーズで静かなFCEVの組み合わせにより、唯一無二のプレミアムサルーンのパフォーマンスが実現した。
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水素ステーションで水素を充填。この日は社有車と思われるトヨタ MIRAIがひっきりなしに訪れていて、FCEVが身近な存在だと改めて感じることができた。

今回の試乗では水素の充填も体験。なにより驚いたのは、いたってスムーズに完了したこと。スタッフの誘導に従い停車すると、ものの数分でクレジットカードによる決済まで終わった。聞けば、このクルマは3分程度で約820km走れるだけの水素を充填できるとのこと。短時間で充填できることと長い航続距離は、FCEVの大きな魅力だ。

水素を充填後、都心部を走りながら感じたのは、運転のしやすさと乗り心地のよさ。全長5mを超える大型サルーンでありながら、視界がよくてハンドルがよく切れることから取り回しがいい。そして、路面の凹凸から伝わるはずのショックも上手に遮断されている。このあたりは、クラウンの伝統がしっかりと継承されていると感じた。

サステイナブルと豊かな暮らしは両立する

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会場にはクルマのほか、水素を身近に感じることができる展示が行われた。
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水素グリル。左の白い筒が水素カートリッジになっている。燃焼する際に水蒸気が発生するカーボンニュートラル調理器だ。

試乗を終えて展示場へ。会場では、水素に関連する興味深いコンテンツがたくさんあった。ひとつは水素を燃焼させる水素グリル。CO₂が発生しないことはもちろん、炎の温度が天然ガスより高いこと、燃焼する際に水蒸気が発生するため料理に向いているそうだ。水素を手軽に持ち運ぶことができるカートリッジには、トヨタがFCEVの開発で培った技術が応用されているという。

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UCC上島珈琲の水素焙煎コーヒー。この日の豆はコロンビア産のスプレモ。温度の調整幅が広い水素の特性を活かすことで、豆本来のフルーティな香りを引き出せるのだとか。

他にも、UCC上島珈琲の水素焙煎コーヒーが振る舞われた。「2040年までにカーボンニュートラルの実現」という目標を掲げる同社では、焙煎時にCO₂が発生しない、水素を熱源とした焙煎にも取り組んでいる。面白いのは、水素焙煎は高温から低温までの調整幅が広いため、豆本来の味を引き出すのに向いているということだった。

水素グリルと水素焙煎とクラウン FCEV──。共通するのは、CO₂の排出を減らすことで環境負荷を低減するだけでなく、新しい楽しさを創出するということだった。

最後に参加者に感想をうかがうと、「水素社会の未来の可能性を感じました」や、「FCEVが現実的な選択肢になっていることに驚きました」など、ポジティブなものが多かった。水素社会は合理的なだけでなく、ワクワク感がある。まさに次世代において“センスのいい選択肢”を感じるイベントであった。

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移動式店舗キオスク「super normal market」ではマルシェを開催。社会起業家・環境活動家がプロデュースした商品や、廃タイヤを原料にしたサンダルなど、環境に配慮したアイテムが並んだ。

トヨタ・クラウン FCEV

全長×全幅×全高:5030×1890×1475㎜
モーター:交流同期電動機(永久磁石式同期型モーター)
最高出力:182ps/6940rpm
最大トルク:300N・m/0〜3267rpm
駆動方式:後輪駆動
車両価格:¥8,300,000
問い合わせ先/トヨタ自動車株式会社 お客様相談センター
TEL:0800-700-7700
https://toyota.jp/