「大人の名品図鑑」紙幣の偉人編 #3
今年の7月30日から3種類の新紙幣が発行される。紙幣のデザインが変わるのは2004年以来、20年ぶりのことだ。一万円札に渋沢栄一、五千円札に津田梅子、千円札に北里柴三郎が描かれる。今回は、新紙幣に加え、これまで発行された紙幣の肖像になった偉人たちにまつわる名品を集めてみた。
今年改刷される新千円札の肖像に選ばれたのが、細菌学者で「近代日本医学の父」と称される北里柴三郎だ。現在使われている千円札に描かれた野口英世に続いて、同じく医学系の偉人が選ばれたことになる。
北里はペリー来航の約半年前の1853年(嘉永5年)に肥後国阿蘇郡小国郷北里村(現・熊本県阿蘇郡小国町)で代々庄屋をつとめ、名字帯刀が許された家の長男として生まれる。「医者と坊主にはなりたくない」と口にしていた北里だったが、長崎から熊本に赴任してきたオランダ人医師マンスフェルトからヨーロッパで大勢の人が亡くなったペスト(黒死病)のことを聞き、医学の道を志す。1874年(明治7年)に東京医学校(現・東京大学医学部)に入学、1886年(明治19年)にドイツのベルリン大学に留学し、炭疽菌や結核菌を発見したロベルト・コッホに師事する。
1889年(明治22年)には世界で初めて破傷風菌の純粋培養に成功し、翌年には血清によって破傷風菌は予防できることを発表し、世界的にその名が知られるようになる。1892年(明治25年)、ドイツから帰国した後、日本で伝染病研究所を創立し、伝染病予防と細菌学の研究に取り組む。その後は慶應大学医学科を創設し、初代医学科長に就任、さらに日本医師会などの医学団体などの設立にも協力、日本における医学や医学教育に大きな足跡を残した人物だ。
国立印刷局のサイトには新千円札の北里の肖像画について「風格や品位があり、学者としての地位が確立し、働き盛りで充実した様子が伺えるため、50歳代の写真を参考にして描かれました」と書かれている。発行を予定している新千円札の見本の肖像をみると、黒いフロックコートを着て、白のウイングカラーシャツにネクタイを結んだ北里のスタイルは威風堂々そのもの。しかし彼の印象を決定づけるのはやはりクラシックな眼鏡ではないだろうか。見事な口髭とマッチして、周囲から“雷おやじ(ドイツ語でドンネル)”と畏敬された彼の風貌をつくり上げているように見える。
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北里の眼鏡を想起させる、金子眼鏡のクラシカルなモデル
新紙幣の肖像画ではやや楕円になった眼鏡をかけた北里が描かれているが、多くの肖像写真で彼が愛用していたのが「ラウンド型」と呼ばれるクラシックな眼鏡だ。この「ラウンド型」は眼鏡のフレームの中でも長い歴史を持つデザインで、真円に限りなく近い形が特徴。アメリカの喜劇役者ハロルド・ロイドがよくかけていたことから「ロイド眼鏡」とも呼ばれる。関西の某眼鏡店のサイトでは、この眼鏡をかけた著名人として北里の名前も挙げている。やはり北里=ラウンド型眼鏡といった印象が多くの人の記憶にあるのだろう。
今回紹介するラウンド型の眼鏡は日本、いや世界の眼鏡の聖地、福井県鯖江市で1958年に創業した金子眼鏡の「金子眼鏡ヴィンテージシリーズ(KV)」のラウンド型だ。このシリーズはクラシカルなディテールと、現代のファッション性を兼ね備えた新しいヴィンテージの在り方を提案するコレクションで、時代という枠を大きく超えて、この先も色褪せずに揺るぎない魅力に満ちたアイウェアが揃っている。
「KV-82」というモデルは職人技が香るクラシカルなデザインはそのままに、アセテート生地を挟み込んだ秀逸なデザイン。肌馴染みの良いアセテート生地の色合いも洒落ている。古い眼鏡フレームの多くは鼻パッドのない「一山(いちやま)」だったが、このモデルも同じ仕様で、しかも内側にはシリコン樹脂が重ねられていてかけ心地は優しく、軽い。まさにヴィンテージなデザインと現代的な機能が融合したモデル。研究に邁進し常に医学の進歩を目指していた北里の姿勢に通じるデザインではないだろうか。
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金子眼鏡 麻布台ヒルズ店
TEL:03-6441-2205
www.kaneko-optical.co.jp
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