前編(バンクシー編)に続きお届けする、
「MUCA展 ICONS of Urban Art~バンクシーからカウズまで~」
の後編は、バンクシー以外の5名の作品からのピックアップ。
オープン前日の2024年3月14日(木)に開催されたメディア向け内覧会で鑑賞したもの。
ストリート・アートをルーツに持つ現代作家10名の作品群はどれも魅力的でしたが、そのなかから特に「実物を見てよかった」と感じた作品です。
前回でも少し触れましたが、「作品が持つ物質感」を存分に味わえました。
メディアに流通する写真では伝わりにくい、作家の手の温もりを実感できたのは会場に行ったからこそ。
KAWS/カウズ
実は会場に行くまでカウズの魅力をずっと理解できていなかった者です。
アイコンキャラを利用したコラボ商品ばかりが目につき、素直によさを感じる機会がなくて。
2021年に東京・森アーツセンターギャラリーで行われた大規模な単独展にも足を運ばず。
今回この『MUCA展』で期待したことのひとつが、カウズを美術としてちゃんと見ること。
わたしの偏見を打ち壊してほしかったのです。
その結果、確かに心地いい刺激を受けました。
(ちょっと嬉しい)
ただ悲しいことにわたしの感性が鈍いのか、某歴史的キャラクターがルーツと思われる目がバッテンのアイコンキャラ「コンパニオン」自体の魅力はわからずじまいです。
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コンパニオンの手のバツ印も、不思議な耳を持つ骸骨のような顔も別のモチーフから引用した説があるようです。
要は、元ネタがあると。
モノの見方を変えるパロディ手法の作家でしょうから、オリジナルでない寄せ集めなのがむしろ必然なのかもしれません。
作品に繰り返しコンパニオンを登場させ知名度を上げたことで成立させたのが、上写真のモノクロキャンバスアート。
コンパニオンの部分アップを描いたグラフィック。
図案として素直にカッコいい印象でした。
モチーフのコンパニオンを知らない子どもが見たら、この抽象性をどう感じるか気になります。
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カウズのコーナーでいちばん心惹かれた、街なかのファッション広告に落書きしたストリートアート。
カウズを一躍有名にしたとされる作品群です。
わたしはファッション分野が仕事の主舞台ですから、より親しみを感じました。
これらの落書きがファッション写真を決して見下している印象はないんですよ。
むしろ「これ好きだけど自分ならこうしたいなあ」というおふざけで描き足したように思います。
フランスの雑誌「JaLOUSe(ジャルース)」もこんなことに w
とはいえ元のモデルの表情がイッちゃってますから、カウズが描き足したところで写真の凄みは損なわれていないはず。
ずっと見ていたくなる傑作ですね。
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VHILS/ヴィルズ
遠目では、または単なる記録撮影では込められた思いが伝わりにくい作品。
間近で見たことで感じた物質感と作家の手の温もりが心に響きました。
ヴィルズは都市の壁や廃墟を削り肖像画をつくったり、廃材を活用する都市の移り変わりを見つめる作風のようです。
この扉はスタジオで制作されたもの。
以下の動画の1分51秒に制作の様子が。
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JR/ジェイアール
イスラエルでパレスチナ問題の和解を図る写真を街に飾ったり、ブラジルの貧民街に足を運ぶ社会活動家のJR。
バンクシーと同様にストリート・アートが持つ力を最大限に活用している人なのでしょう。
会場は彼の活動自体に焦点を当てた展示で、本質を伝えようとする真摯な姿勢に思えました。
そのなかでも上写真の作品が街の息遣いまで感じられて強く印象に残っています。
「いつか亡くなる高齢者が若者に伝えるべきことに気づくことが大切」だと。
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INVADER/インベーダー
これも立体の物質感がとてもよかった作品。
「ルービックキューブでこんなことできるんだ!」と。
芸術性への関心より、面白さの感情のほうが先に来ましたね。
ファミコンゲーム時代のようなピクセル絵を街に描いてきた作家の名はインベーダー。
ビデオゲーム黎明期の代表ゲームそのままの名前。
作風は徹底してピクセルモザイクです。
若くして亡くなったパンクロックのアイコンミュージシャンを題材に選んだことに意味があるのか?ルービックキューブを使ったことに必然があるのか?
わたしにはぜんぜんわからなかったですが w、とても魅力的な作品なことは間違いなし。
ルービックキューブは簡単にパーツをバラバラに分解して組み立て直せますから、制作はそこそこの時間で済んだと推察されます。
色も光も、各3原色の組み合わせでどんな色もつくれますから、冷静に考えればルービックキューブでなんでも描けるのでしょう。
とはいえわたしなんぞには思いつきもしない手法を披露してくれたインベーダーです。
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OS GEMEOS/オスジェメオス
絵画的美しさでいえば、「MUCA展」でこれがベストだと思うのですが、皆さんはいかがでしょう?
ブラジルの双子ユニットで、1980年代ヒップホップシーンがストリートで活動し出した原点のようです。
絵本のような世界の魅力を言語化する頭脳をわたしが持ち合わせておらず、作品で伝えたい意図がなにかもわからずじまい。
右脳が揺すられつつ左脳が静寂なバランスの悪さが落ち着かず、作品横の解説文を読んでみましたが、「彼らのアイコニックな作品」くらいしか説明されておらず w
魅力的、ってだけで良しとします。
円形をモチーフだけでなく配置にも取り入れ、四角い画面の中心に据える安定感のある構図。
グリーン色の額縁も素晴らしいですね。
額なしだと印象がかなり変わりそうです。
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前編(バンクシー編)と併せてお届けした「MUCA展」レポはこれで終了。
街で人の目を惹かせるストリート・アートは、いかにキャッチーなキャラクター性やアイコン性を獲得できるかが勝負なのだと実感しました。
ストリートで成功するとはそういうことなのでしょう。
何を伝えたいかの立ち位置はその人しだい。
社会問題に向き合うがゆえに屋外に出る人もいれば、街遊びの延長線上に思える人もいたり。
街から切り離して美術として展示し、各々の作家を並列して知ることができるこの展覧会の会期は2024年6月21日(金)まで。
All photos&text©KAZUSHI
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【画像】大満足の『MUCA展』、カウズ、バンクシー、インベーダーらが“美術”してる展覧会【後編】
KAWS/カウズ
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VHILS/ヴィルズ
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JR/ジェイアール
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INVADER/インベーダー
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OS GEMEOS/オスジェメオス
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ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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