2024年は、オリンピックイヤー。東京に次ぐ今回の開催地がフランスのパリであることはよく知られているが、パリ五輪のマスコットについてはまだ知名度が低いのではないだろうか。
パリ五輪のマスコットは、赤い三角形のような形の「フリージュ」というキャラクター。一見すると鳥のようにも見えるが、じつは「帽子」らしい。デザインものの常として世間からは賛否両論が上がっているが、じつはしっかりフランスの精神に根ざした由来もあるようだ。
SNSで上がった「何これ?」の声
フリュージュの発表直後、国際オリンピック委員会が公式TikTokにポストした動画には4000件以上のコメントが集まった。だがその多くは「これって何?」という困惑の声で、中には赤い色から「血みたい」「血栓?」「女性器を思わせる」などの批判もあった。
ロンドンにある「Vagina Museum(膣博物館)」がフリュージュをパロディ化した画像をXにポストするなど、当初の受け止め方は微妙なものであった。
時間とともに「可愛い」の声も⁉️
だがその後のSNSでの声を見ると、意外と好意的な反応も見られている。2023年11月、フリージュの発表からちょうど1年後にパリ五輪の公式Xで「誕生日」を祝うポストをすると、多くのファンによる好意的なリポストが見られた。
その後、クリスマス前に公式グッズをポストしたTikTokには、「可愛い」「欲しい」といったコメントも集まっている。最初の拒否反応が落ち着き、「わかりにくさ」がむしろ「独自性」となって評価されつつあるのかもしれない。
フリージュはただの帽子にあらず
このフリージュ、単にユニークさをねらっているわけではなく、背景にはきちんとした意味があるようだ。パリ五輪委員会の発表によれば、フリージュ(フリジア帽)とは自由の象徴であり、今までも切手や硬貨などさまざまなデザインのモチーフとして使われている。パリ五輪の公式Xには、フランスの画家ドラクロワによる『民衆を導く自由の女神』がかぶる帽子がマスコットのフリージュに変化していく動画がポストされた。
また、2体いるフリージュをよく見ると、片方は義足を付けている。これは、障がいのある人やアスリートのプレゼンスを高めるためだという。フランスや民主主義の歴史を踏まえつつ、現代や未来に向けた前向きなメッセージを持ったデザインなのだ。
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意外とある、変わり種マスコットたち
スポーツ系マスコットには、時々フリージュのような変わり種が登場する。2022年のFIFAワールドカップ・カタール大会では、アラブ風頭巾をモチーフとする「ライーブ」がマスコットを務めた。ひらひらした布なので「幽霊みたい」「サッカーのマスコットなのに足がない」などとも言われたが、「可愛い」という声も多く、大会が終わった後もキャラクターとしての復活を望む声があるほどだ。
「モノ」ではなく「感情」がマスコット化した例もある。イギリス・スコットランドのサッカーチーム、パーティック・シッスルFCのマスコット「Kingsley」は「サッカーファンであることの不安を表したもの」とされている。2015年に発表されたときにはかなり不評だったが、10年近く経つ現在でもマスコット業を継続しているということは、時間をかけてそれなりに受け入れられたのだろうか。
今後パリ五輪の盛り上がりとともに、フリージュを目にする機会も増えていくことだろう。オリンピックの主役はあくまで選手たちだが、フリージュの活躍にも少し期待したい。
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