「大人の名品図鑑」クリント・イーストウッド編 #3
ハリウッド、いや世界を代表する俳優であり、映画監督として知られるクリント・イーストウッド。今年で93歳になるが、いまだに現役で精力的に活動を続けている映画界の“生きるレジェンド”だ。今回はそんなイーストウッドが出演した数々の映画に登場する名品について考える。
イーストウッドが主演、あるいは監督した数多くの映画の中でも異色と言えるのが、1990年に公開された『ホワイトハンター ブラックハート』ではないだろうか。ある映画評論家はこの作品をイーストウッドの“作品性”が色濃く出た映画と評しているが、この時期、イーストウッドは天才ジャズサックス奏者のチャーリー・パーカーの音楽と生涯を描いた『バード』(88年)を監督するなど、従来のアクション映画監督・俳優という路線とは違った道を模索していたようにも思える。イーストウッドはこの作品で監督も兼任しているが、彼が演じた主人公も映画監督。しかも名作となった映画の舞台裏を描くという意欲的な作品だ。
原作はジョン・ヒューストンが監督し、ハンフリー・ボガートとキャサリン・ヘップバーンが共演した名作『アフリカの女王』(51年)のアフリカロケに同行した、映画脚本家ピーター・ヴィアテルがその体験を元に書いた小説だ。加えてこの作品ではヴィアテル本人が脚本まで書いており、彼がモデルと思われるピート・ヴェリル(ジェフ・フェイヒー)という役で登場する。
一方、イーストウッドが演じたのはジョン・ヒューストンがモデルになったジョン・ウィルソンという人物だ。傲慢で破天荒な映画監督で、映画の中でも「借金が25万ドルもある」と笑い飛ばしながら話すシーンがあるが、ジョン・ヒューストン自身も豪放磊落でワイルドな男と知られ、5度も結婚と離婚を繰り返し、カジノに毎日通って一文無しになったこともあるという。この作品ではそんな彼が『アフリカの女王』の撮影のためにアフリカに行ったものの、映画づくりそっちのけで象の狩猟に没頭してしまうという物語。ちなみにそんな裏話があったにもかかわらず、『アフリカの女王』は大ヒットを記録し、第24回アカデミー賞でジョン・ヒューストンは監督賞にノミネート、主演のボガートは主演男優賞を獲得している。
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お洒落なイーストウッドが堪能できる
実はこの映画には、ファッション好きには堪らない要素が詰まっている。舞台は『アフリカの女王』の撮影に取り掛かった50年代初頭で、冒頭に組み込まれたのが、英国の広大な邸宅のシーン。映画監督ジョンを演じるイーストウッドは、真っ赤な乗馬服に生成りのジョッパーズに乗馬ブーツという華麗なスタイルで登場する。アスコットシャツに黄色のベストまで合わせ、まるで英国貴族のようなスタイル。こんなお洒落なイーストウッドはなかなか見られない。他方、ロケに出掛けたアフリカでは狩猟でイーストウッドが見せるのが、完璧なまでのサファリスタイルだ。上下カーキのセットアップに身を固め、銃弾を収納するカートリッジバッグを斜めに掛けて猟銃を持つイーストウッドの姿に凛々しささえ感じる。
作中の彼のスタイルを彷彿とさせるサファリジャケットがある。日本のパパスというブランドが今シーズン、アメリカのウィリス&ガイガーと組んで製作したジャケットだ。ウィリス&ガイガーはノーベル賞作家のアーネスト・ヘミングウェイが愛用したことで知られる1902年創業の老舗。さらにヘミングウェイはパパスというブランド名の由来であり、ヘミングウェイが着て似合う服を創造してパパスのコレクションは毎回デザインされている。
今回のサファリジャケットは、素材づくりから縫製まで徹底してこだわるパパスらしい一着。緯糸にあえて麻100%の糸を織り込み、綿55%、麻45%の高密度でハリとコシがあるポプリン素材に仕上げている。加えて縫製も日本で行い、ステッチ巾を12〜13針/3cmに統一、カジュアル感が強すぎない、大人仕様のサファリジャケットに仕上げている。パパスのこだわりとウィリス&ガイガーのテイストが見事に融合された意欲作で、それは今回紹介する作品にも通じるだろう。
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パパス
TEL:03-5469-7860
https://papas.jpn.com/
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