
独自の世界観とアバンギャルドなデザインアプローチでクリエイションを発表し続けるファッションデザイナーの小西翔。ニューヨークを拠点にする彼の活躍は歌姫ビヨンセまで届き、英VOGUEで彼がデザインしたコスチュームを着用。世界的に注目されている存在だ。自身のファッションブランド「Sho Konishi」ではコンセプチュアルなテーマを掲げコレクションを発表している。
前衛的なデザインを得意とする小西の活動の場は広い。「Sho Konishi」のコレクション制作やアーティストの衣装デザインのほか、堂本光一主演の帝国劇場ミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』(2023年)の衣裳も担当。地元、高知県の日本酒「KUENTAN酒」のプロデュースを手掛けたり、後進の育成にも力を注ぎ、未来のファッションデザイナーのための教育プログラムも立ち上げた。攻めのクリエイションとは裏腹に、柔軟にフィールドを変える彼の素顔とは。ニューヨークで話を聞いた。
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アヴァンギャルドな需要を求めてニューヨークへ
ーーニューヨークに渡ったきっかけを教えてください。
2015年にニューヨークに行きアート予備校で1年学び、その後パリの大学院に大学からの奨学金で通いました。卒業後、ユニクロの奨学金にてパーソンズの大学院で2年通い卒業しました。ずっとアヴァンギャルドな服をつくりたいと思っていて、日本にいた時は「こんな服、誰が着るんだ?」と言われたり、デザイナーの先輩方からは「学生だからこんな服がつくれるんだよ」と揶揄されたり。「レディ・トゥ・ウエアとはこういうものだ!」と強要されても、トキメキが全然なかったんです。それならニューヨークで僕の服を着てくれるクライアントを探そうと思ったのです。


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コロナ禍でも停滞することなく、大きなチャンスを掴む
ーービヨンセが小西さんがデザインした衣装を着ることになった経緯は。
アメリカで活動を始めるにあたり、まずはクライアントを探しました。Netflixの『ル・ポールのドラァグ・レース』という番組に出ているドラァグ・クイーンたちにDMをしたら、数名から「欲しい!」と返事をもらい、結果としてその番組の中でも人気のドラァグ・クイーンが着てくれたことで、多くのドラァグ・クイーンから連絡をいただきました。その頃はマーク・ジェイコブスがドラァグ・クイーンに衣装を提供していたり、彼らのファッションがハイエンドになりつつある時期でした。
アンドロイドコレクションを制作したのはコロナになってからで、そのきっかけがこれです。自宅待機の期間にビヨンセのPVを見ていて、やっぱりかっこいいなと思って。一緒に仕事ができたらいいなと思っていたところ、ビヨンセのスタイリスト、ゼリナ・エイカーズのチームからDMがあったのです。ティエリー・ミュグレーのようなロボティックルックをつくってほしいと依頼され、すぐに取り掛かりました。そこからゼリナのクライアントの服をいくつかつくり、最終的にビヨンセが着てくれることになったのです。コロナ禍で皆が思うようなクリエイションができない中、ビヨンセの近未来的なMVは話題になり、僕に対しても注目が集まりました。人生の中でも大きな波が訪れた瞬間でした。
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学びのシェアすることが、サステナビリティにつながる
ーー近未来的なコレクションを発表する一方、サステナビリティにも力を入れているそうですね。
パーソンズの大学院在籍中はサステナビリティを勉強していました。僕は森の面積が88%を占める高知県の出身でルーツはそこだと思うのですが、ファッション業界は第2位の環境汚染産業と言われているのです。「ファッションが自然を傷つけていいのか?」と考え、パーソンズではプラスティックと自然のものを用いて「Garden of Eden」というコレクションを発表しました。
マテリアルのほとんどが何かの死骸からできている。プラステックのもとになる石油も元々、恐竜時代の生物の死骸が蓄積されてできた化石燃料です。プラスチックを排除するだけのヘイト活動ではなく、受け入れ方を考えることも必要だと考え、論文にしました。


ーー自身のクリエイション活動を行いながら、後進の教育にも力を入れています。
パーソンズの大学院に通いながら「Sho Konishi Design Lab」というオンライン教育プログラムを立ち上げました。いままでずっと奨学金にお世話になって海外で学んできたので、ファッションデザイナーとしてクリエイションに昇華するだけでなく、学びのシェアをすることが恩返しになると思ったのです。世界中のデザイナーを招いた講演や、単位が取れるようにインターンなども実施しました。オンラインでスタートしましたが、いまはオンラインから飛び出して企業と提携し、小さいアワードを開催しています。選抜されたデザイナーがニューヨークやパリで学べる制度をつくりましたので、フィジカルでも外に動き出しています。
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柔軟な思考と好奇心が、新たな道を切り拓く
ーー幅広くプロジェクトを手掛けられていますが、小西さんのクリエイションの信念とは。
自分が楽しいと思えることを優先しています。胸を張れるような仕事がしたいし、やっていて楽しいと思えるマインドづくりをしています。ファッションとは人間の生き方を示すものだということに気づき、自分は服をデザインするだけにとどまらなくてよい、と考えています。
ーー今後の目標を教えてください。
以前病気をしたことで、健康であることが最もファッショナブルでかっこいいと考え、今後のテーマにもなっています。今年はアクティブウエアにも挑戦していきたい。体が資本であり、健康でないと何も始まらない。自分を大切に、メンタルにもしっかりと向き合っていきたいです。