ファブカフェグローバル(FabCafe Global)とロフトワークが主催している「サーキュラーアワード(crQlr Awards)」が今年も開催された。サーキュラーアワードは、循環型社会を目指すプロジェクトを集め、後押しするためのグローバルなアワード。今年は過去最多の参加国数を更新し、43カ国から140のプロジェクトが集まり28点のプロジェクトが受賞した。第3回目となる今回は、特別賞として「新しい関係性のデザイン」が設置され、「100年後の地域社会への価値還元」「生物多様性へのポジティブな影響」「新しいパートナーシップのデザイン」の3つの観点から選考された。
今回選ばれた作品で特に注目したいのが、イギリス在住のアーティスト、エレオノーラ・オルトラーニによるプロジェクト『ギルティフレイバー』。プラスチックからアイスクリームをつくり、それを人間が食べることでプラスチックを消費しようというものだ。にわかには信じがたい事実だが、そんなことが可能なのだろうか。
大人の事情で、まだ食べられないけれど…分子構造はバニラアイスと同じ
『ギルティフレーバー』は、プラスチックをバクテリアが分解することでバニリンという有機化合物を生み出し、そのバニリンをバニラアイスクリームにして食すというもの。人間の身体を機械のように捉え、プラスチックを食べることで永遠にプラスチックをなくすことができるという提案である。
この作品は彼女の卒業制作で発表された。彼女は気候変動と世界人口の増加による食料資源に注目しており、人類が自分たちを維持するために、天然資源以外にも目を向けなければならないと語っている。
彼女はアーティストだが、ビニール袋を消化できる幼虫「ワックスワーム」や日本で発見されたプラスチックを分解することができるバクテリア「イデオネラ・サカイエンシス」の存在を知り、研究者へコンタクトをした。最終的に、エディンバラ大学研究科学者のジョアンナ・サドラー、ロンドン・メトロポリタン大学の食品科学者ハミッド・ゴドゥシ博士、グロー・ラボCSMサイエンスのスペシャリストであるポーラ・コルシーニの協力を得て、『ギルティフレーバー』を生み出すことに成功した。
このプラスチックから生まれたバニリン自体は、天然もしくは合成のバニラアイスにも含まれている成分で、分子レベルで見れば同じもの。しかしプラスチックからできているため、安全性の観点からまだ食す事はできない。彼女の真の目的は、一般的な思考パターンを壊し、人々の考え方を変化させることにあるのだ。
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渋谷のファブカフェでは、この『ギルティフレイバー』のほかに、日本で減少している海藻を採取して研究し陸上栽培と海面栽培によって蘇らせ、海藻の新しい食べ方の提案を行う『シーベジタブルサーキュレーション』と、台湾でゴミになってしまう木材を家具や「バイオ炭」へと生まれ変わらせる『リウッド』なども展示されている。
展示は3月24日まで。循環型経済(サーキュラーエコノミー)が注目されるいまこそ、チェックしておきたい作品たちだ。
crQlr Awards Exhibition TOKYO: New Relationship Design
開催期間:開催中〜3月24日
開催場所:FabCafe Tokyo
https://fabcafe.com/jp/events/tokyo/crqlr-exhibition-2024-tokyo