3月8日は国際女性デーです。女性の地位向上や社会進出を目的として、1975年に国連により提唱された日です。ビジネスやスポーツ、家庭など様々なシーンで活躍する女性。最近では、日本航空(JAL)の新社⻑に女性が就任することも大きなニュースになっていました。一方で、世界経済フォーラム(WEF)が発表した2023年の「ジェンダーギャップ指数」を見ると、日本は146か国中125位という結果も出ています。
女性を取り巻く環境も日々変化している中で、普段目にする企業やブランドのメディアや広告で女性はどのように描かれているのでしょうか。この前編では、ゲッティイメージズでダウンロードされている人気のビジュアルについて、2024年と2019年を比較し、世代別に女性を描いた人気のビジュアルにどういう変化があるのか、社会的な背景を踏まえながら分析します。
まず、世代別に見た人気の女性ビジュアルにはどのような傾向と変化があるのか見ていきましょう。
●Z世代(13歳〜27歳頃)
女性を描いた人気ビジュアルのうち、2019年では52%、2024年には54%と世代別に見ると最も人気があるのがこの世代です。これは、広告において若い世代を描くことの重要性が認識されつつあることを示唆している可能性があり、社会の様々な分野において若い世代の影響力が拡大していることが反映されているのでしょう。
主に企業のビジネスシーンにおいてこの世代が人気で、2019年は、チームメンバーやアシスタントとして表現されていたビジュアルが人気でしたが、2024年には、個人として自立し、会議をリードするような姿に人気が集まっています。ブランドは、Z世代女性のキャリアパスや役割をより幅広く紹介し、ビジネスシーンだけでなく、さまざまな分野においてリーダーシップを発揮する姿を捉えていきましょう。
2019 年に人気のビジュアル
2024 年に人気のビジュアル
●ミレニアル世代(28〜42歳頃)
女性を描いた人気ビジュアルのうち、2019年では13%、2024年には35%と大幅に人気が高まっているのがこの世代です。この傾向は、様々な分野や役割における、この世代の女性の存在感の高まりを反映しているようです。
Z世代と同様、企業のビジネスシーンで描かれたビジュアルの人気が高く、時間の経過とともに、チームでの役割から、より独立したリーダーシップのポジションへと移行しています。ブランドは様々な部門でリーダーシップを発揮するミレニアル世代の女性にスポットライトを当て、イノベーションや社会変革に貢献している姿を強調することができるでしょう。また、ワークライフバランスやキャリアアップなど、ミレニアル世代の女性が直面する特有の課題に取り組むナラティブを含めることで、より信憑性の高いビジュアル描写をすることができます。
2019年に人気のビジュアル
2024年に人気のビジュアル
●X世代(43〜58歳頃)
この5年間で、X世代の女性を用いたビジュアルが著しく増加していることがわかりました。この変化は、メディアや映像コンテンツにおいてX世代を表現することの重要性が認識されつつあることを示唆しています。
2019年、X世代の女性は、女性がメインの環境の中で、リーダーとして描かれることが多かった一方で、2024年までには、男性やシニア世代も含む多様な仲間を率いる姿が描かれるようになっています。ブランドはX世代の女性の多面的なライフスタイルを紹介し、年齢を重ねたこの世代の女性ならではの経験や知性、プロフェッショナルな部分を強調することが大切です。
2019年に人気のビジュアル
2024年に人気のビジュアル
●ブーマー世代(59歳以上)
2019年、女性の人気ビジュアルのうち、ブーマー世代の女性を描写したものは全体の7%にとどまり、この数字は2024年まで変わりませんでした。2019年では、家族や医療の場面で描かれたビジュアルの人気が高く、単独で行動する様子や仕事のシーンで描かれているビジュアルはほとんど選ばれていませんでした。一方2024年には、仕事やライフスタイルの場面で、充実した人生を送る個人として描かれものがより好まれる傾向にあります。社会への貢献、キャリアの達成、アクティブなライフスタイルを強調することで、ステレオタイプに挑戦し、この世代の女性ならではの豊富な経験と多様性を表現しましょう。
2019年に人気のビジュアル
2024年に人気のビジュアル
このように、5年前と比較すると、あらゆる世代にわたって、女性の自立性やリーダーシップ、人生のさまざまなシーンにおける多才さを強調し、さまざまな社会の動きを反映しながら、より多様で力強い女性のビジュアル表現の方向へ向かっていると言えます。
では実際、このように変化してきた女性のビジュアルは、企業やブランドの消費者にとって共感を得られるものになっているのでしょうか。
後編では、ゲッティイメージズのビジュアル調査「VisualGPS」の調査結果をもとに、「求められるビジュアル」を分析していきます。
【後編に続く】
Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー
ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。
ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。