5年ほど前、新幹線の車内誌をパラパラめくっていて初めて目にした、古い湯治の温泉。千人が一度に入れるという大きな浴槽、そしていまの時代になんと混浴。
インパクトの強いワードが詰め込まれたその温泉、「酸ヶ湯」があるのは、青森県八甲田山でした。
八甲田山と言えばその昔、旧日本陸軍が雪中行軍で210名のうち199名も命を落とした事件があったほど雪深く、日本で一番雪が積もると言われている場所。なので、いつか行ってみたいと思いつつ、「そのいつかは来ることがないかもしれない」と思っていました。簡単には行けない場所ですから。
酸ヶ湯の存在を知った瞬間から行くことをほぼ諦めていたのに、5年後に豪雪の中、その湯に浸かる日がやってきたのです。
青森に行く機会はこれまで全然なかったのですが、2年前の夏からサウナをテーマにしたビールを青森県弘前市にあるBe Easy Brewingと一緒につくっています。
こちらの代表、ギャレスさんとはビールづくりをキッカケに家族ぐるみのお付き合いになりました。いつも行くのは夏なので、今回は初の「冬のサウナビール」づくりにあわせて酸ヶ湯に行きたいとリクエストをして、ついにこの2月に行ってきました。
冬に行きたかった理由は、やはり混浴にビビっていたから。寒い青森の冬なら温泉の湯気で何も見えないだろう、と見込んだのです。
一人で運転しては絶対に行けない雪道を、青森在住18年のアメリカ人ギャレスはスイスイ運転していきます。
こんな雪、都会っ子のわたしにはめったに見られないので、途中で停めてもらって記念撮影。
ぐんぐん雪の山道を登って行くと、ついに念願の酸ヶ湯に到着!標高900m!
車、埋まってます。
さて、中に入ると千人が入っている写真が飾られていました。数えたくなりましたが、時間がかかりそうなのでスルー。
さて、いよいよ千人風呂へ。
混浴ですが、更衣室は別々です。
心配だった混浴ですが、中の写真は撮れないのでイラスト描いてみました。こんな感じになっています。(ちなみに公式サイトには浴場のお写真もあるので、こちらでチェックしてみてください)
まず、更衣室で服を脱いで浴場へ。女性側は浴場へ出るとついたてがあるので、そこで目線を心配することなく顔や体を洗えます。
そして浴槽ですが、手前がぬる湯、奥があつ湯となっています。あつ湯は、ついたての横でお湯に入ってから、お湯の中で混浴のゾーンまで裸を見せることなく移動できます。
しかし、裸の心配は必要ないくらい湯気でまったく辺りが見えません。人も人影みたいな感じでぼんやりしているので、男性か女性かも見分けることができません。
すなわち、一緒に来たギャレスが見えない!
はずかしいけど、大きな声で「ギャレスー!ギャレスー!」と呼んでみるけど、返事なし。そう、ここは千人風呂。畳160畳の広さの浴場です。大きすぎて声が通らない。
もしかして、ぬるい方のお湯?と思い、ぬるい方(熱の湯)に行く経路を確認します。
熱い方(四分六分)の手前にありますが、直接行くなら一度熱い方からあがって、歩いてぬるい方に入らなければいけません。湯気でほとんど見えないとは言え、他に人がいる中で堂々と湯から上がるのは気が引ける……と思っていると、ついたての横に隙間を発見。
またお湯の中を移動して、ついたての裏へ行って、お湯からあがります。
このついたての隙間から入れば、2歩くらいでぬるい方にインできるのです。
ささっと2歩移動して、お湯に入って、真ん中まで移動すると人影が!
ギャレスでした!
お湯は白く濁っているので、まったく見えないし、男女でも安心して一緒に入れます。
お湯を顔につけてみると、目が染みる!そして酸っぱい。酸ヶ湯、と言うだけあって酸っぱいんです。phは2.0という強い酸性のお湯です。
じんわり体の芯まで温まったので、出ることに。上がる時に後ろ姿を他の人に見られる可能性はありますが、至近距離ではない限り、人影程度にしか見えないので安心です。
入口で、水風呂代わりに桶に水を入れてかぶってみたんですが、真冬の八甲田山の山水、めちゃくちゃ冷たくて、ぶっとびととのいしました。
と言うわけで、念願のヒバ千人風呂・酸ヶ湯に入ることができました。ほかほかでニコニコです!
行ってみたいけど、混浴が……と言う方の参考になればいいなと思います。それでも裸が気になる方は、湯あみ着が売店で販売されています。また、混浴ではなく午前8時から9時の間は女性専用として時間が設けられています。
そのまま空港へ向かい、東京に帰ったのですが、体はずっとポカポカ、そしてずっと酸ヶ湯の香りがしていました。
次回は作ったビールのお話を書きたいと思います。
文筆家、イラストレーター
コロラド大学大学院東アジア言語文明学科卒。2009年から外務省専門調査員として在シアトル総領事館勤務。在米中に出版した『COFFEE GIVES ME SUPERPOWERS』がベストセラーとなり世界5ヵ国で翻訳出版されている。サウナ愛好家でもあり、フィンランド政府観光局サウナアンバサダーに任命されている。著書に『週末フィンランド』、『エンジョイ!クラフトビール』、『コーヒーがないと生きていけない!』、『HAVE A GOOD SAUNA!』がある。
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コロラド大学大学院東アジア言語文明学科卒。2009年から外務省専門調査員として在シアトル総領事館勤務。在米中に出版した『COFFEE GIVES ME SUPERPOWERS』がベストセラーとなり世界5ヵ国で翻訳出版されている。サウナ愛好家でもあり、フィンランド政府観光局サウナアンバサダーに任命されている。著書に『週末フィンランド』、『エンジョイ!クラフトビール』、『コーヒーがないと生きていけない!』、『HAVE A GOOD SAUNA!』がある。
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