1.PIAGET(ピアジェ)
ピアジェ ポロ パーペチュアルカレンダー ウルトラシン

自社製の極薄パーペチュアルカレンダー・ムーブメント「Cal.1255P」は、厚さなんと4㎜。「ポロ」のケースに収め、わずか8.65㎜厚のスポーツウォッチに仕上げた。ゴドロン装飾を施したエメラルドグリーンのダイヤルはエレガントな様相を示しつつも、付属のグリーンラバーストラップと付け替えるとスポーティさを増して魅せる。
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2.IWC(アイ・ダブリュー・シー)
ビッグ・パイロット・ウォッチ・パーペチュアル・カレンダー

IWCは、初代モデルが2006年にまで遡る、パーペチュアルカレンダー搭載パイロットウォッチの先駆者。1985年にIWCの技術者クルト・クラウス博士が発明したリューズだけで調整可能なシステムを搭載している。北半球と南半球のダブルムーンフェイズ表示に加えて、4桁の西暦表示も装備。7日間のロングパワーリザーブも備え、ストラップには交換容易な「EasXCHANGE」システムを採用した。
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3.JAEGER-LECOULTRE(ジャガー・ルクルト)
ポラリス パーペチュアルカレンダー

スポーティな機能性とエレガントなデザインが同居する「ポラリス」コレクションの中で最上位にあたる、ゴールド製パーペチュアルカレンダー。デザインコードは1968年誕生のダイバーズウォッチ「メモボックス・ポラリス」から継承する。深みのあるグラデーションダイヤルに、南北両半球のムーンフェイズ表示が映える。
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およそ100年先の閏年まで把握して自動で日送りするパーペチュアル(永久)カレンダーは、機械式時計においてトップレベルの技術を要するコンプリケーション=複雑時計だ。その多くは、サブダイヤルで表示する日付、曜日、月という基本の構成に加え、西暦や閏年表示まで備えたモデルもある。特にムーンフェイズ(月相)に至っては、各ブランドが趣向を凝らした表現で魅せる“勝負どころ”でもある。そんなパーペチュアルカレンダー搭載モデルは、かつてはコレクターアイテムの代表格でありドレスウォッチが主戦場であったが、近年はさまざまなスタイルの腕時計で発表されるようになった。そしていま、スポーツウォッチでこの超絶機構を搭載したモデルが注目を集めている。
複雑なメカニズムのため部品数が多く、繊細な歯車の噛み合わせを必要とするパーペチュアルカレンダーは、ガシガシと日常使いするスポーツウォッチとは相容れない性格に思われてきたが、実は非常に理に適った組み合わせともいえる。同じ複雑時計でも、起動しなければ機能性を発揮しないミニッツリピーターやスプリットセコンドクロノグラフ、さらには機能をもたない“精度のための複雑機構”であるトゥールビヨンに比べ、パーペチュアルカレンダーは“ただ着けているだけ”。「実用性」の面においてスポーツウォッチとこれほど相性がいい複雑機構は他にない。そう、耐衝撃性や防水性を確保することで、最高級のデイリーウォッチが誕生したのだ。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。新著に『ロレックスが買えない。』。
※この記事はPen 2024年3月号より再編集した記事です。