熊本県五木村に移住した大橋勇太さんと宇城市に移住した樅木英介さん。ともに移住先で可能性を見出し、新しい働き方への挑戦を続けている。
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五木村複業協同組合勤務。岐阜県岐阜市出身。2021年11月に熊本県球磨郡五木村へ移住。大学時代に経済学部で地域経済を学び、営業職の会社員生活を経て、移住のできる求人サイトで五木村での現職に出合う。趣味は自転車で村内を走ること。
五木村に移住してからは自分のための時間を多く取れるようになったという大橋さん。休みの日には自転車で村内を走ったり、近くの川でカヤックに挑戦するなどアクティブに過ごす。
「五木村の魅力は、人の穏やかさと優しさにあります」
コロナ禍以降のライフスタイルの変化は、地方移住の大きな流れを生んだ。さまざまな理由があるが、地方を目指すことと、新しい働き方を探求することは密接な関係にあるのだろう。熊本に暮らしの場を移して挑戦するふたりから、「移住と働き方の多様性」を感じることができる。
「大学時代に地域経済を学んでいて、地域活性化に興味がありました。就職して営業職についたのですが、仕事と住まいを同時に探せる求人サイトで、五木村複業協同組合の募集を見つけたのです」
そう話すのは五木村複業協同組合に勤務する大橋勇太さん。会社員時代、転職検討中に五木村での仕事と暮らしを見つけた。面接後、スムーズに採用が決まり、空き家バンクで住まいも紹介してもらうなど、驚くほどのスピード感で話が進み、2021年に移住した。
人口千人ほどの小さな村である五木村は、移住者に対して空き家の紹介や補助金の交付など、さまざまな支援を行っている。大橋さんが所属する五木村複業協同組合は、村内の9つの事業所からなり、年間を通して安定した仕事をつくり出す。大橋さんの挑戦が軌道に乗った背景には、他者を受け入れる土壌があったのだろう。
「五木村の魅力は人の優しさにあると思います。みなさん、とても世話を焼いてくださり、どこに行っても、人間関係のストレスを感じません。五木村での暮らしは決して便利ではありませんが、それを上回る魅力があり、自力でなんとかしよう!と考えるので、生きる力も上がっていると感じます」
そんな大橋さんは、いまでは移住者の視点から五木村の観光情報や移住の魅力をメディアやSNSに発信し、五木村への移住者を募っている。
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樅木英介さん(宇城市)from 東京
熊本県出身。1966年生まれ。2008年に東京から故郷・熊本に移住。元パリコレのモデルであり、現在ではファッションモデルと農業の仕事を両立する「百姓モデル」として活躍する。Instagram:@editorial4momiamimo
「いい意味での“おせっかい”が、この土地にはあふれています」
東京でモデルとして活躍し、2008年に東京から故郷の熊本に移住した樅木英介さん。新しい農業法人に参加する話がきっかけの移住だったが、その話がいつの間にか立ち消えに。移住当初から困難を乗り越えなくてはいけなかった。これまでの経験を基に独自の働き方を模索して導き出した答えが、百姓とモデルを組み合わせた「百姓モデル」という道だった。百姓としては、さまざまな農家を繁忙期ごとに手伝い、モデルとしては年に数カ月単位でオーディションやモデル業をするという暮らしを続けている。
「価値観の多様化で世の中が変わっていく中で、ひとつの仕事に自分の人生をあずけることはリスクが高いと感じています。百姓でありモデルというレアカードをもつ存在になれたらと思っています」
百姓モデルの活動をする樅木さんには付き合いのある農家が多く、みな樅木さんの活動に理解を示してくれているそうだ。
「宇城市の魅力に人の優しさがあります。いい意味のおせっかいがあふれている土地だと思います」
移住者にとって、その土地の人に受け入れてもらうことは重要な要素だが、熊本にはそれがあるようだ。豊かな水と雄大な自然をもつ大らかな土地そのもののような温かさと優しさにあふれ、人に対する、いい意味の「おせっかい」がある風土なのだろう。
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熊本の魅力を伝えます!
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高良健吾
Kengo Kora
1987年、熊本県生まれ。『軽蔑』で第35回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。主演映画『罪と悪』やNetflix『忍びの家 House of Ninjas』が現在配信中。人気マンガが原作のPrime Video『1122 いいふうふ』(2024年6月)の配信を控えている。
熊本の人は人情味があって、大らかで優しいんです
おふたりが同じように熊本の人の優しさについて話していますが、その通りなんです。熊本県人は人情味があって、大らかで優しいんです。自分が暮らす土地が好きだから、外から来た人に楽しんでもらいたいという気持ちが大きいのだと思います。移住する人には直感力があるんでしょうね。大都市がすべてじゃないですし、生きていく上で大切にするものはなんだろうと考えたときに、それは便利さではないと思うのです。俳優になるとき、事務所に「熊本から通えませんか?」と相談したくらいに地元を愛する僕ですが、将来は間違いなく熊本で暮らしの場をつくると思います。