2023年末のブロジェクトと、2月14日に始まる銀座「ggg」での個展を語る TRIP#16 YOSHIROTTEN

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    グラフィック・空間・映像・アートピースなど、さまざまなアプローチで制作活動を行うアーティストYOSHIROTTEN。

    この連載は「TRIP」と題して、古くからの友人であるNORI氏を聞き手に迎え、自身の作品、アート、音楽、妄想、プライベートなことなどを織り交ぜながら、過去から現在そしてこれからを行ったり来たり、いろんな場所を“トリップ”しながら対談します。

    2024年末に渋谷・TRUNK HOTELで開催されたYARの合同忘年会にて収録された今回の対談。YOSHIROTTENが手がけたGINZA SIXとエルメスのプロジェクトの紹介から、ノリの早めの冬休みとなったタイでの思い出まで。年末を楽しく振り返りつつ、2月14日から銀座「ギンザ・グラフィック・ギャラリー」​​で開催される今年最初の個展についても話してくれた。

    YOSHIROTTEN:今日のレコーディングは、2023年12月21日に開催されたYAR 忘年会の会場、TRUNK HOTELからお届けしています。

    ——これまで「2023年の振り返り記事(前編後編)」で語ったように色々なプロジェクトがありましたが、年末にローンチされたプロジェクトでいうと、GINZA SIXに中銀カプセルタワーを持ってきたプロジェクト「Hello Again presented by Capsule record」ですかね?

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    YOSHIROTTEN:中銀カプセルタワーって、そもそもメタボリズム建築としてユニットを一個ずつ取り外したり、取り替えたりすることを想定して建築家・黒川紀章さんが設計した建物なのね。当初から、中銀から移動した際には、その時代によって新しい使い方をしてほしいという思想があったんだ。だから今回GSIXさんからは、このカプセルが改めて銀座に戻ってくるのだから、80年代のリスニングルームが現在にタイムスリップしてやってきたみたいにしたいという依頼をいただいて、そこからうちのデザインチーム「YAR」で色々提案させてもらいました。現代のリスニングルームということで、レコード、テープ、サブスク、映像を楽しむ仕様に変えました。レコードの選曲は、teresahenn君にお願いして。施工はアドジャパンさんにご協力いただき、屋上にスケートリンクもつくりましたよ。

    ノリ:この間、(1970年の大阪)万博についての書籍を買ったばっかりだったから持ってくればよかった。万博で黒川さんはタカラベルモントのパビリオン「タカラ・ビューティリオン」を手がけていて。

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    YOSHIROTTEN:当時の万博で紹介された技術発展による未来の商品のうち、携帯電話も電気自動車も実際にできて広まったけど、唯一「いらない」という理由で普及しなかったものがあるんだけど。さて、一体なんでしょうか?

    ノリ:ドラえもん?

    ——空をとべる車?

    YOSHIROTTEN:正解は、人間洗濯機。

    ——えー!

    ノリ:(YOSHIROTTENの携帯に映る画像を見ながら)なにこれ!?

    YOSHIROTTEN:ここに入って、ボタン押したら自動で洗ってくれる。いま調べたら、55年を経て再び実現されそうになってるね(笑)

    ノリ:現パナソニックが出した商品で、顔を出した状態で(身体を)洗える直径2m程の卵形のカプセル。座ってるだけでノズルからシャワーが出る。当時、何台か売れたんだ…。

    ——(笑)。年末にローンチしたプロジェクトだと、表参道・エルメスのショーウィンドウのプロジェクトもありますね。

    YOSHIROTTEN:この5年間、イベントや企画でアーティスティックディレクターとして関わりがあったんですけど、今回はまったく別で「アーティスト」として参加したんですよ。世界中のアーティストがそのシーズンのアイテムを使った作品を発表する企画として、1年前にオファーをもらいましたね。 

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    © NACASA&PARTNERS INC. / COURTESY OF HERMÈS JAPON
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    © NACASA&PARTNERS INC. / COURTESY OF HERMÈS JAPON

     ノリ:エルメス側からなにかテーマの提案があったんですか?

    YOSHIROTTEN:今年は「驚きの発見」というテーマがあって。そこに対して僕の作品は「『ユメカウツツカ』Cie!」というタイトルにしています。「Ciel」は、フランス語で「空」という意味と同時に「おやまあ」って驚きの表現に使う言葉らしくて。日本語の「ユメウツツ」は本来、古典では夢か現実か幻かわからないような体験の状況を表現していて。この窓を開くと、砂漠の上に浮遊する見たことのない葉っぱや透明の山など不思議な世界が広がる様子をこのタイトルには込めています。

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    © NACASA&PARTNERS INC. / COURTESY OF HERMÈS JAPON
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    © NACASA&PARTNERS INC. / COURTESY OF HERMÈS JAPON

    ノリ:僕はこのプロジェクトには関わっていないですが、横目で見ている感じ、素材と造作の実験をしているなって思ってました。

    YOSHIROTTEN:そうだね。自分にとっても新しかった試みとして、透明の山を実際に立体でつくれたり、葉っぱも本当に浮遊しているような造形が制作できました。空間全体を照らしていた背景の光はLED TOKYOさんに相談して実現したもの。LEDをそのまま扱うと、つぶつぶした質感が見え、現実感が出てしまう場合があるんだけど、そうならないように工夫をしました。CG制作はKota Nakazono君に依頼してエルメスのアイテムとグラフィックの見事な融合ができてます。

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    © NACASA&PARTNERS INC. / COURTESY OF HERMÈS JAPON

    ——今後の制作の糧にもなったプロジェクトだったんですね。ノリさんは、年末にタイへ行っていましたが、なにか視察も兼ねてだったのでしょうか?

    ノリ:ラオスとの国境付近、チェンライで開催されていた「タイランド・ビエンナーレ チェンライ 2023」の視察がひとつめの目的。もうひとつは、2024年にバンコクでプロジェクトがあるかもしれないので挨拶しに行ったり。あとはタイ最大級の野外音楽イベントと言われる「ワンダーフルーツ・フェスティバル」にも行きました。一生忘れない強烈な思い出ができましたね。だから、タイの南から北までガーッと動いた感じ。

    YOSHIROTTEN:タイで発表したい展示も構想があったから、それも含めてノリには視察に行ってもらった。僕も3ヶ月前に、タイで一棟まるまるデザインしている「Bloody Angle」系列のお店にも行ってて。早めの冬休みになったよね?

    ノリ:そうですね。音楽だとヘレナ・ハーフとPowderのセットがハイライトかな。ヘレナはハード、Powderはマイルドで全然ちがうけど、2人ともすごくフレッシュで新しい音楽体験だった。あとは、Mitsukiでいつも一緒にパーティしている友達のDJたちもしっかり会場を沸かせてたし。客層も世界中の遊び人が大集合って感じで、面白かった。

    YOSHIROTTEN:僕は行ったことないけど、去年から各方面から「ワンダーフルーツ・フェスティバル」の話は聞いてるし、だから来年のタイミングで自分はバンコクで展示ができたらいいなって。ここで、予言しておきます。

    ——2024年最初の個展の機会としては、2月14日から銀座「ギンザ・グラフィック・ギャラリー」での個展がありますね。

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    YOSHIROTTEN:自分の過去20年間のグラフィック史を凝縮したような、インスタレーションベースの展示になります。これまで平面作品が展示されることの多いギャラリーだったので、印刷物がほとんど一切ないインスタレーション形式の展示は、ほぼ初めてに近いんじゃないかな。

    ノリ:YOSHIROTTENのグラフィックの原体験を体感できる展示構成になっています。

    YOSHIROTTEN:僕にとっては、憧れの場所であり、ギャラリーにとっても400回目の展示になります。展示に際して「gggBooks」から出版する作品集では、帯を山口はるみさんにお願いして、序文はCALM & PUNK GALLERYの西野さんに書いてもらってます。展示タイトルは「Radial Graphics Bio」。直訳すると「放射線状に広がるグラフィックの経歴」、日本語のタイトルだと「拡張するグラフィック」。

    これまで自分の表現では、「グラフィック」を平面だけじゃなくて立体や映像、空間などに落とし込んできたので、そうした「グラフィック」への捉え方を体感してもらえる展示を絶賛制作中です。ポスターも16:9の画角で拘ってつくりました。ぜひ、みなさんお越しください。

    ギンザ・グラフィック・ギャラリー第 400 回企画展

    YOSHIROTTEN Radial Graphics Bio
    ヨシロットン 拡張するグラフィック

    会期:2月14日(水)〜 3月23日(土)
    場所:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
    開場:11時〜19時
    休館:日曜・祝日 
    入場無料

    制作協力:株式会社 NONFIX / KIM YOOSOO
    出版:『gggBooks-136 YOSHIROTTEN』(序文:西野愼二郎、帯:山口はるみ)

    www.dnpfcp.jp/gallery/ggg/

     ※ オープニングパーティ、ギャラリートーク等の開催につきましては、上記のギャラリーHP にて最新情報をご確認ください。

    アーティストYOSHIROTTENの「TRIP」 

    連載記事一覧

     

    YOSHIROTTEN

    グラフィックアーティスト、アートディレクター

    1983年生まれ。デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、領域を往来するアーティスト。2015年にクリエイティブスタジオ「YAR」を設立。銀色の太陽を描いた365枚のデジタルイメージを軸に、さまざまな媒体で表現した「SUN」シリーズを発表し話題に。24年秋に鹿児島県霧島アートの森にて自身初となる美術館での個展が決定。


    Official Site / YAR

    YOSHIROTTEN

    グラフィックアーティスト、アートディレクター

    1983年生まれ。デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、領域を往来するアーティスト。2015年にクリエイティブスタジオ「YAR」を設立。銀色の太陽を描いた365枚のデジタルイメージを軸に、さまざまな媒体で表現した「SUN」シリーズを発表し話題に。24年秋に鹿児島県霧島アートの森にて自身初となる美術館での個展が決定。


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