1月にラスベガスで開催された、IT・家電見本市の年次イベント「CES 2024」。近年人気を増しているEVや空間コンピューティングなどのデバイスと並び、注目を集めたのがeバイク(電動自転車)だ。
なかでも異色のデザインとして、アメリカの電動自転車ブランド「J&Bモビリティ」が展示したハブレス(車軸がないデザイン)のeバイク「トップシークレット」が話題を呼んでいる。タイヤを支えるハブもスポークもない革新的なデザインが注目の的となった。
タイヤの中心部からあらゆる物体を省いたことで、ルックスを洗練。さらには制動力を向上し、安全性をより高めている。
自転車の象徴、スポークが消えた!
トップシークレットは、タイヤからハブとスポークを排除。設置するゴム部分の外周を金属製の内周(リム)で支持するだけで、中心部は空洞となっている。
前輪・後輪とも、リムは車体フレームと1カ所でのみ接続する。フレームのシルエットは従来の自転車とほぼ同様でありながら、タイヤの向こうが完全に透けて見えるデザインだ。近未来的であると同時にどこか懐かしい、不思議な感覚を演出する。
従来の自転車でも、デザインに工夫を凝らしたものは数多かった。とはいえ、eバイクであるか否かを問わず、一定程度の雑然とした印象が拭えなかったのもまた事実だ。その理由のひとつは、タイヤを支持するスポークにあったといえる。
タイヤを支持する構造上、どうしても中心部のハブに向かって金属製の数十本のスポークを設けざるを得ない。自転車特有の複雑なシルエットを生み出していた。本機はスポークを排除することで、これまでにないシンプルさを実現している。
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最大130kmを軽やかに走る
フレームには航空機グレードのアルミニウムとチタニウム素材を使い、軽量ながら十分な強度を確保した。
タイヤ部分には、パンクのおそれのないエアレスタイヤを採用。動力には軽量かつエネルギー変換効率の高い750Wミッドドライブモーターを搭載し、最大140Nmのトルクを生み出す。960Whの大容量バッテリーを装備し、一回の充電で最大130kmの走行が可能だ。
本体重量はeバイクとしては平均的な約26kgとなっている。マウンテンバイクとアウトドアライフスタイルに特化したカナダのメディア「ピンクバイク」は、ハブとスポークを省略化したからといって軽量化に結びついたわけではないようだ、と惜しむ。
ブレーキ性能が向上
もっとも、ハブレス・デザインは目立った軽量化に結びつかなかった一方、安全性の向上に貢献している。タイヤを支持するハブとスポークを省いたことで、強度確保のためにリムがやや大型化した。この空間を活用し、制動力に秀でる大型のブレーキディスクを搭載している。
スペインの自転車専門メディア「ブルハラバイク」は、「リムの内縁には巨大なブレーキ・ディスクが組み込まれている」と紹介。「その直径からすると、驚異的な制動力を発揮するであろう」との分析を示している。
ブレーキには日本のシマノ製XTR油圧ディスクブレーキを採用した。同記事は「アーバンスタイルのバイクであるにもかかわらず、すでに述べた頑丈なフレームに加え、XTRのようなトップレベルの油圧ブレーキが搭載されているのは驚きだ」と評価している。
目新しいデザインは「まるでSF映画」
革新的な製品を取り上げているカナダの「トレンド・ハンター」は、「ハブレスホイールとエアレスタイヤを採用した、未来的なeバイク」だと紹介。SF映画『トロン:レガシー』にも通じるデザインで、「洗練されたライド体験」が期待できると述べている。
公式サイト掲載の動画には、「素晴らしい」「いいアイデアだ」「気に入った!」など肯定的な反応が寄せられている。めずらしいデザインだけに、「メンテナンスと修理が問題になるのでは」との懸念もあるようだ。
価格は3999ドル(約59万円)で、現在、アメリカなど一部の国を対象に予約を受け付けている。カラーはチェリーレッド、オーシャンブルー、サンディーブラウン、カーキグリーンの4色から選択可能だ。今年3月に出荷予定となっている。
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