バイヤーのユニークな目線でトレンドをキャッチする店は、新たな出合いをもたらし、さらなる楽しみを与えてくれる。それぞれの個性を体験しよう。
Pen最新号は『東京がおもしろい!』。都市は新陳代謝を繰り返し、常に変化し続ける。世界屈指のメガシティ、東京はなおさらだ。アフターコロナのいま、気がつけばあちこちで新しい動きが起きていた。世界中の人々を惹きつける新旧混じり合うこの都市で、いまどこへ行くべきか? 2020年以降オープンのショップからクリエイターたちのお気に入りまで、東京の“ いま”がここにある。
『東京がおもしろい!』
Pen 2024年3月号 ¥880(税込)
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【原宿】 ブランデット東京
さまざまにカタチを変える、ギャラリーのような空間
“ファッション×家具×アート”でライフスタイルを表現するブランデット東京は、ギャラリーのように柔軟に装いを変えていく。ファッションブランドのポップアップが開かれた翌日には、別のブランドが展示会を行っているほど。ファッションPR&販売歴が長い宮本哲明が、思い入れのある原宿に個人で出店したパーソナルなスペースだ。服や家具などのショールームをメインとするが、来店予約をすれば取扱品を購入することもできる。スタイリストやエディターが日々出入りして情報交換し合う場は、本当によい、ハイセンスなものに出合えるはずだ。
【表参道】 キャロル
世界中から集められた、モードと大人のための服
品揃えは約6割がセレクトで、約4割は東京モードのシュタイン。キャロルはシュタインのデザイナーである浅川喜一朗による、「知らない服と出合う感動を体験」するための場所。自他ともに認めるファッションマニアな浅川自身が夢中なアイテムを、世界中から集めコンパクトな店内にぎっしりと詰め込んだ密度の濃さが魅力。モードショップには珍しく、“大人ベーシック”な日本ブランドを扱うのもキャロルの幅の広さだ。海外客が多く訪れ、新しい日本カルチャーを発見して持ち帰っている。ノンジャンルな服好きが、まず東京で訪れるべき筆頭株である。
【中目黒】 リン
月に2週間だけ営業する、新時代感覚のショップ
最寄りである中目黒駅から距離があり、しかも月に14日だけのオープン。営業時期の2週間はポップアップイベントも行われ、毎回の品揃えが変わる。それでも服好きが熱心に通うのは、他店では取り扱いの少ない日本ブランドを中心にした品揃えの実力の高さだろう。大手セレクトショップのバイヤーだった佐藤祐輔と大橋聡太が、混沌としたコロナ禍の社会を通過した先に始めた、真に価値があると考えるアイテムだけを置く店。普通に思えて普通でない服ばかりのセレクションが秀逸だ。店に立つふたりとの会話も弾み、つい長居してしまう名店である。
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【渋谷】 フェイ
1960年代の建物の一室で、エッジィな個性に出合う
渋谷駅から代官山に向かう途中に位置する、飲食店やオフィスで賑わう桜丘エリア。高度成長期の1960年代に施工された古いマンションの一室に、この店はある。訪れるのは、インスタグラムでリサーチを欠かさないエッジィなファッション好きで、30代の男性が多い。ファッションの輸入代理店にいた高橋洋平が独立し、コロナ禍の2020年にオープン。取り扱いブランドは約15ほどで、他店で見かけないニッチなセレクションが楽しい。地方の個人店のように高橋がひとりで接客も担う親しみやすさも、フェイの大きな魅力である。
【祐天寺】 キーライム トーキョー
ベーシックを極めた、“その先”にある日本回帰
フランス・パリに住み店を経営する関隼平が、東京発信の新拠点をつくった。場所は祐天寺と学芸大学の中間に位置する穏やかな住宅地。型数を絞った少数アイテムのみを置いている。取り扱いブランドで注目すべきは、関の思い入れが深い名古屋のダル、ホークといった、国産生地を使った地方発信ブランドだ。店のアイテムで比重が大きいのは関がデザインするS Hを中心とするシャツ。上質な洗いざらしシャツ+デニムの快適なベーシックを、一歩先へ進める大人の提案。関のブログ愛好者をはじめ、彼の世界観に賛同する人を虜にすること間違いなしの店だ。
【青山】 アーチ 南青山
他店のスタッフも通う、プロ御用達の品揃え
南青山エリアに珍しくラギッドなメンズショップができたことで評判の、アーチ南青山。根津美術館と同じ通り沿いに2022年にオープン。2フロアの広い店内に並ぶ品はどれもひと癖あり、服好きの心をつかむ。他店の販売員が休日に私服を買いに訪れるほどの個性ある品揃えだ。北海道に3店舗を構えるアーチの東京進出2店舗目に相当するこの店では、フレンチワークといったヨーロピアンヴィンテージと新品が同じ世界観を共有して並ぶ。新品はウティやボンクラなどの国内ブランドにインポートブランドも。大人の感性にジャストフィットするだろう。
【池ノ上】 フリー
下北沢から一歩離れた、ローカルエリアで古着を
若者が集う古着の聖地である下北沢の隣駅、池ノ上にある古着店。築60年近くの狭小な木造2階建てをローテクに改装した空間だ。品揃えはノンジャンルで、並ぶのは1960〜2000年代が中心。オーナーの末永竜介が取引する古着業者がイタリアにある背景もあり、イタリアブランドの多さが印象的だが、日本のデザイナーズも散見する。ファッション歴が長い大人ほど発見を楽しめるだろう。さらにこの店ならではの個性のひとつが、古い映画や舞台の衣裳を取り扱っていること。ファンタジックな手づくり服を手に取れる貴重なチャンスだ。
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