スウェットシャツに心惹かれるのは、20世紀前半のカレッジ用スポーツウエア、軍のトレーニングウエアといった古き良き男たちの着用姿が脳裏をかすめるからかもしれない。Tシャツでもニットでもない独特な立ち位置。そんな定番アイテムにも間違いなく時代ごとの変化がある。同じ着るにしても旬の感性をまといたいものだ。そこで今回の「着る/知る」は、スウェットシャツ界の雄であるチャンピオンに話を聞き現在のトレンドを探った。さらに日本から世界に発信するネオベーシックのオーラリー、話題のメンズモードのシンヤコヅカにもフォーカス。スウェットシャツをつくり続ける人気ブランドたちの、三者三様なオリジナルスタイルをチェック!
ビンテージ復刻&ハイテク技術のチャンピオン
最新スウエットシャツ事情を尋ねた人物は、日本におけるチャンピオンの商品企画責任者のヘインズブランズ ジャパン 立浪和晴。まずはシルエットの傾向から語ってもらった。
「多様性時代に即してさまざまなシルエットが着られるようになりました。どれが絶対とは言い切れないのが実情です。それでもマスで捉えるなら、ドロップショルダーのゆったりタイプがもっとも人気ですね。ただし好感度なセレクトショップの取り扱い品では、単にダボッとしたものから部分的にすっきりさせるなどのキレイめ傾向に変化してきたようです」
ゆったりフィットがすっかり定着した時代。この流れのなかで昔ながらの凝った仕様も復活してきた。
「古着市場でスウェットシャツがすごく値上がりしています。チャンピオンのアイコニックな『リバースウィーブ®』(縦縮みを防ぐクラシックな技術)の1990年代の品は20年ほど前にはアメリカでも1ドルぐらいで買えましたが、いまでは1万円オーバーがあたりまえ。より古い時代のものはさらに希少品に。リバースウィーブ®で30年代初期になると、ビンテージ市場でもほぼ見かけず高値で取引されます。弊社のラインナップでも近年、歴史的なモデルを復刻&アップデートさせています。大人層にオススメのモデルです」
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上2点写真はビンテージを忠実に再現させた1型。
「30年代のドルマンスリーブのスウェットは珍しい袖つけで、ファッションとしてもカッコいいと思います。肩山が柔らかい印象なため女性人気も高く、ジェンダーレスな服でもあります」
約4年前の100周年記念のとき復刻した新定番だ。脇下が広めなので着用写真のようにオーバーサイズで着てもよく、ジャストを選んでキレイめを狙うのもいい。肩に負担がなく腕を動かしやすいのもドルマンスリーブの魅力のひとつだ。
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クラシック再び、の動きに加え、ハイテク技術を使った新しい試みも見逃せない。スウエット離れしていた大人もまた着たくなること請け合いの出来栄えだ。
「このスウェットパーカは、真冬でも着ていたい人のために開発された防寒服です。表面と裏面の中間層に、防風透湿フィルムを挟んだアウトドアアウターのような三層構造なんです。表地は軽く雨を防げる撥水加工のコットンで、裏面はハイテクな保温素材。透湿性もしっかり確保できています。インナーダウンでも中に着てしまえば、アウターとして真冬のニューヨークでもイケます!」
あえて機能を目立たせないスマートな見た目もハイセンスだ。
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ベーシックなミックスグレーのスウェットシャツ。実はハイテク技術により生まれた最新のリバースウィーブ®である。
「機能満載なのですが、まずひとつは超軽量であること。同等の厚みのスウェットの中で世の中でいちばん軽いといっても過言ではないほどです。素材を化繊のポリプロピレン100%にして軽さを実現させました。洗濯してバツグンに乾きが早く、汗をかいても冷え感がないのもこの素材のよさ。さらに断熱性もあるからすごく温かいんです。寒い冬には最高ですが、逆に春や秋には熱すぎるかな(笑)。イージーケアですし冬の旅行や出張にオススメの逸品です」
見た目にも触り心地にも化繊感がなく、コットン見えするこだわりがチャンピオンらしいところ。シルエットもオーセンティックで誰もが着やすい日常着だ。
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高級素材に包まれるオーラリー
パリのファッション・ウィークでランウエイショーを行い、いまや世界的ブランドとして認知されてきたオーラリー。「上質素材を着る」デザインの方向性はいまも変わらない。定評のあるスウェットアイテムからここにチョイスした2型のうち、最初にお届けするのは上2点写真のクルーネック。実はフロントを全開できるカーディガンである。隠しボタン(比翼仕立て)だからすべて留めればスウェットシャツの見栄えになる。春の暖かい季節はボタンを開いて温度調整すれば快適だ。スウェットシャツの新しい着こなしを生み出した2024年春の新作である。
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ブランドPRスタッフが手に持つ服は、定番の超ハイゲージプルオーバー。ディテールは身頃の両サイドに切り替えパーツがついたチャンピオン系で、生地は高級な超長綿の糸で編んだ特製品。独特な弾力感と優しさがある、スウェットシャツとTシャツの中間地点に位置するエレガントな服だ。
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エッジーな感性をまとうシンヤコヅカ
ファッションショーを東京で行い、若手スタイリストらがこぞって見に行くシンヤコヅカ。バイヤー向け展示会はパリと国内で行っている。彼ら流の日常着であるスウェットシリーズから、ここではプルオーバーとパーカをセレクト。上と下2点写真がプルオーバーで、人物着用は同素材パンツとのセットアップスタイル。ビッグなサイズのシルエットも印象的だが、なにより目を引くのが袖と裾の処理。通常はリブを縫い合わせる箇所を、生地内側にゴムを仕込んで縮めるシャーリング手法で絞っている。ウィメンズのブラウスに近い優雅さを醸し、スポーツ感を薄めて洗練させた巧みなアイディア。デザイナーズならではのオリジナリティが冴え渡る。
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【画像】定番も進化する!スウェットシャツ最新事情 〜チャンピオンからシンヤコヅカまで〜【着る/知る Vol.170】
ビンテージ復刻&ハイテク技術のチャンピオン
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高級素材に包まれるオーラリー
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エッジーな感性をまとうシンヤコヅカ
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ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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