1.BREITLING(ブライトリング)
アベンジャー B01 クロノグラフ 44
もともとはジェット機のパイロット向けに製作され、タフなデザインで人気を得ていた「アベンジャー」が、このたびフルモデルチェンジを果たした。ラチェット式回転ベゼルは誤動作を防ぐ逆回転防止機能付き。天地左右に配置されたライダータブは、パイロットがグローブをはめた指先でもスムーズに操作できるブライトリング固有のディテールで、クリックのレスポンスも快適だ。
---fadeinPager---
2.SEIKO PROSPEX(セイコー プロスペックス)
SBDX059 ランドマスター 30周年記念限定モデル
1993年に誕生し、冒険家や登山家の信頼に応えてきた「ランドマスター」シリーズの30周年記念モデル。「ランドマスター」のデザインアイコンでもある簡易方位計を、無段階に可動する両方向回転ベゼルに装備。時針を太陽の方向に向け、12時との中間点に「S」を合わせることで360度の方角を縦覧できる(北半球の場合)。チタン表面にはダイヤシールドを施した。
---fadeinPager---
3.HAMILTON(ハミルトン)
カーキ フィールド エクスペディ
---fadeinPager---
腕時計のフェイスというと、つい文字盤に目がいきがちだが、文字盤外周のベゼルも腕時計の印象を大きく左右するパーツのひとつだ。そしてタフなベゼルは現代の腕時計がもち得た強力な“武器”である。懐中時計の時代にはベゼルはむしろ目立たないことが望まれ、ドレスウォッチでもフラットなものほど品のよさを高めるといわれてきた。一方でソリッドな造形のベゼルが“力強さ”を誇示するように、ベゼル本来の役割は風防を安定化させるためだったが、腕時計の機能やデザインの進化に伴い、その役割も変化してきた。
ベゼルは「枠」や「額縁」を意味するが、フランス語では「リュネット」と言い、複数形はメガネの意味になる。つまりメガネのレンズを留める縁は、時計の風防ガラスを固定するフレームと同義である。アイウエアのフレームにはファッション以上の意味はもたせにくいが、腕時計のベゼルにはさまざまなポテンシャルがある。クロノグラフと組み合わせてテレメーターやタキメーターにすることもできるし、ワールドタイマーなら都市名を刻むスペースとなる。
なによりの大発明は回転ベゼルだった。針の情報を変換する固定目盛りからさらに進化し、可変情報を加工するインテリジェントツールの可能性が拓けたのである。ダイバーズでは潜水経過時間を、パイロットウォッチでは飛行時間を測定。太陽の方向から方位を割り出すコンパス機能もベゼルに付与させた。機能に裏打ちされたベゼルデザインは、確かな存在感を放つのである。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。新著に『ロレックスが買えない。』。
※この記事はPen 2024年2月号より再編集した記事です。