セルフレジ導入が進むアメリカ…それでも「爆発的」には広がりそうにない理由

  • 文:安部かすみ
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frantic00-Shutterstock

近頃日本でも、レジの会計作業を客自らが行う「セルフレジ」が大型スーパーや商業施設で広がりを見せている。セルフレジ機導入のメリットは、レジ待ちの行列解消や感染症対策のほか、店側にとっては人件費削減や業務の効率化などがある。

セルフレジは日本語では無人レジとも呼ばれているものだが、実際にはセルフレジ機のエラー対策や、アルコール購入で年齢確認が必要なため、担当スタッフが必要なのが現状で、アメリカでも完全な無人化には至っていない。

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全米で広がるセルフレジ

スーパーにおけるセルフサービスという観点では、アメリカで客自らが作業をするセルフサービスの概念が生まれたのは、CNNによると20世紀初頭とされている。それまでは店員がカウンター越しに接客し、店員が動き回って商品をピックアップするスタイルが主流だった。そんな中、スーパーのPiggly Wiggly(ピグリーウィグリー)は商品の低価格化のため、店員の代わりに客自身が店内を動き回り棚から自分で商品をピックアップして運びレジで会計する、つまり現在の買い物スタイルを採用した。そしてさらなる省人化のため、初期のセルフレジ機が世に現れたのは半世紀以上経った1986年。初期の頃は客が商品をスキャンしてベルコトンベアーに乗せ、店員が流れてきた商品を袋につめ、客は会計所に移動して支払うシステムだったようだ。

日本でセルフレジを初導入したのは日本経済新聞によると2003年、MaxValu (マックスバリュ)だった。アメリカではすでにその頃にはセルフレジがより広範囲に広がっていた。2000年代初頭以降、大手小売り店は検証を重ね、セルフレジ機が大型チェーンや商業施設、ドラッグストアなどで少しずつ拡大。近年はさらに導入店が増え、大手の小売店ではだいたいどこでも設置されている。そしてコロナ禍のパンデミックが後押しし、利用者が急増した。

今では、セルフレジのみの店もあるほどだ。大手小売チェーンのWalmart (ウォルマート)、Kroger (クローガー)、Dollar General (ダラー・ゼネラル)はセルフレジのみの店舗を試験的に導入。Costco(コストコ)とAlbertsons (アルバートソンズ)は、数年前に廃止したセルフレジを復活させるなどの動きもある。

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セルフレジ導入をためらう動きも

一方で、セルフレジ導入を見直す動きも見られる。アトランティック誌や前述とは別のCNNの記事は、大手の小売業者はセルフレジを再考していると報じている。

例えば、Walmart(ウォルマート)やShopRite(ショップライト)は一部店舗でセルフレジ機を撤去。Wegmans(ウェグマンズ)では客がスキャンして支払うアプリサービスを終了。 Costco(コストコ)も非会員が会員証を不正利用している問題が浮上して以来、セルフレジの人員を増やすなど、各社でセルフ会計を見直す動きが起こっているというのだ。これはアメリカだけにとどまらない。イギリスではスーパーチェーン、ブース(Booth)が28店舗のうち26店舗でセルフレジを廃止し、通常の従業員によるレジを復活させたと報じられた。

これらの動きの背景に、現状のセルフレジ機のさまざまな問題が炙り出される。一般に浸透しているセルフレジ機は操作中にエラーが頻繁に発生し、正しい会計ができなかったり、作業に時間がかかる。人との関わりがなく機械的な作業(顧客体験)になりがちなのもデメリットとされている。買い物客1000人を対象としたある調査では、セルフレジ機の利用者の67%が不満があると回答した。

また店側にとっても導入コストがかかり、定期的なメンテナンス費も必要だ。万引きや不正操作が多いことも以前から問題になっている。アルコールを購入する際のID確認はスタッフが行うため、結局スタッフは機械と客の両方を監視しなければならず、店側の損失も報告されている。

実際のところ、セルフレジ機の導入店の方が、客のミスや万引きによる商品損失がより高いことが判明している。欧米でセルフレジ機や専用アプリの導入企業の損失率は約4%で、業界平均値より2倍以上高いという。

これらの問題や不満解消のために、各企業はさらに進化したセルフレジ機の開発が求められている。

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リテールの一大展示会、NRF24で最新のセルフレジ機が披露された(写真は東芝のブース)。(c) Kasumi Abe

 

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昨秋オープンしたウェグマンズの新店(ニューヨーク市内)では会計セクションのほとんどがセルフレジ。ここでは東芝が開発した最新のセルフレジが導入されている。筆者も操作してみたがエラーもなくかなりスムーズに会計ができた。(c) Kasumi Abe

 

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さらに海外では、米アマゾンによるAmazon Go(アマゾン・ゴー)に代表されるようなレジそのものを無くした店も徐々に増えている。オートノマス・ストアやフリクションレス・ストアと呼ばれるもので、日本語では無人店舗などと呼ばれているが、この最新スタイルでも実際のところ完全に無人なわけではなく、大抵はバックオフィスにスタッフが控えていて、客が必要とする時に対応をしている。

大都市では組織的な窃盗団による万引き事件がここ数年で急増し社会問題になっている。日本でも高級店で同様の事件が発生したり、無人店舗で支払いをせず商品を持ち去る事件がたびたび起こっている。無人レジや無人店舗の動きが広がっているが、完全なる「無人」化を達成するにはさまざまな障壁がある。

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