アメリカ五大湖に臨む巨大なシカゴの街で、信じられないほど小さな“名所”が話題だ。気温がマイナス4℉(マイナス20℃)となる極寒のなか、なおも訪れる人が絶えないというその話題のスポットは、地面に空いたねずみの形の愛らしい穴だ。
シカゴの人々が親しみを込めて「ラットホール(ねずみの穴)」と呼ぶこの穴は、まるでワーナーアニメ『トムとジェリー』のワンシーンのよう。同作品では派手ないたずらを仕掛け会うねこのトムとねずみのジェリーが壁や床に激突し、からだの形の穴をぽっかりと残す。
いまシカゴで人気のねずみの穴も、まさにそんな形が自然に残ったものだ。市街のロスコー・ビレッジと呼ばれる街区の片隅で、コンクリート舗装の路面のうえに、ねずみを生き写しにした小さな穴がありありと残されている。生乾きだった舗装中にうっかりとはまり、あわててどこかへ逃げ去ったのだろうか。
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小さな鼻先からしっぽまでくっきり
ネズミの穴は人の手ほどの大きさだ。周囲の平らなコンクリートと比べて深く凹んでおり、あきらかに形が際立っている。かなりしっかりとした窪みになっており、雨の跡にはねずみの形の水たまりとなるほどだ。
鮮明でない右手をのぞき、鼻先や四肢、そして繊細なしっぽまでもがくっきりと跡になって残っている。「べちゃっ」と舗装中のコンクリートのうえに落ちてしまい、「しまった」とばかりに逃げ出す様子が目に浮かぶようだ。なかでも左手は特にはっきりと型が残っており、4本の爪の先までよくわかる。
あるX(Twitter)ユーザーがねずみの穴を“聖地巡礼”に訪れると、まるでトレビの泉のようにたくさんのコインで満たされていたという。このユーザーもコインを投げ入れたようで、「シカゴのネズミホールに寄付してきたよ」と投稿に綴っている。
このユーザーが訪れた時点で、すでに多くの人々が穴を一目見ようと訪れていたという。続く投稿で、「多くの人がやって来て、写真を撮り、そして穴のそばで他の人と話し込んでいた」と現地の様子を伝えている。
投稿によると、あまりに精巧に型が残っていることから、バンクシーの作品ではないかと勘違いする人が現れたり、今年はハロウィンの仮装にぜひねずみの衣装を取り入れたいと語る人がいたりと、道行く人同士で会話が弾んだという。
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ソーシャルメディアで1400万回閲覧の話題に
シカゴの名所は、アメリカ全土で話題になりつつある。ニューヨーク・タイムズ紙は1月13日の全国版で、前掲のXの投稿が500万回以上閲覧され(1月19日時点で約1400万回に増加)、これをきっかけに訪問者が爆発したと報道。
記事は、「居心地の良い居酒屋、個人経営のブティック、昔ながらのパン屋などで知られるロスコ・ビレッジの閑静な住宅街に、数え切れないほどのシカゴ市民が一目見ようと出かけるようになった」と紹介している。
全米日刊紙のUSAトゥデイも、「ネズミの形をしたこの穴が、ソーシャルメディアのユーザーやロスコー・ビレッジを訪れる観光客の注目を集めている」と取り上げている。記事によると、地元のレイクビュー・ロスコービレッジ商工会議所は町おこしにと、穴の愛称を公募するコンテストまで開催しているという。
同会議所は、「レミー(ピクサー作品『レミーのおいしいレストラン』より)からミッキーマウスまで、げっ歯類はポップカルチャーの中心であり、特別な位置を占めています。ロスコー村の“ネズミの穴”も例外ではありません」と述べ、同じねずみの姿をした著名キャラクターにあやかる。1月18日まで公募し、その後上位5点による一般投票が実施される。
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実はリス? 住民が伝え聞いた由来とは
話題のねずみの穴だが、実際にはリスではないかとの説もある。1997年から近隣に住む女性は、ワシントン・ポスト紙に、さらに古くから住む隣人に聞いたという話を語っている。
それによると、かつてこの場所には、古く美しいオークの樹が生えていた。樹のとなりで舗装中だったコンクリートの上に樹上からリスが落ち、型が残った——というのがこの女性が聞いた話だ。穴ができたのは、90年代前半のことだったという。
リスかネズミかで見解が分かれるが、いずれにせよ小動物は無事だったと多くの人は信じている。ある男性はワシントン・ポスト紙に、「そのネズミはセメントの中に落ち、体を払い、仕事に向かったのです」とユーモアを交えて見立てを語った。
極寒のシカゴの街で、およそ30年も前にできた小さなネズミの穴がソーシャルメディアの力で話題となり、人々に笑顔を広げている。
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Had to make a pilgrimage to the Chicago Rat Hole pic.twitter.com/g4P44nvJ1f
— Gatorade Should Be Thicker. (@WinslowDumaine) January 6, 2024
かわいく空いたねずみホールの画像。「シカゴに聖地巡礼に来た」と、あるユーザーが投稿。
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@marshian_rover A Malort offering to the rat hole #malort #rathole #chicago #roscoevillage #roscoevillagechicago ♬ original sound - Marshian
ねずみの穴にお酒のミニボトルを捧げる“巡礼者”の動画。「これで凍らないね」の一言で、集まった人々に笑みが広がる。
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paid tribute to the chicago rat hole today pic.twitter.com/jDM1vWPPNo
— beer person (@CantEverDie) January 13, 2024
まるで泉のように、人々から寄せられたコインでいっぱいに。「ねずみホールに寄付したよ」との投稿。
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Chicago’s latest attraction? A rat-shaped hole https://t.co/wKAo7V4lHg
— ST Foreign Desk (@STForeignDesk) January 15, 2024
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