「大人の名品図鑑」帽子編 #5
かつて帽子は日除けや防寒などの実用的な目的、あるいは社会における身分や階級の象徴として進化したが、いまやファッションアイテムとして、老若男女に愛用される装身具=アクセサリーだ。今回の「大人の名品図鑑」では、いま注目を集めるカジュアルな帽子について考察する。
クラシックさが漂うキャスケットは狩猟用の帽子として生まれたハンチング帽の一種だ。短めのつばが付き、クラウン(頭頂部)が複数のはぎで仕立てられたキャップ型の帽子を指す。はぎは6枚か8枚のものがほとんどで、全体的に膨らんで仕上げられているところがハンチングとの大きな違いだろう。名称はフランス語で兜やヘルメットを意味するカスク(casque)が由来とされ、ロシアの革命家ウラジミール・レーニンが愛用していたので、「レーニン帽」とも言われる。また新聞配達人がよくかぶっていたことから「ニュースボーイ・キャップ」とも呼ばれていた。
このキャスケットは19世紀から20世紀にかけて欧米で流行し、ハンチングは上流階級の人にもかぶられていたのに対して、キャスケットは労働者や階級の低い人たちの間でよくかぶられていたと聞く。だから当時を描いた映画、例えば『ゴッドファーザーpartⅡ』(74年)では、20世紀初頭にシチリアからひとりニューヨークに渡った若き日のヴィトー・コルレオーネを演じたロバート・デ・ニーロがかぶっていた。
また30年代のアメリカ・シカゴを主な舞台にした名作『スティング』(73年)では、若い詐欺師フッカーを演じたロバート・レッドフォードがこの帽子を被っている。さらには禁酒法時代のアメリカを描いた『アンタッチャブル』(87年)では名優ショーン・コネリーが被ったが、アメリカのこれらの時代を描くにはキャスケットは最適な帽子だったのではないだろうか。またハンチングは男性に好まれることが多いが、キャスケットは女性にも人気が高い。現在でも少し大きめのキャスケットを被っている女性をよく見掛ける。
---fadeinPager---
こだわり抜いたポータークラシックのものづくり
今回ピックアップしたキャスケットはポータークラシックのアイテム。ポータークラシックは世界的に知られデザイナーの吉田克幸とその息子である玲雄が2007年に創業した。メイド・イン・ジャパンにこだわり、「世界基準のスタンダード」をコンセプトにしてコレクションを展開するブランドだ。
紹介する「PC KENDO CASQUETTE」は、ブランドを代表する素材「PC KENDO」でつくられたもので、この素材に使われている糸は希少なシーアイランドコットン。ご存知の方の多いだろうが、シーアイランドコットンは18世紀、カリブ海の西インド諸島で栽培が始まり、やがてアメリカで生産されるようになった綿で、栽培がとても難しく、収穫量は全綿花のわずか10万分の1程度しかない。その希少性の高さから「奇跡の綿花」とも呼ばれる。この最高級のコットンを使って、限られた有段の剣士だけに提供する「剣道着」の職人が織ったのがこの「PC KENDO」という素材だ。
通常の剣道着は硬くてゴワゴワとしているが、何度も洗いをかけ、ソフトで肌触りよく仕上げているため、快適なかぶり心地を備えている。カラーは赤みを抑えたくすんだアンティーク調のインディゴブルー。糸それぞれがムラなくきれいに染まる「ロープ染色」と呼ばれる手法を使って染め上がられており、着るほどにそのブルーは味わいが増す。
また帽子の天ボタンに使われているのは日本を代表するレザーブランド、グロックレザーが製作した92.5%純銀という高級素材の「925 SILVER」で、表面にピースマークがこの刻印されている。そしてこのキャスケットをポータークラシックと共作したのが、日本が世界に誇る帽子メーカーのキジマタカユキ。ポータークラシックというブランドの思いやこだわりが、このキャスケットには凝縮されている。
---fadeinPager---
---fadeinPager---
---fadeinPager---
---fadeinPager---
ポータークラシック 銀座
03-3571-0099
porterclassic.com
---fadeinPager---