電池駆動の小型モーターで時計を動かす、世界初のエレクトリックウォッチとして1957年に誕生したハミルトンの「ベンチュラ」。そのメカニズムの斬新さに加え、工業デザイナー、リチャード・アービブが手がけた左右非対称のトライアングルケースの独創性によって、ハミルトンを代表するマスターピースとなった。今年1月に発売されたばかりの最新モデルは、この時計を愛したセレブリティへのオマージュを込めながら、これまでにないフレッシュな印象の一本に仕上がった。
アイコニックなケースに、鮮やかなブルーが合わさった新作
フィンの付いた名車、キャデラックのデザインで有名なリチャード・アービブは、ハミルトンが考案した斬新なメカニズムを収める 時計として左右非対称のケースを提案。近未来的な価値を視覚にも訴えかけるそのデザインは、時計好きなら誰もが知るアイコンだ。
そんな斬新な機構とデザインをもつ「ベンチュラ」の愛好家として最も有名なのは、やはりエルヴィス・プレスリーだろう。彼は1961年に公開された映画『ブルー・ハワイ』に出演する際にこの時計を着用しただけでなく、プライベートでも愛用していた。時代を牽引するスターと時代を先駆ける革命的な時計の組み合わせは、躍進する60年代のアメリカを象徴していた。
「我々はこれまでにも、さまざまなかたちでエルヴィス・プレスリーへオマージュを捧げてきましたが、今回、私たちが挑戦したのは、彼の曲をテーマにすることでした。選んだのは『ブルー・スエード・シューズ』。これは1956年にカール・パーキンスが発表した曲で、エルヴィスがロックンロール風に仕上げて大ヒットしたものです」と、デザインを司るハミルトンのプロダクト開発責任者は語る。
「この曲には、『なにをしてもいいけど、俺のブルーのスエードの靴は踏むなよ!』という歌詞があります。だから、どうしても踏まれたくないほどの"美しいブルー"を時計で表現したかったんです。そのひとつが、人工皮革スエードのアルカンタラで製作したブルーのストラップです」
天然のスエードは繊細な素材であるため時計のストラップには不向きだが、耐久性に優れながら肌触りもよいアルカンタラであれば問題ない。まさにこの時計にぴったりのストラップだ。
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ダイヤルのグラデーションとサンレイが美しい
ストラップだけでなく、ダイヤルにも鮮やかなブルーを取り入れた。
「文字盤で深みのあるブルーを表現することも、大きなチャレンジでした。深みを加えるために、まずは表面にサンレイ仕上げを施し、その上からブルーのPVD加工を行いました。さらに、スモーキーなグラデーションにもこだわりました」
グラデーションダイヤルは、センターから縁に行くほど濃くなっていく。金色のドットインデックスやそこに連なる繊細なラインは、濃いブルーによってその美しさが際立ち、ダイヤル中心は明るいのでアイコニックな電気信号のマークが際立って見える。
クラシカルなフレックス(蛇腹)ブレスレットは、手軽かつ着用感に優れている。素材は機能的なステンレス・スチールだが、イエローゴールドPVD加工を施したモデルは、手元を華やかに見せるアクセサリーとしても効果的だ。
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「ベンチュラ」を進化させることは、やりがいのある挑戦
さらには、トライアングルのケースに3つのサブダイヤルを絶妙なバランスで収めたクロノモデルもラインアップ。サブダイヤルは同心円模様に仕上げを変えることでアクセントとなり、3針モデルとはまた異なる印象を与えてくれる。
時計業界にはいくつかのマスターピースが存在するが、その多くはデザインやスタイル、機構を現代的にアップデートさせることで、ブランドの歴史や正統性を語るという重要な役割を果たす。ハミルトンはこれまで、世界初のLEDデジタル時計「ハミルトン パルサー」や、他ブランドと共同開発した世界初の自動巻きクロノグラフムーブメント「キャリバー11」など、前衛的な時計づくりをモットーとしてきた。その中でもデザインと機構で時計界に衝撃を与えた「ベンチュラ」は、ハミルトンの前衛的な歴史を雄弁に語るものである。
「『ベンチュラ』という時計はあまりにも強いアイデンティティをもっているが故に、進化させるのはとても難しいことです。しかしそれは、非常にやりがいのある挑戦ともいえるでしょう」
この深いブルーは、ハミルトンの創造性の証しなのだ。
ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン
TEL 03-6254-7371
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