新しいホテルのオープンラッシュに沸く、タイの首都バンコク。コロナ禍以降にオープンしたホテルの中から、五感を刺激されるダイナミックな建築やインテリアデザインに優れた7軒を厳選。それらの魅力を紹介する。
Pen最新号は『バンコク最新案内』。再開発が進み、新たな価値を創造するタイの首都・バンコク。本特集では、各分野の最前線で活躍するキーパーソンに話を訊くとともに、訪れるべき旬のスポットを紹介。驚くべきスピードで進化を続けるバンコクには、「いま」しか見られない姿がたくさんある。
『バンコク最新案内』
Pen 2024年2月号 ¥880(税込)
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ザ・スタンダード・バンコク・マハナコーン
現代バンコクの象徴的建築にふさわしい、モダン&レトロの調和
バンコクの街のランドマーク的存在になっている、まるでジェンガのようなかたちをした78階建ての超高層ビル「キングパワー・マハナコーン」内に2022年7月に開業した「ザ・スタンダード・バンコク・マハナコーン」。ザ・スタンダードホテルにおけるアジアのフラッグシップホテルだ。インテリアデザインはスペイン・バレンシアにスタジオを構え、アーティストでもあるハイメ・アジョンによるもの。世界各国のホテルやレストランの内装のほか、フリッツ・ハンセンではオリジナル家具のデザインを手がける人気デザイナーのひとりだ。アジョンがつくる空間は、フロアごとに異なるインテリアの色彩が秀逸。ほぼすべてに曲線を取り入れたオリジナルデザインの家具や装飾は、鮮やかではあるがどこか温かみのあるレトロな風合いで、やわらかな印象を添えるとともに、洗練された非日常感をかき立ててくれる。
部屋は全室シティビュー。床から天井まで全面ガラス張りの効果で、バンコクの街に溶け合うような不思議な感覚を味わえる。ダイナミックに躍動し、ポジティブなエネルギーに満ちた現在のバンコクにふさわしい、独創的でデザイン性あふれる空間に感性が刺激されるはずだ。
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ヴィラ・デヴァ・リゾート・アンド・ホテル・バンコク
都市の喧騒とは無縁に、伝統様式に触れるスモールラグジュアリー
各国の大使館が立ち並ぶ、緑豊かで閑静なエリアに立つ「ヴィラ・デヴァ・リゾート・アンド・ホテル・バンコク」。ビジネス街であるシーロム地区、ショッピング街のサトーン地区が隣接しているにもかかわらず、都市の喧騒から遮断された聖域のような空間になっている。建築マスタープランはタイの伝統的な生活様式である “Tha Nam”(水辺)がコンセプト。エントランスを抜けると、中庭を兼ねたプールが広がり、プールアクセスとなる1階のステイでは、古の水辺の暮らしを体感できる。
隣にはオーストリア大使館とデンマーク大使館の手入れされた森と庭が広がり、美しい緑を借景するかたちに。建築は2024年竣工予定の「ワンバンコク」にも携わるタイを代表する建築事務所A49、インテリアもバンコク現代美術館(MOCA)を手がけたデザイン事務所PIAで、洗練されたタイの装飾要素が随所に取り入れられている。印象的な木製の格子模様サンシェードパネルは、ヤシの葉で編まれた伝統玩具「プラータピアン」と呼ばれる魚のモビールに着想を得たもので、建物内外に光の美しい陰影をもたらす。都市の中でタイの伝統に触れられる貴重なスモールラグジュアリーホテルだ。
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シンドーン・ケンピンスキー・ホテル・バンコク
息をのむ圧倒的な迫力に加え、緑豊かな自然とモダニズムが融合
遠目でも存在感を放つS字型に大きく湾曲した建造物は、一歩足を踏み入れると打ちっ放しのコンクリートによる巨大なトンネル状のロビーへと変貌、そのダイナミックな構造に息をのむほどに驚嘆する。ロビー中央にはガゼボが鎮座し、半円のガラス張りの大開口部や天窓からは燦々と陽光が差し込む。当初の設計では最上階まで吹き抜けの構造であったというからさらに驚きだ。「バンコクの空気をつくる」と言われる青々とした自然豊かなルンピニー公園に隣接し、「もうひとつのオアシスをつくる」というコンセプトのもと設計された「シンドーン・ケンピンスキー・ホテル・バンコク」。敷地内には緑が生い茂る庭園も設けられ、モダニズム建築と周囲の自然との調和も見どころだ。
この唯一無二の建築は「100年デザイン」をマスタープランにして、バンコクをベースに活躍する建築設計事務所プランアーキテクトが手がけた。現代バンコク建築のトレンドである“空気の流れ”は、曲線を描く外観や、屋上ではなくあえて中層階に設けたオープンエアーのインフィニティプールにも取り入れられている。自然豊かな屋外と内部の境界を曖昧にしたホテルステイは、非日常への入り口だ。
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フォーシーズンズホテル・バンコク・アット・チャオプラヤー・リバー
雄大なチャオプラヤー川を眼前に望む、壮大・壮麗なアーバンリゾート
チャオプラヤー川沿いにはラグジュアリーホテルが立ち並ぶが、2020年に加わったのが「フォーシーズンズホテル」だ。インテリアデザインを担ったのは、麻布台ヒルズの「ジャヌ東京」をはじめ多くのアマンリゾーツを手がけてきた、ジャン=ミシェル・ギャシー。
扉を開けると、エントランスからそのスケール感に圧倒される。天井高は8m近くあり、大きな遺跡に入ったかのような錯覚に陥る。印象的なのは荘厳さをもたらす壁の装飾で、象が彫られた壁は宿泊者を運ぶようなイメージになっている。外に出ると中庭の池とプール、そしてチャオプラヤー川がゆるやかにつながる感覚を味わうことができる。ホテルのどこにいても川の存在を強く感じられる設計になっているのだ。バンコクという都市にエネルギーを運び続けてきたチャオプラヤー川沿いの空気を存分に堪能しながら、ゆったりと過ごす時間は格別。ミシュラン星付きのレストランやアジアのベスト10選出のバーもあるので、ホテルステイを存分に満喫できる。バンコク現代美術館(MOCA)とのコラボレーションによるギャラリースペースもあり、ホテルに滞在したまま質の高いアート鑑賞ができるのもうれしい。
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カペラ・バンコク
静けさと時の移ろいを楽しむ、クワイエットラグジュアリーヴィラ
「フォーシーズンズホテル」と同じ敷地内に立つもうひとつのホテルが「カペラ・バンコク」。オーナーの招致により、個性の異なるふたつのラグジュアリーホテルの隣接が実現した。ダイナミックなスケール感の「フォーシーズンズホテル」に対して、「カペラ」はプライベート感を堪能できる上質で洗練された世界観が特徴。タイの伝統的な装飾を施した品格あるエントランスロビーを抜けると、チェックインカウンターがないことに気づく。宿泊ゲストはリビングルームと呼ばれる部屋に案内され、寛ぎながら宿泊手続きを行うのだ。
館内のデザインは、アメリカのカリフォルニアを拠点に数々のラグジュアリーホテルを手がけてきたBAMO。バンコク都内では唯一となるチャオプラヤー川に面した7室のヴィラを備えるほか、全101室からなる客室はすべてリバービュー。館内は絵画やアートピースは最小限である代わりに、水を用いたインスタレーションが多く、静かに湧き絶え間なく流れる水の存在に心が安らぐ。控えめでありながら、ディテールの質にこだわったクワイエットラグジュアリー。静寂の中で、チャオプラヤー川の雄大な流れのようにゆったりと過ごしたい。
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コクーン・バンコク
アートと自然に癒やされる、全室ヴィラのネイチャーリゾート
バンコク都心部からクルマで約25分に位置するバンナー地区に立つ「コクーン・バンコク」。
エントランスを抜けるとバンコク都内とは思えない、まるでタイ南部のリゾート地のような光景が広がる。熱帯の大きな植物に囲まれ、心地よい風が吹き抜けるロビーラウンジを抜けると、大きな人工池を取り囲んで水上家屋のようなモダンヴィラが静かに佇む。
2007年に別の名で開業したホテルだったが、オーナーが代わり全面改装し「コクーン・バンコク」としてリニューアルオープンしたのは21年。バンコクで「ATT19」というギャラリー(52ページ参照)を運営するムックがオーナーとなり、アート色を強めた。彼女の父親であるアーティストのポーンテープ・アッタガンウォンの作品をはじめとしたアートピースが客室に飾られ、敷地内にはギャラリーも併設。各所に点在するモダンアート作品とともに、やはりオーナーによって収集されたアンティークの品々も見逃せない。アート、デザイン、アンティーク、そして自然を組み合わせることでバンコクでは他に類を見ないホテルが誕生した。大都市バンコクであることを忘れさせる自然の中で、ネイチャーリゾートの滞在が待っている。
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ザ・ムスタング・ブルー
街の記憶が刻まれた洋館に、独特の美意識を宿したリノベーションホテル
1917年に建てられたコロニアルスタイルの洋館をリノベーションした「ザ・ムスタング・ブルー」は2020年のオープン以来、注目を集め続けている。中華街の外れに位置し、もとは漢方薬局病院として建てられ、その後、娼館になった後に長らく放置されていたが、この建物のもつ魅力に惹かれたファッションディレクターであるタイ人オーナー、アナンダ・ジョイの手により、ヴィンテージライクなブティックホテルとして生まれ変わった。
客室の壁紙を剥がして躯体をそのまま露わにすると同時に、建設当初にあったものの娼館時代には床が張られていた吹き抜け部分を復活させるなど、当時の建築の個性に敬意を払い、時間を蘇らせるかのようなリノベーションが行われた。アンティークコレクターでもあるオーナーがホテル内のすべての家具をセレクト。彼女の美意識が細部にまで行き届いた5タイプの部屋はそれぞれ異なる趣で、どの部屋に滞在しても空間がもつ魅力を存分に味わうことができる。1階に併設したカフェも行列ができるほどの人気で、近隣にはハイセンスなバーやカフェショップが立ち並び、ホテル周辺エリアは注目のカルチャースポットになっている。
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