2024年も全国各地にて数多く開催される展覧会。上半期においては、現代美術の最前線で活躍する村上隆の京都での個展をはじめ、国内屈指のダリ・コレクションで知られる諸橋近代美術館から全国を巡回するダリの展覧会、さらに国内では10年ぶりのデ・キリコの大規模な回顧展など注目の展示が目白押しだ。会期順に紹介する。
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1.あべのハルカス美術館開館10周年記念『円空ー旅して、彫って、祈ってー』@あべのハルカス美術館
各地の霊場を旅し、神仏を彫り、祈りを捧げた江戸時代の僧・円空(1632〜1695年)。生涯に12万体もの仏像を彫ると誓ったといわれ、その神仏は時に優しい微笑みをたたえ、また迫力のある怒りの相を見せるなど多様な表情をしている。そして木の温もりすら感じるような素朴ながら力強い造形は、円空仏と呼ばれていまもなお多く人々の心を惹きつけている。山岳修行によって超自然的な力の獲得を目指し、その力を用いて人々を救う活動していた円空は、人々の切実な祈りや願いに寄り添って神仏を彫っていった。
あべのハルカス美術館開館10周年記念『円空ー旅して、彫って、祈ってー』では、生誕、入寂の地である岐阜県や愛知県、三重県など東海地方を中心に、北海道から近畿地方に至る円空の足跡をたどりながら、約160体の円空仏を展示。また絵画、文書、書籍などにて「円空さん」と親しまれる人となりについても明らかにする。円空は近代の美術において一度、ほとんど忘れられてしまったものの、彫刻家の橋本平八(1897〜1935年)が1931年に千光寺(岐阜県)で円空仏を発見したことに端を発し、再び評価されるようになったが、円空の最も充実した時期に作られた千光寺に伝わる円空仏の数々も紹介される。
開催期間:2024年2月2日(金)~ 4月7日(日)
開催場所:あべのハルカス美術館
www.aham.jp
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2.『京都市美術館開館90周年記念展 「村上隆 もののけ 京都」』@京都市京セラ美術館新館 東山キューブ【2/3〜9/1】
現代美術の最前線で活躍する村上隆(1962年生まれ)。2000年に伝統的日本美術とアニメ・マンガの平面性を接続し、日本社会の在り様にも言及した現代視覚文化の概念「スーパーフラット」を提唱すると、マンガやアニメといったポピュラーカルチャーなどの引用やそれらとのコラボレーションを通して、アートの価値や本質的な意味を問いかけてきた。その村上は主に海外を中心に活動してきたが、江戸時代の絵師たちが活躍し、いまもさまざまな芸能と芸術が息づき交わり合う京都にキャリア初期より深い関心を寄せていたという。
京都市京セラ美術館新館 東山キューブで開催される『村上隆 もののけ 京都』では、「京都」に正面から対峙する村上隆の新作や初公開作品などを170点あまり展示。岩佐又兵衛の『洛中洛外図屏風(舟木本)』(江戸時代・17 世紀)を引用し、村上が描きおろした全⻑12mもの現代の「洛中洛外図」をはじめ、曾我蕭白『雲龍図』(18世紀)に挑んだ全⻑18メートルにおよぶ『雲⻯赤変図』のほか、十三代目市川團十郎白猿襲名披露興行で話題となった祝幕の原画などが一堂に会する。さらに村上版「平安京」が出現するなど、京都だけのオリジナルな「新・村上ワールド」が展開される。
開催期間:2024年2月3日(土)〜9月1日(日)
開催場所:京都市京セラ美術館新館 東山キューブ
https://takashimurakami-kyoto.exhibit.jp
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3.『ブランクーシ 本質を象る』@アーティゾン美術館【3/30~7/7】
ルーマニア出身の彫刻家、コンスタンティン・ブランクーシ(1876〜1957年)は、パリに出て、ロダンのアトリエに助手として招き入れられるも、短期間で離れ、独自に創作に取り組みはじめる。そして同時期に発見されたアフリカ彫刻などの非西欧圏の芸術に通じる、野性的な造形を特徴とするとともに、素材への鋭い感性に裏打ちされた洗練されたフォルムの探究を通じて、ロダン以後の20世紀彫刻の領野を切り拓いた存在として知られている。石膏による『接吻』は代表作のひとつだが、ブロンズや大理石を用いたり、木や鉄を使うなど、多様な素材によって作品を制作しているのも特徴だ。
アーティゾン美術館で開かれる『ブランクーシ 本質を象る』は、彫刻作品を主体とする国内の美術館では初めての大規模な展覧会だ。本展ではパリのブランクーシ・エステートおよび国内外の美術館などから集められた彫刻作品約20点に、絵画作品、写真作品を加えた約90点を公開。アカデミックな写実性やロダンの影響をとどめた初期から、対象のフォルムをそのエッセンスへと還元させていく1910年代、そして「鳥」に代表される主題の抽象化が進められる1920年代以降の時期まで、ブランクーシの歩みをたどっていく。
開催期間:2024年3月30日(土)~7月7日(日)
開催場所:アーティゾン美術館
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
www.artizon.museum
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4.『生誕120周年 サルバドール・ダリー天才の秘密ー』@諸橋近代美術館【4/20~9/1】
国内屈指の景勝地である会津磐梯高原に位置する諸橋近代美術館。5.5万㎡以上の広大な敷地内に建てられている美術館は中世の馬小屋をイメージとした建物でも知られ、窓からは壮大な磐梯山の噴火口や四季折々の自然を織りなす庭園を望めるなど、美と自然の競演を堪能できる空間でも人気を集めている。また同館にはダリの絵画、彫刻、版画といった約340点もの作品がコレクションされていて、常時、数十点以上のダリ作品を鑑賞できるなど、日本における「ダリの聖地」と呼んでも過言ではない。
『生誕120周年 サルバドール・ダリー天才の秘密ー』では、ダリの生涯を概観しながら、「シュルレアリスト・ダリ」とその背景にある「人間・ダリ」の複雑で繊細な内面を探り、ダリとはいかなる芸術家であったのかについて紹介。ミロやマグリットなどの作家の作品を参照しつつ、ダリがグループにもたらした新しいシュルレアリスムの視覚表現をたどっていく。なお本展は同館で初めてとなる大規模な巡回展だ。会期を終えると秋田、大分、神奈川、広島への巡回が予定されている。福島が誇る世界屈指のダリ・コレクションにて、20世紀において大衆に最も受け入れられた芸術家の一人であるダリの天才の秘密を解き明かしたい。
開催期間:2024年4月20日(土)~9月1日(日)
開催場所:諸橋近代美術館
https://dali.jp
※開催後、秋田、大分、神奈川、広島など全国の美術館を巡回予定。
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5.『デ・キリコ展』@東京都美術館【4/27~8/29】
イタリア人の両親のもと、ギリシャで生まれたジョルジョ・デ・キリコ(1888〜1978年)は、1910年頃から簡潔明瞭な構成で広場や室内を描きつつ、歪んだ遠近法やモティーフの脈絡のない配置、また幻想的な雰囲気によって、日常の奥に潜む非日常を表した絵画を制作しはじめる。そして「形而上絵画」と名付けた1910年代の作品は、サルバドー ル・ダリやルネ・マグリットなどのシュルレアリスムの画家をはじめとして数多くの芸術家に衝撃を与え、その後は古典絵画の様式に回帰しつつ、同時に形而上絵画の題材を描きながら、90歳で世を去るまで創作を続けた。
東京都美術館にて開かれる『デ・キリコ展』は、国内では10年ぶりの大規模な回顧展だ。本展では70年にわたる画業を「イタリア広場」、「形而上的室内」などのテーマに分け、初期から晩年までの絵画を余すところなく紹介。さらに彼が手掛けた彫刻や挿絵、また舞台美術のデザインなども展示し、幅広い創作活動を明らかにしていく。作品はジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団やニューヨーク近代美術館、それにベルリン国立美術館など世界各地から80点以上が集結し、代名詞ともいえる「形而上絵画」をまとめて見られる貴重な機会が実現する。
開催期間:2024年4月27日(土)~8月29日(木)
開催場所:東京都美術館(東京・上野公園)
https://dechirico.exhibit.jp
※神戸市立博物館(2024年9月14日~12月8日 予定)へ巡回。