【くまもとへの移住者 Vol.1】ボードゲームがつなぐ、国を越えた家族の絆

  • 写真:大町晃平(W)
  • 編集 & 文:渡邉卓郎
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移住者にとっての熊本県の魅力とはなにか。熊本県・美里町に暮らしの場を見つけたハンガリー人&日本人家族は豊かな自然のなか、人の優しさに囲まれていた。

熊本県美里町。原風景が多く残る豊かな自然に囲まれた町でボードゲームカフェを経営するギャールギョイ・アティラさん一家は暮らしている。ルーマニア生まれのハンガリー人であるアティラさんと熊本出身の石井小百合さんがこの地に移住したのは2年前。

1-231117-277.jpgギャールギョイ・アティラさん、石井小百合さん、ベン君。
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左:フランスで生まれ育ったベン君は2022年の春に美里町の小学校に転入。日本語の習得が早く、流暢な日本語を話す。 右:古くから林業が盛んな美里町。アティラさんは「森づくり活動塾」で研修を受け、地域の森林組合に就職。森を育てる仕事をしている。
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左:空き家バンクで見つけた自宅は築約40年。350万円で購入した。 右:いまの家に暮らし始めた時に床下に巣をつくっていたニホンミツバチが分蜂を行い、巣箱を3つに増やすことに成功。ハチミツをトッピングしたクレープをボードゲームカフェで食べられるようになる日も近い?
 

「結婚前に自転車に乗って小百合の故郷である熊本中を旅して回ったんです。その時に美里町がとても気に入りました。空気がおいしくて自然が豊か。私の生まれ故郷であるルーマニアのメレニという村にとてもよく似ていました」

フランスを旅していた小百合さんとフランス外人部隊に所属していたアティラさんが結婚したのは2020年。翌年には空き家バンクを利用して現在の住まいを購入。店は近所の物件を探し、県の地域課題解決型起業支援補助金を利用してリノベーションした。

フランス在住時に集めた200個ほどのボードゲームで遊べる『ボードゲームカフェ メレニ』をオープンしたのは23年3月。最近は遠方からやって来る人も増えたそうだ。オンラインゲーム全盛の時代にボードゲームへの注目が集まるのは、情報量が多いデジタルゲームにはない想像力が膨らみ、人とのリアルなコミュニケーションがとれるから。失われつつある大切なものが、ボードゲームには詰まっているのだ。

「シンプルであることを大切にしたい私たちにとって、美里町はとても暮らしやすい土地です。景観以外に私の故郷に似ているもうひとつに、人の優しさがあります」

とてもうれしそうに話してくれるアティラさん。シンプルな暮らしを営もうとしている人にとって、静かな魅力にあふれた美里町の土地と人柄はとてもフィットしているようだ。

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踊りの稽古場だった物件をリフォーム。地元の工務店と共に夫婦で作業に取り組んだ。解体時に出た廃材を刻んでパズルのように貼り付けた天井はアティラさんの力作。
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左:ボードゲームの休憩時間に食べる軽食のクレープは、フランス・ブルターニュ地方のクレープ学校に通って学んだ小百合さんが焼いている。 右:ボードゲームの数は現在250種類ほど。ヨーロッパを中心にしたボードゲームクリエイターによって、毎年新作が次々にリリースされるそう。
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フランスの伝統的な木製ゲームは地元の木工房と一緒に制作した。
『ボードゲームカフェ メレニ』 ●熊本県下益城郡美里町馬場808-1 TEL:050-3743-3527

 

熊本の魅力を伝えます!

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高良健吾

Kengo Kora

俳優。1987年、熊本県生まれ。『軽蔑』で第35回日本アカデミー賞新人俳優賞、『横道世之介』で第56回ブルーリボン賞主演男優賞などを受賞。映画『罪と悪』(主演)やNetflix『忍びの家 House of Ninjas』などの公開を控えている。 

「自転車で巡ったことで、土地に深く触れられたのでしょうね」

移住先を決める時に自転車で巡ったおかげで美里町に出合ったというエピソードがとても素敵ですね。自転車の速度だからこそ土地と人に深く触れることができたのでしょうね。僕もいつかは熊本に暮らしたいと考えているので、自転車で巡って場所を探すのもよさそうだなと思いました。美里町を選んだ理由に自然の豊かさと人の優しさという点があったそうですが熊本ってたとえば熊本市内にいたとしてもクルマで1時間ほども走れば雄大な自然の風景に出合うことができます。優しさと豪快さを兼ね備えているのが熊本人の特徴のひとつだと僕は思っています。

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