スペイサイドモルトの隠れた名門、ロングモーンが新たな時代へ

  • 文:⻄⽥嘉孝
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特別なウイスキーにふさわしいラグジュアリーなデザインは、ロングモーン蒸留所の創業当時、20世紀初頭に流行したアール・デコ様式からのインスパイア。新たなブランドロゴには、かつて蒸留所の敷地内を走ったという蒸気機関車がモチーフとして採用される。

名だたるブレンデッド・ウイスキーに欠かせない“トップドレッシング”、味わいを左右する香り高い構成原酒として、著名なブレンダーたちに愛されてきたスペイサイドモルト。そのたぐいまれなる品質と流通量の少なさから、スペイサイドの“ヒドゥンジェム”、隠れた宝石と称されるロングモーンが、待望のオフィシャルボトルをリリース。130年にわたり絶えることなく高品質なウイスキーを生み出し続けてきた名門が踏み出す新たな一歩に、世界のウイスキーファンが注目している。

一度たりとも絶やさずに、伝統と情熱を継承する

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1894年に設立され、130年の歴史をもつロングモーン蒸留所。写真の左奥には蒸気機関車の姿も見ることができる。

スコットランド北部のハイランド地方を流れるスペイ川の流域に、多くのモルトウイスキー蒸留所が密集するスペイサイドエリア。数々の高品質なウイスキーを生み、スコッチウイスキーの聖地とも称される同エリアに位置するエルギン市の郊外に、ロングモーン蒸留所が設立されたのは1894年のことだ。

当時の英国は産業革命の真っただ中であり、同時にスコッチのブレンデッド・ウイスキーが大きなブームとなっていた。ウイスキービジネスへの深い関わりと起業家精神をもつジョン・ダフは、そうしたトレンドに目をつけ、自身が所有する2つ目の蒸留所としてロングモーン蒸留所を創業した。

南アフリカでも蒸留所開設を目指すなど、革新的なウイスキーメーカーだったダフが建設したのは、最新鋭の設備を導入したモルトウイスキー蒸留所。原料や製品を運ぶ蒸気機関車が敷地内を走る画期的な蒸留所でのウイスキーづくりは、近隣で栽培される良質な大麦や豊富な水などにも恵まれ、軌道に乗った。

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革新的なアイデアと起業家精神にあふれた、ロングモーン蒸留所の創業者であるジョン・ダフ。
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原料や製品の輸送に使われたという蒸気機関車。近接する鉄道の駅舎はいまも蒸留所が管理している。

現在まで130年間にわたり高品質なウイスキーをつくり続けてきたロングモーン蒸留所だが、世界的なウイスキーブームに沸く現在とは大きく様相が異なり、1990年代までのウイスキー業界は幾度となく低迷期を迎え、その間には多くの蒸留所が休止や閉鎖に追い込まれた。特にスコットランドにおいて、100年以上も休止せずウイスキーをつくり続けている蒸留所は多くない。ロングモーン蒸留所はそうした稀有な蒸留所のひとつであり、「創業以来、一度たりとも絶やさずにウイスキーをつくり続けてきた」という事実は、彼らにとっての大きな誇りとなっている。

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知る人ぞ知る、スペイサイドの隠れた秘宝

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仕込みサイズはワンバッチ麦芽8.7トンと、スペイサイドでは少し小さめ。伝統的な製法でていねいにつくられる、華やかな甘さとフルーティさをもつウイスキーが特徴だ。

そんなロングモーン蒸留所の歴史は、日本のウイスキー史とも密接に交差している。“日本のウイスキーの父”と呼ばれる竹鶴政孝は、本格的なジャパニーズウイスキーが誕生する前夜の1919年4月、同蒸留所を訪れ実地で研修を積み、日本人として初めて本場でスコッチウイスキーづくりを学んだ。

スイートかつフルーティな香味と、スペイサイドモルトの特徴である繊細さをもち、著名なブレンダーからも高く評価されてきたロングモーン蒸留所のウイスキー。蒸留所の地下深くから汲み上げられる水での仕込みや、約49時間から55時間という比較的短めの発酵、最高級のアメリカンオーク樽での熟成など、熟練のスタッフたちが創業時から変わらない伝統の製法を踏襲し、その味わいを守り続けている。

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歴史と伝統を証明するポーティアス社製のモルトミル。70年頃までは蒸留所でのフロアモルティングも行われていた。
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玉ネギのようにずんぐりとしたストレートヘッド型のポットスチル。初留と再留を合わせ、同様の形状のスチルが8基稼働する。
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計10基の発酵槽はすべてステンレス製。省エネルギーな蒸留所を目指したテクノロジーなども導入される。

現在のロングモーン蒸留所の年間生産量は約500万リットル。昨今のウイスキーブームを背景に、スペイサイドの大手蒸留所の年間生産量が2000万リットルを超え、他の蒸留所もこぞって増産体制を取る現状から見ると、この数字は控えめだ。しかもロングモーンは、シーバスリーガルをはじめとする名だたるブレンデッド・ウイスキーに欠かせない原酒であり、いまもその大半はブレンデッド・ウイスキー用に出荷される。

かつてはオフィシャルボトルがほとんど市場に出回らず、そうした希少性とたぐいまれなる品質から、スペイサイドの“ヒドゥンジェム”、隠れた秘宝とも称されてきたロングモーン。多くのウイスキー愛好家たちがオフィシャルのシングルモルトのリリースを熱望し、それに応えるかたちで2019年には、「シークレットスペイサイド」コレクションとして「ロングモーン18年」「同23年」「同25年」の3アイテムが数量限定で登場。大きな話題を呼ぶと同時に、すべてのアイテムが世界的な酒類コンペティションで高い評価を受けるなど、世界のウイスキーファンに広くその実力を知らしめた。

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長期熟成で体現される、ラグジュアリーな“ロングモーンらしさ”

そして2024年には、ロングモーンの新たな歴史の幕明けを告げる2本のシングルモルト、「ロングモーン18年」と「ロングモーン22年」がリリースされる。

どちらも使用されるのはすべて、ロングモーンの名を冠するシングルモルトとして世に出すにあたり、“ベストな熟成”と見極められた長期熟成のモルト原酒。ロングモーンの特徴であるトフィーを思わせる風味を生むアメリカンオーク樽に加え、長期熟成に向くホグスヘッド樽を熟成に使用することで、スペイサイドで磨き上げられてきた“ロングモーンらしさ”を全面的に表現することに成功している。

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最低でも18年間熟成してリリースされるロングモーン。甘やかなトフィーや陶酔感のあるフルーティさが特徴的だ。そのラグジュアリーな味わいを、ぜひ堪能してもらいたい。
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「ロングモーン18年」と「ロングモーン22年」はどちらもシングルバッチで年に一度のボトリング、一期一会のアニュアル・リリースとなる。

たとえば「ロングモーン18年」なら、キャラメルがけのリンゴやハニーケーキ、バタースコッチやココナッツのような甘く優しい香りと、新鮮なマンゴーやアプリコット、ラズベリークリームや蜂蜜、ミルクチョコレートのようスイートな味わいと余韻が楽しめる。一方の「ロングモーン22年」は、高級なバニラやトフィー、ヘーゼルナッツを思わせる香りが柑橘などのフルーツと複雑に絡み合う。飲めば蜂蜜の花の香りや果樹園のフルーツ、ドライフルーツやナッツの入ったフィレンツェ風ビスケットなどが幾重にも重なり、甘く滑らかな長い余韻へとつながっていく。

飲み方はもちろん、ウイスキーの味わいを最大限に楽しめるストレートやオン・ザ・ロックがお勧め。バーなどでは、この突出したそれぞれの個性をオールドファッションやウイスキーサワー、ロブロイといったクラシックなカクテルで試してみるのもいいだろう。

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新生したスペイサイドのプレステージ・ブランド

ラグジュアリーな味わいと同様に、新たなロゴとパッケージにも注目だ。ラベルや外箱のデザインは、ロングモーン蒸留所が創業した20世紀初頭に流行したアール・デコ様式にインスパイアされたもの。ブランドロゴのモチーフには、創業者であるジョン・ダフが蒸留所内に走らせた蒸気機関車を採用し、ラベルや外箱の特徴的なアーチがラグジュアリーな鉄道の旅を想起させる。

どちらの製品も度数調整のための加水を行わず、カスクストレングスでボトリング。さらには冷却ろ過をしないノン・チルフィルタード製法を採用し、樽出しのままの度数と味わいが楽しめるのもウイスキーファンには嬉しいポイントだ。

また、両製品ともボトリングされるのは年に一度のみ。新しいバッチが毎年リリースされるアニュアル・リリースとなるため、コレクション的な価値も期待できる。とはいえもちろん、ウイスキーは飲んで楽しむもの。コアなウイスキーファンならずともぜひこの機会を逃さず多くの方に、スペイサイドの“隠れた秘宝”の実力を味わってもらいたい。

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上:ロングモーンらしさが存分に表現された「ロングモーン18年」700ml ¥37,125(参考小売価格)。まずはストレートやロックで味わいたい。 下:22年以上の熟成を経た貴重なモルト原酒のみを使った「ロングモーン22年」700ml ¥59,400(参考小売価格)。驚くほどに豊かな香りと深い味わい、洗練されたスペイサイドのクラシックスタイルが楽しめる。

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ペルノ・リカール・ジャパン

TEL:03-5802-2756
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