コルベット(C8)のハイパフォーマンスモデル「Z06」に乗った。エンジンは5.5ℓV8で646馬力。この数値はV8自然吸気エンジンとしては世界最強。カムシャフトを伝統のOHV式ではなくDOHCにし、レース由来のフラットプレーンクランクを採用した高回転型エンジンですよ。「Z」がつくコルベットは「絶対買い」なんだけど、これも(買えるものなら)絶対買うべきと声を大にして言いたい。
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V8プッシュロッドをやめて「はたしてコルベット?」という疑問が諸兄にあるかもしれないが、これまでも高性能モデルにオーバーヘッドカムを採用しているケースはある。そもそもこの論争はリーゼントをやめた矢沢永吉が矢沢永吉なのか、というセンチメンタルな問いに似ている(笑)。髪型を変えても矢沢は「YAZAWA」だし、最新のZ06はコルベットらしく、よりデーモニッシュ(鬼神が憑いたよう)なアメリカンスポーツを求道している。リーゼントと同じくOHVをやめることは、新世代へのアップデートに欠かせない踏み絵だったのだ。
その結果はどうだろう? ドンとアクセルを踏めば、凄まじい加速とともにリミットの8550回転を目指して回る回る。この加速を体感すると「うひょひょひょひょ」とコミック『マカロニほうれん荘』の夢見る中年の乙女、金藤日陽(きんどうにちよう)のような悪魔の笑いが止まらなくなるね(笑)。レスポンシブルなことこの上なしだし、ぎんぎんにクランクを回し倒す加速感はホンダのVTECを彷彿させる。フラットプレーンクランクにした理由が明快。嗚呼、「トシちゃん、かんげきーーっ」ですよ(笑)
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この爆発的な加速を路面に伝えるために車幅を90㎜も拡大し、後輪は345㎜のワイドタイヤを採用。担当したデザイナーが「Z06 が本来の姿」っていう通り、制約から解放された完璧なフォルムであり、同時にがっちり路面をつかみつつ、エンジンのパワーをあますところなく後輪に伝える、ホットロッドの思想がぐぐっと前面に出てきているんだ。
ミドシップだから安定して駆動力を後輪に伝えられるし、高速コーナーの立ち上がりは怒髪天(どはつてん)を衝く野太い排気音とともにとことん突き抜けた加速を見せる。「これでもか」と伸びるストレートはまさに悪魔のファイヤーボールですよ。ハンドリングもスリリングだし、これぞアメリカン。なんだかんだと直線至上主義みたいな「いいかげんにしてくださーい」ってお約束のセリフも出てこようというもの(笑)
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街乗りモードのツーリングは格別のクルーズモード。14個のスピーカーで武装されたBOSEのサウンドシステムも最高。ウーハーボックスに見立てたドアパネルは低音でぶんぶん震えてるし、解像度を高めて構造的に音を配置している。はっきりと音源のレコーディング環境の違いを出すから、とりあえず「最新の音楽聴かなきゃ」って気にさせられるのもミソ。
コルベットってクルマは、いつの時代もアメリカ文化に根ざした同時代のポップス的な側面がある。体験として「いい映画を観たな」って感覚に近かったし、体感するエンターテインメントとして極上だったね。
シボレー・コルベット Z06
サイズ(全長×全幅×全高):4685×2025×1225㎜
エンジン:V型8気筒DOHC
排気量:5454㏄
最高出力:646ps/8,550rpm
最大トルク:623Nm/6,300rpm
駆動方式:MR(ミドシップ後輪駆動)
車両価格:¥25,000,000
問い合わせ先/GMジャパン・カスタマーセンター
TEL:0120-711-276
www.chevroletjapan.com
※この記事はPen 2024年1月号より再編集した記事です。