「大人の名品図鑑」チェック編 #1
秋冬の季節になると俄然見る機会が増える「チェック柄」。着こなしのアクセントになり、カジュアルな雰囲気を醸し出すことができるのが強みだ。今季のファッションはクラシック回帰の傾向もあり、柄のバリエーションも豊富に揃う。今回は代表的なチェック柄のアイテムを取り上げ、その歴史や逸話を探ってみる。
「チェック柄」とは、縦縞と横縞が一定の間隔で交差している模様の総称で、英語では「check」よりも「plaid(プラッド、プレイド)」という表現の方がよく使われると聞く。その歴史は古く、紀元前1200年ごろのミイラが格子柄の布地を身に着けた姿で発見されている。
さまざまなチェック柄があるが、世界でいちばん有名なチェック柄といえば、やはり「バーバリーチェック」だろう。この柄を見れば、誰もがバーバリーというブランドを連想し、ブランドのアイコンにもなっているチェック柄だ。
そんな「バーバリーチェック」の話に入る前に、バーバリーというブランドの歴史に触れておこう。創業者トーマス・バーバリーが21歳の若さで英国・ハンプシャー州ベイジングストークに店を開いたのが1856年のこと。彼はものづくりにおいてはファッション性だけでなく機能面にも重点を置いた。その代表的な例が1879年に彼が考案した素材「ギャバジン」だろう。高品質のコットンを細く織り上げたこの素材は通気性に優れ、悪天候に強く丈夫で、重くて着心地の悪かった従来のレインウェアに革命をもたらした。
トーマス・バーバリーはこのギャバジンを使って、軍人や探検家のために寒さや雨風から身を守る衣料をデザインしたが、それが第一次世界大戦中に考案された「トレンチコート」へと繋がっていく。英国陸軍からの依頼でデザインされたそのコートは、まさに機能を集約されたデザインで、彼が目指した理想をカタチにしたもの。その後もバーバリーを代表するアイテムとなった。
キャメルをベースに黒、白、赤の配色が特徴的な「バーバリーチェック」が生まれたのが1920年代。当初はレインコートの裏地に使われたが、この「バーバリーチェック」が大きく注目されるきっかけになったのが1964年に開催された東京オリンピック。大会出場のために飛行機に乗り込む英国女子選手団の腕にかけられていたのがバーバリーのトレンチコートだった。チェックの裏地が映った写真が世界中で報道され、認知を高めることに繋がった。
さらに67年にはパリのショップのバイヤーだったジャクリーヌ・ディレマンが、コートからチェックの裏地を外し、旅行鞄や傘カバーに使うことを思いつく。これがきっかけとなり、「バーバリーチェック」がアクセサリーに使われ始め、またコート以外のアイテムにも取り入れられるようになった。クリストファー・ベイリーやリカルド・ティッシなど、同ブランドのチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任したデザイナーたちは「バーバリーチェック」をコレクションのデザインに取り入れ、大胆にアレンジを施し、話題を集めた。昨年からチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任したのがダニエル・リー。今季彼が発表されたコレクションはバーバリーのヘリテージを表現したもので、シグネチャーのチェック柄がイエローやブルーなどの鮮やかなカラーで表現され、さまざまなアイテムに落とし込まれている。
今回紹介するのは、キャメルをベースにしたいちばんオーソドックスな「バーバリーチェック」を採用した製品だ。カジュアルなジャケットやトレンチコート、バッグ、アクセサリーなど、どんなアイテムに用いられても、一目でバーバリーだと認知でき、老舗のヘリテージを感じとれるものばかり。シグネチャーとして「バーバリーチェック」が存分に生かされている。
---fadeinPager---
---fadeinPager---
---fadeinPager---
---fadeinPager---