「大人の名品図鑑」ダウン編 #5
軽くて暖かく、アウトドアスポーツだけでなくデイリーユースにも使えるダウンジャケットは、いわば冬の最強アウター。機能性はもちろんのこと、最近ではファッション性を備えたダウンジャケットも数多く登場している。今回の「大人の名品図鑑」は、そんなダウンジャケットの名品を集めてみた。
山などのアウトドアで着用するイメージが強かったダウンジャケットを、ファッショナブル、しかもプレミアムなアイテムへと進化させるきっかけとなったブランドがモンクレールだろう。
日本では2000年を迎えてから大きく注目されるようになったが、その歴史は古く、フランスでレネ・ラミヨンとアンドレ・ヴァンサンの2人が1952年に創業したのが始まりだ。
「モンクレール」というブランド名は、創業地である「モネスティエ・ドゥ・クレルモン(Monestier de Clermont)」の頭文字「Mon」と「Cler」を組み合わせた造語。創業当初はテントやシュラフなどの本格的な登山用品を中心に製造していたが、フランスを代表するアルピニスト、リオネル・テレイ(フランス人として初めてヒマラヤに登頂した)の協力により、さらに機能性にこだわった製品の研究・開発が進められたとも聞く。
1954年、イタリアのカラコルム登頂隊をはじめとする難易度の高い山に挑む登山隊や遠征隊にダウンウェアを提供し、その性能がアルピニストから絶大な支持を得るようになった。68年にグルノーブルで開催された冬季五輪では、フランスナショナルチームの公式ウェアにモンクレールが採用される。そしてこのオリンピックをきっかけにして、フランスの国鳥であるオンドリがモンクレールのシンボルマークとして使われるようになった。
80年代に入ると、モンクレールのダウンウェアはその高いファッション性が注目され、ヨーロッパのセレクトショップなどで扱われるようになり、若者のファッションアイテムとして一大ブームとなる。さらに2000年代に入ると、国内外のさまざまなブランドとのコラボレーションを積極的に行い、現在ではトータルでさまざまなアイテムを展開、ラグジュアリーブランドとして確固たるポジションを得ている。
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モンクレールのアイコンダウン「カラコルム」
とはいえ、現在でもダウンウェアはモンクレールを象徴するアイテムであることには変わりはない。モンクレールのダウンウェアは、最高品質のグースダウンだけを使い、パーツごとに使用するダウンが1g単位で決められなど、緻密な計算をもとに縫製されている。着る人のシルエットまで考えられてデザインしているのも大きな特徴で、モンクレールのダウンジャケットがヨーロッパ、特にイタリアのお洒落な女性たちから支持される理由は、この緻密なデザインと計算されたシルエットによるところも大きいだろう。
今回紹介するのは、モンクレールのアイコン的なダウンジャケットである「カラコルム」というモデル。1954年に誕生した歴史的な名品で、登山家のアキレ・コンパニョーニとリノ・ラチェデリが、K2(パキスタンと中国の境目にある山で、世界2位の標高を誇る)登頂の際に着用したことでも知られるモデルだ。モンクレールの高い技術力を象徴するようなダウンジャケットだが、そんな「カラコルム」が、現代的なテクノロジーやデザインを盛り込んで今シーズン、見事に復刻を遂げた。
アイコニックなデザインを残しながらもモンクレールらしい光沢あるリップストップ素材や、クラシックなコットン素材、あるいは伸縮性を備えたジャージ素材まで纏ったモデルが登場。ジッパーとダブルスナップボタンをクロースすることで保温性を高めたフロントの構造、あるいは簡単に着脱できる袖など、歴史的な名品が見事にアップデートされている。
モンクレールの過去と現在、そして未来を繋ぐダウンジャケットではないか。
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