〈イヤホン〉
Sony WF-1000XM5 Truly Wireless Earbuds(ソニー ワイヤレスノイズキャンセリングステレオヘッドセット WF-1000XM5)
ノイズキャンセリング(NC)機能を備えた、完全ワイヤレスイヤホン(TWS)がトレンドだ。その旗頭はソニー。NC技術に造詣が深く、1995年に世界で初めて民生用のNCヘッドホンを世に送った。TWSトップラインの1000Xシリーズが、昨年のWF-1000XM4からXM5にモデルアップ。謳うのは“世界最高ノイズキャンセリング”。二つのプロセッサーでNCを行うのがミソ。一つが複数のマイクを制御、もう一つが周囲の騒音や環境に合わせ、リアルタイムに最適化動作を行うという組み合わせでNCを高度化し、低音域のキャンセリング性能を向上させた。XM4に比べて20%ノイズを低減した。
音への気配りも十全だ。振動板を従来の6㎜径から8.4㎜径に大型化し、ドーム部とエッジ部で異素材を組み合わせた複合構造を採用。やわらかいエッジ部が低音部を、軽量・高剛性のドームが高音域を、と手分けして再生する。
試聴した。前モデルに比べ、格段に高音質だ。XM4ははっきりくっきり型だが質感がメタリックになる嫌いもあった。XM5はそんな癖が追放され音の進行がナチュラルで、素直で生成り的な音のすがすがしさが感じられた。TWS業界では低域と高域を強調するドンシャリ的な演出のサウンドが多いが、この音づくりは正統だ。ボーカルの伸びもよく、オーケストラ演奏では音のワイドレンジ感、広い音場感が耳に心地よい。
NC性能も試した。環境ノイズは効果的に抑圧される。低域でのノイズ低減は電車の走行音、バスのエンジン音に効く。NCの問題とされる音質への影響もうまく抑えた。曲線の形が耳内に快適にフィットする装着感もいい。ソニー流のこだわりが詰まった傑作イヤホンだ。
麻倉怜士
デジタルメディア評論家。デジタルシーン全般の動向を常に見据える。著書に『高音質保証! 麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)などがある。
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※この記事はPen 2024年1月号より再編集した記事です。