1000年以上続く織物の産地である山梨県富士吉田市を舞台に、2021年にスタートした布の芸術祭『フジテキスタイルウィーク』。テキスタイルとアートが融合する唯一の芸術祭の第3回が12月17日まで開催されている。伝統産業を活用した地域の活性化を目指し、アートと染織技術を融合させるこの芸術祭では、使われなくなった建物を展示に活用することもひとつのテーマになっている。近代化による伝統技術の衰退とともに、日本各地で過疎化と空き家の急増も問題視されており、いずれの社会問題に対してもメッセージを発信することがフジテキスタイルウィークの大義となっている。
まず向かったのは、今回初めて展示会場に利用されたかつての織機の工場跡地、旧山叶(きゅうやまかの)。機織機や撚糸機(ねんしき)を扱う金属機器業者が2023年3月に廃業し、大規模なインスタレーションを発表できる空間として芸術祭での利用が決まった。1階の顧剣亨(こ・けんりょう)作品に始まり、フロアごとに空間を大胆に活用した表現が展開する。
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3度目のフジテキスタイルウィークで最大規模のインスタレーションを実現
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機織問屋街の古い建物も展覧会場に
旧山叶から徒歩で5分ほどの場所にある、1950年代に建てられた蔵を再利用した「KURA HOUSE」や、戦前は呉服店、戦後は毛糸商を営んでいた「旧糸屋」でも作品展示が行われている。
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街歩きを楽しみながら展示を巡る
東京・新宿の文化服装学院連鎖校で、唯一公立学院として1956年から80年代まで開校していた旧文化服装学院も展示会場となっている。
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アート展だけにとどまらない展示プログラム
フジテキスタイルウィークのプログラムは、アーティストたちが参加するこれらの「アート展」のみではない。富士吉田で一度途絶えてしまった伝統的な「甲斐絹(かいき)」を現在に蘇らせる取り組みと連動する「デザイン展」や、テキスタイルメーカーの生地サンプルを並べ、そこで洋服の仕立てを受注する「生地展」も同時に行われている。
富士吉田の中心部を南北に貫く「富士みち」を境に、東側には織物問屋が並び、そこで稼いだお金を持って西側の飲み屋街「西裏」に行って夜を楽しむ文化が息づいていた。終戦直後、織機がガチャンと動くごとに1万円が入る「ガチャマン」と呼ばれた時代だ。往時の文化を再生させるべく、西裏には若い世代が徐々に集まり、夜の街も息を吹き返そうとしている。テキスタイル産業の伝統がアートと結びついて新たな可能性を発信するフジテキスタイルウィークの展示を巡ったあとには、西裏エリアをはしごしてみてはいかがだろうか。
『FUJI TEXTILE WEEK 2023』
開催期間:〜12/17
会場:山梨県富士吉田市下吉田本町通り周辺
開館時間:10時〜16時 ※各会場への入場は15:30まで
休館日:月
料金:一般¥1,200
問い合わせ:info@fujitextileweek.com(FUJI TEXTILE WEEK 実行委員会) https://fujitextileweek.com