その製法の自由度の高さなどから、いまや世界中で生産されているクラフトジン。最近では日本でも各地でつくられるようになり、日本食への注目の高まりなどともあいまって、ジャパニーズクラフトジンの人気は世界でもじわじわと高まっている。そんなジャパニーズクラフトジンの先駆的存在が、2014年に古都・京都に設立された京都蒸溜所でつくられる「季の美 京都ドライジン」だ。古都を代表する名バーテンダーである坪倉健児さんに、その魅力やおいしい飲み方を聞いた。
クラフトジンの黎明期に、古都に誕生した蒸溜所
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「京都にジン専門の蒸溜所をつくるという話を最初に聞いたときは、正直なところ驚きしかありませんでした。まだ日本にジン専門の蒸溜所がひとつもない時代に、京都産のボタニカルにこだわったジンの蒸溜所を京都で立ち上げる。そのチャレンジ精神や発想に注目していたこともあり、折々でお話を伺い、試作品の味見もさせていただきました。製法の複雑さや完成度の高い味わいなど、『季の美』には当時から驚かされてばかりでしたね」
そう話すのは、京都の「バー・ロッキングチェア」のオーナーバーテンダーである坪倉健児さん。16年に開催された国際バーテンダー協会主催のカクテル世界大会では、日本人として2人目となる“ワールド・バーテンダー・オブ・ザ・イヤー”の称号を獲得。そんな世界的なカクテルの名手は、「季の美」の誕生から現在までを知り尽くす。
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「『季の美 京都ドライジン』の特徴は、複雑な味わいが見事に調和した完成度の高さ。11種類のボタニカルに由来する香味のどれかが突出することなく、まるで名手がつくるカクテルのように秀逸なバランスに仕上がっています。たとえば、山椒や柚子、玉露などのフレーバーが、強く主張するわけではありませんが、それぞれを意識するとしっかりその香味を感じ取ることができる。特徴的なボタニカルの個性をとりあえず際立たせたようなクラフトジンが多い中で、飲めば繊細なフレーバーがさまざまなタイミングで訪れる『季の美』の完成度は突出していると思います」と坪倉さん。
たとえばクラフトジンを使ってカクテルをつくる際、際立った個性があるものならその個性を引き出すことは難しくない。しかし、「季の美 京都ドライジン」のように、それぞれのフレーバーが絶妙なバランスで調和し一体的な味わいを生むジンの場合、その作業にはバーテンダーとしての創造性が要求される。
「既に究極のバランスが出来上がっているから、ジントニックやマティーニなど、ジンを主体としたカクテルに使えば、『季の美』の良さがダイレクトに伝わるカクテルになります。一方でネグローニなど、ほかに味わいの強いベースのお酒と合わせる場合は、『季の美』の繊細さに応じた工夫が必要になります」
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そう話す坪倉さんのバーでは、「季の美 京都ドライジン」を使ったネグローニをワイングラスで提供。従来はスイートベルモットとビターリキュール、ジンを等分とするレシピの配合を変え、「季の美」らしさを存分に活かす工夫もしている。
「ワイングラスを使うのも『季の美』だからこそ。このジンの繊細かつ複雑なフレーバーは、ワイングラスで飲むとよりわかりやすく感じることができます」
今回、坪倉さんが「季の美 京都ドライジン」をベースにつくってくれたカクテルも、ワイングラスで提供するジンスリング。ジンに少量の甘みを加えてミネラルウォーターで割るという、シンプルなクラシックカクテルだ。
大ぶりのワイングラスに、「季の美 京都ドライジン」30mlと同量のミネラルウォーター、さらにはティースプーン1/2の和三盆を加え、和三盆が溶けるまでワイングラスをスワリング。その後、ワイングラスにたっぷりの氷を入れ、グラスを傾けながらゆっくりと回してジンと水を馴染ませていく。
「『季の美』の製造工程でも、それぞれのボタニカルごとに蒸溜したスピリッツをブレンドした後、伏見の伏流水を加えてしばらく置き、アルコールと水をしっかりと馴染ませています。バーで飲むような水割りが家庭で簡単につくれないのは、アルコールと水を馴染ませる作業に熟練の技術が必要になるから。ステアする速さやタイミングなど、バーテンダーでも相当に特訓しなければ習得が難しい技術を、このワイングラスを使った方法なら家庭でも簡単に代替することができるのです」
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最後に爪楊枝ほどのサイズのレモンピールを加え、完成したジンスリングは、「季の美 京都ドライジン」の和のボタニカルに由来する繊細なフレーバーと、上品な甘さが渾然一体となったまろやかで奥深い味わい。
和三盆がない場合はシロップなどで代用してもOK。お酒好きならぜひ家庭で挑戦してみたい、「季の美」を知り尽くす坪倉さんらしいカクテル提案だ。
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素材の特徴を引き出す、手間を惜しまないメソッド
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ドライジンとしての凛とした骨格に、ふくよかでフレッシュなボタニカルの香味が調和する究極のバランスを誇るクラフトジン。そんな「季の美 京都ドライジン」は、ストレートやロック、ソーダ割りなど自由自在に楽しめる。
その味わいを生む秘密が、国産、それも京都産に可能な限りこだわった11種類のボタニカルと、蒸溜所創設当時から変わらない“メソッド”だ。
「季の美 京都ドライジン」に使われているのは、ジン特有の香りや味わいの骨格を成す“ジュニパーベリー”や“オリス”、“赤松”などのベースとなる素材に加え、“柚子”や“レモン”などのシトラス、さらにはオリエンタルでアロマティックな芳香を放つ“山椒”や“木の芽”、フレーバーを引き締める役割を果たす“生姜”や、爽やかさやほのかな甘さと豊かな余韻を与える“玉露”、そしてフルーティ&フローラルなエッセンスを加える“赤紫蘇”や“笹”といった11種類のボタニカル。
「ボタニカルは基本的に京都産にこだわり、乾燥ではなく生のフレッシュな原料を多く使っています。たとえば宇治の玉露や左京区大原の赤紫蘇、亀岡や綾部の柚子や山椒など、京都産の良質なボタニカルをフレッシュなまま使うことで、原料に由来するより豊かな香りや味わいが表現できるのです」
そう話すのは、京都蒸溜所で蒸溜技師としてジンづくりを主導する高橋将さん。一般的なジンの製造では、ジュニパーベリーをはじめとするすべてのボタニカルをベースとなるスピリッツに同時に漬け込み、それを蒸溜した後に加水することで完成する。蒸溜作業からボトリングまでが1日で完結するジンもある中、高橋さんによると京都蒸溜所では、蒸溜からボトリングまで約1週間を要するという。
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「私たちの蒸溜所では、それぞれの素材の特徴を活かすためにボタニカルを6つのエレメントに分け、お米からつくるライススピリッツに浸漬した上で蒸溜し、その蒸溜液と仕込み水である伏見の伏流水をブレンドして商品を仕上げていきます。仕込み水に使うのは、鳥羽伏見の酒造、増田德兵衛商店さんでも使われている水。軟水ですがミネラルがほどよく含まれており、『季の美』で繊細かつクリーンな味わいを表現する上で、これほど適した水は他にありません」
高橋さんがそう話す仕込み水も、11種類のボタニカルやメソッドと同様に、京都蒸溜所がさまざまな可能性を試した末に行き着いたもの。
「ジン専門蒸溜所である京都蒸溜所では、創業以来のメンバーから若手技師までが、情熱をもってジンづくりに励んでいます。ここで生み出すジンを通じて人々の“ジンの概念を変える”という哲学も、蒸溜所の創設時から変わらないもの。ジンの愛好家からジンを初めて飲む方にまで、多くの方に『季の美』を飲んでいただき、他のクラフトジンとは一線を画す味わいに新鮮な驚きを感じてもらえると嬉しいですね」と高橋さん。
古都の名バーテンダーからジン初心者までもが魅了される、京都の風土に磨き抜かれたクラフトジン。バーや自宅でゆったりと、その奥深き味わいに酔いしれてもらいたい。
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古都が育む和のフレーバーが、繊細に香るドライジン
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